第3章 『村の真実・世界の真実』

第30話 『闇ギルド奇襲』

 あれから次の日


 冷静になって考えてみたけど、あの時は喜んでいたが、まだ居ると確定したわけじゃないことに気が付いて何とも言えない気持ちになった。


 団長は人数集めはなるべく秘密裏にするからこちらに任せてくれとのことだ、大きく募集なんてしてたら作戦をばらしてるようなものだ。


 明後日の朝方、つまり今日寝て起きたら作戦開始だ。急だけど逃げられるよりはマシであろう。


 場所は西へ3時間程歩いたところだという。そう遠くないから逆にばれにくいと言ったところだ。西側は山が多い、隠れるのには最適だろう。



 朝方に奇襲するので、日付変わったすぐくらいに出発となる。速く寝て作戦に備えよう。









 出発時刻



 西門の外に多くの参加者がいる。少ない日数で良くもここまで集まったものだと感心してると、聖騎士団が多くいると誰かが話してた。

 確かに近いからこちらへ多めに数を割いても大丈夫、という判断だろう。


 見つけたアジトの入り口は2つ、恐らくほかにもあるがそれしか見つからなかったという。


 なので2つに分けて一斉に奇襲。合図はこの指輪を使うそうだ。ソフィが打診したみたい。もちろん断る理由もないので、了承する。



 暗闇の中大勢の人が列を連ねて歩く姿は何とも妙な感じだ。


 暗い中3時間ほど歩く。予定ポイントに着いたようだ。


 作戦通りに二手に分かれる。こちらは少し険しい道になるらしい。このくらいならわたし達は慣れてるから問題は無い。


 少し歩くと山肌に穴の様な、洞窟の様なものが見えた。恐らくあれだろう


 深呼吸をして反応を待つ。




『セチア? 聞こえる?』 


 来た。


「大丈夫、聞こえるよ」 目線でこちらのリーダーへ合図する。



『こっちは準備良い、そっちは?』



 一応確認すると、リーダーは大きく頷いてる。

「こちらも大丈夫だよ」 



『分かった、せーので行……っ!?』 ブツンと切れてしまった。 しかも小さな悲鳴混じりに。



「ちょっと!? 大丈夫!?」声をかけてみるが、反応は無い。




 少し離れたところで、気配を感じだ。



「っ! 何かいる!」 



 視線を向けた先から多くの人間らしき影が襲い掛かってくる。



 これは……。




「総員、構え! 待ち伏せだ!!」




 まさか、ばれていた。


 というよりワザと存在を残して誘われていたのではないだろうか。



 暗闇で、敵も味方もごちゃごちゃで、もう誰が誰だかわからない。


 かろうじてまだ四人で動けているが、いつ離れ離れになるか……。




 あれ、タクとマーくんが居ない。


 うっそ!? 今の一瞬ではぐれた!?



