第39話 『計画実行の時』
「お願い!! ソフィを、大切な友達を助けて!!」
「……」
全力で走って息は切れている。酸素が足りてない酸欠気味だ。
「……詳しく話せ」
ギリアムは話を聞いてくれた。あったこと、聞いたこと、感じた事、すべて話した。
言葉がまとまらなくて支離滅裂で自分でも何言ってるか分からない状態だったが、黙って聞いてくれていた。
「それで、明日の夜なんだな?」
5日後の夜って、だから今日はあれから4日経ってる。合ってるはずだ。
「やはりか、予想通りだ、もしかしたら俺がどうにかできるかもしれない」
「えっ……」
「明日は満月だ、月が満ちる時が一番魔力が動きやすいんだよ。だから予想していた。それに合わせて計画も進めてきていた。決行は明日だ」
「ホントに?」 タイミングが良すぎる。怪しくなってくる。
「あぁ、明日エンデに四方から奇襲をかける」
「エンデに!!?」
「あぁ計画の中心がエンデにある。そこでだ丁度いいからお前らに少し手伝ってほしい」
「はあ……」 木の抜けた返事だ、理解が追い付いてない。
「夜…。いや、夕暮れだな、四方の門を開けてほしい。開けるだけでいい」
「……」 何を企んでいるのか、全く分からない。だけどソフィを助けられるかもしれない。
「……一ついいかな、人は殺すの?」
人殺しは良くない。聞いてくれるか分からないけど……。
「……。する、ただしこの世に要らないクズだけだ、地下に居る技術者だけ殺す」
「技術者を……?」
「さっきの話、嘘だ。封印するのに複数人は使えないはずだ。恐らく、居なくなる前に弄ぶつもりだろう、過去にも女性が居たときにしてたって聞いてる。どうせ証拠もなくなるからな」
身の毛が立つ話だ、しかも居なくなるから関係ないって……。
「そんなの……」
「そうだ、あそこの技術者は基本クズだ、人形兵の時あえて濁して言ったが、あいつらは分かってて使っている。それは間違いない」
「なんで、そんなことをするんですか? 聖騎士副団長をやめて、殺人者として恐れられて、貴方は……」
「……クリアル・ハンドール。この名前に覚えはないか?」
「いえ……」 でもハンドール、親族だろうか?
「クリアル・ハンドール。俺の伯父で、50年前に封印をした男だ」
「封印を……」 つまり、死んでしまったのだろう……。
「叔父は、封印の事を調べていた。ずっと一人で、それは父にも受け継がれていく中、騎士団の技術者が悪行を働いてるのも分かってきてな。自分の目で確かめてから辞めて、外から崩してやろうって思っただけだ。あの中じゃ動きにくいしな。それで今回やるのが叔父と父が長年かけて編み出した封印方法ってことだ」
「そう……なんですね……。そんなことが」
「……あと一つ、封印するのに犠牲は出るの?」
そこがダメなら結局意味のない話だ。
「……出ない。安心しろ。そのために叔父は調べていたんだ」
「分かった。色々言いたいことはあるけど一先ずは信じる。明日、だね」
それから最終確認をして宿へ帰る。
「また勝手に消えて……お前は何処へ……」
何時も心配をかけてごめん、だけど。
「それより聴いて欲しい話があるの」
いつもと雰囲気が違うのを察したのか、黙って聞いてくれた。
――――――
「……相変わらず無鉄砲だな」
「だけど、糸口は掴めた」
「ギリアム、信じるしかないみたいだね……門の事、了解したよ」
「うん、ありがとう、あとソフィの事だけど……」
明日早めに行くか、今日のうちに行くか、何かされるのは今日の可能性が高い気がするけど、どうなのかな……。
「とりあえず部屋へ行ってみる」
「あれ、セチア……」 ソフィが居た、良かった。
「あの明日だけど……」
「うん、覚悟は決まったよ、調整が必要って夕暮れには研究所まで行かないとだから」
「……っ」 「……」
なにかを言いかけてやめてしまう。
「セチア、私は、あなたに会えて良かった。本当に、心の底から思っている。だからあなたもそう、思ってくれていると嬉しいな、いつまでも忘れないでいてくれたら、嬉しい」
目頭に涙をためている。だけど最高の笑顔をしている。今まで見たことのないような儚くも美しい笑顔。
「……」
「それじゃ……また明日、最後に会えたら……」
ソフィは戸を閉めた。
廊下に一人となってしまう。
「何も、言えなかった」 あの笑顔を見たら何も言えなくなってしまう。
だから、明日、その笑顔を取り戻すために
――やってやる。
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