開放の刻(とき)

何も知らない10歳になった美宝 唯は、学校から帰った後、今日も魔法の国パラサララのお姫様から渡されたと思い込んでいる魔法のペンダントをさげ、魔法の国の不思議な生き物、キュキュティと一緒にセレセロの浄化の石集めに街を歩き回っていた。


人間界にある7つの浄化の石は、3年間の唯の活躍?!で、すでに6つ集っていた。


残るは1つ。


姫の解放の時は、間近になっていた。


そして美宝 洋介も、ある決断をしていた。

唯も10歳。両親を突然の飛行機事故で失ってもう3年が過ぎた。

そろそろ魔法使いゴッコを卒業させる時期に来ているのではないか。

私の個人的な、わがままが思わぬ会社への利益を与えてくれている今が絶好の機会なのだろう…


1ヵ月後。


あの唯の両親の命を奪った飛行機事故と同じ日、お嬢様プロジェクトの最後の舞台が準備されていた。


美宝重工が所有している広大な敷地内に完全に情報管理された空間にすべてのスタッフがそろいその時を待っていた。


集った7個の浄化の石が発動し、闇の魔力から解放された魔法の国パラサララの姫が唯の前に姿を現す瞬間を再現するのだ。


完全な3次元映像を自然空間に表現させる最新技術が使われていた。


魔法にしか見えない眩い光と音と共に空間がゆがみ(ゆがんだように見える)姫が現れる。


「唯ちゃん…」


「あなたの活躍でパラサララは、救われました」


唯はうれしそうに答える。

「えへへ、《キュキュティ》がいつもそばに居てくれたからこれまでやってこれたんだよ」



昨日、更に改良されたバージョンを載せたばかりの生体ロボがうれしそうに唯の周りを跳びはねている。完璧な出来!その姿はほとんど生物といえるレベルまで進化していた。



プロジェクトのチーフ沢田が総勢300名に及ぶ最終ミッションのスタッフに合図を送る。

闇の束縛を解かれた魔法の国パラサララの世界とたくさんの魔法の国の人々、動物達、自然の花や木々。

壮大な広さの施設に再現される仮想現実空間。


美宝重工の持ちうるすべての技術の集大成が披露されていた。


姫の前に歩み寄った唯は、使命を終えた、魔法のペンダントを姫に返す。


お供の動物キュキュティも唯の肩から姫の肩へと名残惜しそうに移る。

姫の周りのすべての生き物たちは幸せそうに微笑み、泣いていた。


皆は魔法の国に帰った。


消えてゆく魔法の国…


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る