 レアの手は握っている。顔も確認する。レアだ。大丈夫。


 走りながら状況を確認したが、数が多すぎる。顔も良く分からない。



 どうする、どうする……。



「ぇ……」 とレアが小さな悲鳴を上げたと思ったら、手を引かれ、そのまま全身の力が急に抜けたように倒れこむ。


 急斜面で足を踏み外したみたいだ、一緒になって転げ落ちる。


 上も下も分からなくなる位転げまわる。全身が痛い、どこかの骨が折れたかもしれない。


 平衡感覚が戻り始め、周りを見てみるが、人影が無い。完全にはぐれてしまったみたいだ。



 体の異常を確認する。痛いけど折れては無い。切り傷と打撲と言ったところだろう。レアも骨折は無いみたいだが、足を挫いたみたいで、辛そうにしている。


 切り傷とかは治せるけど、捻挫とか突き指みたいなのは直せないから早く手当てをしてやりたい。



「おい、大丈夫か!」

 と男性が近寄ってくる。良かった。人が居た。



 ――ドサッ



「えっ」



 此方へ向かっていた男性が急に倒れた。その後ろから誰かくる。




「……」



 ゆっくりと此方へ歩いてくる。




 寒気がした。鼓動が早くなる。変な汗も出てきた。




 あの、眼。




『奴』だ、オルクスだ……。





「……っ」 とっさに構えてしまった。



 オルクスは此方を見ている。



「……お前」



「っ!?」 話しかけられるとは思っても見なく動揺してしまう。



「その眼、あの村の……」 オルクスの殺気が消えてゆく。




「……」 なぜ。覚えているのか、殺さなかったから?




「……なんで、殺さなかった」



 声が震える。



「……標的じゃなかったからだ」



 静かに答える。



「何故、あの村を襲ったの」

 もう一つの謎。



「目的の邪魔だったからだ」



 目的……。やはり何かあったのか。けど。

「人を、殺す。そこまでする必要があったの」 心が穏やかじゃなくなってくる。胸の中がざわざわしてきくる。



「……あった。だから皆殺しにした」



「それじゃ、なんで、埋めたの」 殺すのが目的なら埋める必要はないはずだ。



「奴らと、同じになりたくなかったからだ」




 ……何を、言ってるの?それはあなたが言えることなの……?

「それ、どういう……」




 少し考えてからゆっくりと答える。

「……お前らは被害者だ」



「……」



「お前らは、あの村の被害者だ」


「あのままだと、お前らは確実に死んでいた。いや、死より辛い目に合っていたかもしれない」

「あの村は、村全体で組織的な人体実験を行っていたんだ」



 人体……実験……。



「それって」 どういうこと?と聞こうとしたがオルクスの目つきが変わった。





「誰か近付いてきてるな。2日後の朝、またここへ来い。話、してやる」 とだけ言って闇に消えて行ってしまった。




「……っ……。ふぁ……」 全身の力が抜けてへたれ込んでしまった。腰が抜けてる。喉も渇いて声が出しにくい。汗もびっしょりだ。


「お姉ちゃん、大丈夫?」 レアが駆け寄ってくる。


「えっと、腰が抜けて、立てないです」 やははと笑って見せる。


「私も足挫いちゃってるから。お姉ちゃんが立てるようになるまで休もう?」


「うん、そうする」

 二人して座り込む、ぼーっとしてるとレアが口を開く。



「なんか、凄いことになっちゃったね」


「うん、けど一歩進めた」


「すごく、怖かったけど。お姉ちゃん殺されちゃうんじゃないかって」


「わたしもそうだよ、声かけられて武器落としそうになったもん」




「……四人だけの秘密になりそうだね」


「うん。そろそろ行こうか」

 立ってみる。大丈夫だ、治ってる。良かった。




 レアを背負って歩き出す。


「重くない? 大丈夫?」


「だいじょーぶ、お姉ちゃんにお任せんしゃいな」





 多分、東側へ進んだ。


 真っ直ぐ歩いた、と思う。



 同じ景色で全然わからなかったけど、なんとなく見覚えがあるような道に出る。



「ここ、左、かな?」 東側へ行けばエンデからの道があるはずだ。




 空が明るくなり始めてる。夜明けだ。




 これで迷うことは無くなるだろう。視界も良くなってきたので辺りを見回す。






 死体だ。


 いくつもある。


 血もあちらこちらにある。





 ここで、戦闘があったんだ。


 みんなは無事だろうか……。





 少しすると奇襲するはずだった入り口に着いた。


「ここからなら戻れるね」 何とかなりそうだ。


 と指輪に反応があった。



『セチア! 何処にいるの!?』


「今別れたところへ向かってるよ。大丈夫、レアが足を挫いたくらいで怪我はそんなにないよ」


『そう、良かった……』


「それじゃまたあとで」



 みんなも無事みたいで一安心する。



 今回も、何とか無事に乗り切れた。





 2日後の朝、話を聞かないと。


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