事 故

それは、会長、美宝 洋介にとっても孫娘、唯にとっても悲しい、最悪の知らせだった。


ノルウェーで開催されていた国際式典に参加していた、会長、美宝 洋介の息子 美宝重工 現社長とその妻がその帰り、飛行機事故に巻きこまれたとの、一報だった。


娘が夢の中でお姫様と会話をしていた頃、この子、唯の父と母は、すでにこの世には、いなかった…

あああ何という事か…


事故の詳細が判明、葬儀も行われた頃、急きょ、会長から再び社長職へと戻った、美宝 洋介の命令により、超、わがままな私的プロジェクトが秘密裏に始動していた。


美宝重工の莫大な資金が注ぎこまれて…


すべては、孫娘の悲しみを少しでも和らげることが出来るのであればとの洋介の考え。


そう、美宝重工の力によって7歳の女の子を魔法使いに変身させることなど…簡単だった…


亡くなった、母と父を生きかえらせる事以外は…


半月が過ぎ、2022年、5月、《お嬢様プロジェクト》が開始、そしてその3年あまりが経過した後、美宝重工(株)本社で、企画会議が開かれていた。


テーブルの中央には、創業者であり社長の美宝 洋介が座っていた。


プロジェクトのチーフ沢田が新規投入した製品の説明を行っていた。


「ご覧下さい。いま画面に映っている映像は、お嬢様専用の追跡ドローン5基からのライブ中継での唯さまの様子です」

5基の内のいちばん至近距離で撮影を行っている画面が大きく映し出された。


「昨夜更新作業を終えたばかりのお供の生物、キュキュティは、問題無く作動している模様です」


前バージョンのキュキュティは、機械式で動くロボットであったが、このキュキュティは新開発の有機素材の人工血液が流れるより生体に近いロボットに交換されていた。


「人工知能も世界、どのメーカーでもまだ市販されていません最先端のエンジンを搭載しております。かなりの部分、自己判断による行動が出来ます」


当初、7歳の女の子を魔法使いに 見せかけるだけ の目的で開始された《お嬢様プロジェクト》。

だがこのプロジェクトのためだけに開発された数々の画期的な、技術は、今、美宝重工の他の部門製品に生かされ、会社の実質利益と発展にも寄与していた。


今では開発に携わる技術者は社内でもっとも優秀な人材が参加していた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る