帰り道の出来事

「フンフッフンフフーン♪」


翔は、さっきから機嫌がよくずっと鼻歌を歌


っている。


「なぁ!俺、行きたいところあるんだけど、


そこに行っていいかな?」


「いいけど、どこに行くの?」


その時、翔は私の手を掴み歩きだした。


え!?


歩いてるだけで、手を繋ぐ!?


しかも……。


恋人つなぎじゃん!!


私は、顔を真っ赤にした。


「ふっ。咲きの顔メッチャ真っ赤!」


「翔のせいだよ!いきなり恋人つなぎするも


んだからびっくりして……。」


て、これ言ったらやばいやつだ!


絶対に浮かれるに決まってる……!!


予想は的中。翔の顔は、満面の笑みでこちら


を見ていた。


「つまりさ、咲きは俺のこと好きなんだ


ね?」


「……え?」


私は、動きが止まった。


「だって、そんなに意識してるってことはそ


うでしょ?」


駄目……!気づかれては駄目……!


「お前も可愛いところあるんだなー!」


だって私は……!!


「おい!?何泣いてんだ!?」


「……え?何が?」


私は、頬を触ると涙がこぼれていることに今


気がついた。


あれ?何でだろう?


嬉しいはずなのに……。


涙は、収まらなかった。今まで、耐えてきた


苦しみが爆発したかのように……。

 

すると、翔は私の顔をそっとひき、私を抱き


寄せた。 


私は、もうこの感情を知ってしまった。


これが、恋なんだと……。


でも、それは必ず最後は絶望で終わるとも分


かっていた。


なぜなら私は……。


余命があと、一年だからだ……。

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