第31話 『村の真実』

 あれから合流すると、作戦は失敗に終わったそうだ。


 半分は逃げていったみたいで、本当はみんな捕まえておきたかっただろうけど、あの感じだと殺すか殺されるかだっただろうし、しょうがないのかもしれない。


 でも半分は、殺してしまったのだろうか。何人か捕虜として捕まえたのだろうか。


 やはり、人を殺すのは、したくない。



 こちらは9人行方不明だそうだ。もしかしたら、わたし達みたいに怪我したり、迷ってたりしてるのかもしれない。


 あるいは……。



 無事を祈ろう。それしかできない。 






 エンデに戻り、四人で話すことがあると、部屋に集める。もちろんオルクスからの話と2日後の事だ



「「……」」 あの場に居なかった二人は黙り、考え込んでる。



「だから、えっと二日後の朝だから、明日寝て起きたらだよね。行こうと思うんだ。みんなも一緒に」


「それは、行くしかなさそうだけど」



「お前は……いや何でもない。そうだな、行くしかない」




 決まりだ。



「ただし、ちょっと信用しきるのは危ないんじゃないか?」


「それは……」 確かに、一応は犯罪者のリーダーなんだ。何かあってからじゃ遅い。



「大丈夫、だと思う」 意外にもレアが言う。 「何となくだけど、あの人は目的が無いと殺しはしない。あの人の邪魔さえしなければ、多分」


「レアちゃんが何となくで意見するのは珍しいねぇ……。これは大丈夫なんじゃない? タクミ君?」


「確かに、気まぐれで2回も見逃す訳もない。いや、ただ俺が色々知りたいだけなのかもしれないな……」 頭を掻いて 


「いや、いい。行こう。レアを信じる」



「よし、決まり。それじゃ……」




 2日後に、会いに行こう。









 何だかんだですぐにその日は来た。レアの足がまだ本調子じゃないのが心配だが、何とか大丈夫そう。



 当日の朝、例の場所にて。




「ホントに、居やがった……」 タクは心臓部を掴み、苦しそうにしてる。



「この人が……」 そういえばマーくんは気絶してたんだった。





「よお、本当に来るとはな、しかも最低限の人間でな」 見張りや護衛とかを付けなかった。という意味だろう。



「……知ってる事を聞かせて」 それだけだ、軽口を聞きに来たわけじゃない。





「……分かった。良いだろう」 鋭い眼光を此方へ向けた。







「人体実験。これは簡単に言うと、生きた人間に魔力を大量に流し込んで、無理やり魔力を溜めさせる。それを放出させるを繰り返すものだ」


「魔力を普段持っている以上に入り込むと、身体の中から痛みだすんだ。それも並の痛みじゃない。通常の1.3倍もいけば痛みで意識は無くなるだろう、けどあの村の奴らは3倍は流し込んでる。もっとかもしれない」


「全身の穴から流血して、体中が捻じれるように痛むらしい。気絶してても痛みでたたき起こされるから痛みの永久機関。拷問より酷いかもしれない」


「それを何十年も前から村全体でやっていた。もちろん最近までもだ、その実験にお前らも使われる予定だったみたいだな」



「17歳になると、旅に出る……」




「そう、多分それだな。それくらいの年齢が一番魔力的にも肉体的にも丁度いいんだろう」


「恐らく今までもそうやって送り出してから捕まえて実験の繰り返ししてたんだろうな」




「何で……そんな事……」




「他所への言い訳も出来るようにしたんだろう。獣に襲われたとでも言っておけばいい。それと反対した者も殺されてる。お前らの親だな」


「なんでそこまでするのか。勿論、金のためだ。お前らの武器、それかかなり良いやつだろ? そんなのあの村がどうやって手に入れた? どこから金が出てくる?」




「じゃあ、なんで、持たせたの? 殺すなら適当な武器でもいいんじゃ……?」




「それは、先へ進むためだろう。今までは適当にやっていた。けどそれじゃ物足りなくなったのか被検体の肉体強化や精神強化をすることにした」


「つまり、職業の取得だ」


「鍛えるのにちょうどいいだろうしな、しかも色んな職があれば実験も捗るだろう」




「実験が、何のお金になるというの……」





「……聖騎士団の使ってる人形兵だよ。あれはお前らの村で作ってた」





「……っ!」


 あの時……初めて人形兵を見たときの感覚。


 見られたような気がした。ドロっとした、血の様な……。


 思い出して吐き気がこみ上げてきて、口を押える。





「見たことありそうだな、あれ凄い性能だろう? 無理やり鍛えられた脳と神経を使ってる。そりゃ魔力効率も能力も良い訳だ。無理やりぶっ壊したところを人形に使ってるんだからな。 自立してるのは脳を使ってるからだ」





「……なぁ、俺たちの村がそんな大層なことができると思わないのだが……」 タクが顎に手を当てながらつぶやく


「あの結界……もしかしてそのために」 マーくんははっとしたようにみんなの顔を見る。





「そう、あそこは妙に魔力が多くあった。それで出来たんだろう。だけどあの結界はそれが理由じゃない」



「じゃあ、何故そんなことを……」




「俺の計画にあの位置にある魔力が邪魔だったからだ。不安要素を消したついでに、人間を人間とも思わないクズを殺したまでだ」








「……お前ら、少し聞きたいのだが、北に魔族が出たのは知っているか」


「何故それを!?」

 知ってる人は少ないはずだ。




「完全に予想だったがその反応だと当たりのようだな」



「魔族が出てきてる、つまり封印が解け始めている」



「これを阻止するのが俺の計画だ」




 阻止、できるのか……?いや、それよりも……。




「あなたは、なんでそんなこと知ってるの……? 一体何者なの……?」

 いろいろ知りすぎている。普通じゃない。





「……村の事はそこから命がけで逃げてきた奴が居て、そいつからの話だ。そして俺は」





「俺は、ギリアム・ハンドール。元聖騎士副団長だ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る