第25話 『大規模作戦 Ⅱ クロセル 』
次の日
ついに作戦開始、といってもまずはケルンへ向かわないといけない。
集合場所を聞くのを忘れていたため、とりあえず北門へ行って待機する。
「いつも重要なところ忘れるよな」 体を解しながら横目で突っ込まれる
「ほら、いざとなったら飛べるからさ……」
実際飛ぶかどうか迷っていたが、一緒に行った方が良いだろうということになった。少人数で動く分には便利だけど大人数だと大変だ。いっそのこと公開すればもっと気楽に出来るのになぁ。下手に隠すより晒した方が信頼されるんじゃないかな?
あ、そうだ、使用料を取って商売にすればいいのでは……?それだとまた何か問題とか出るんだろうなぁ。それじゃ催眠術とかで眠らせて放り込めば秘密も守れて時間も短縮できて一石二鳥なんじゃ……?
あれこれ考えてると指輪から声が聞こえた。
『あ、聞こえる? セチアたち今どこにいるの?』
「どこって、エンデだよ。集合場所聞き忘れて北門に居るんだけど」
『えっ? エンデ!? ケルンの作戦に参加するんだよね? もう出発しちゃってるよ!?』
……??
「えぇぇぇ!?」
『あっちに着く時間の調整で朝方に出発したんだよ。なんとなく姿が見えないから、声かけてみたんだけど……』
内容をちゃんと把握してなかったせいでおいて行かれてしまったようだ。何の言い訳もできない……。
「えっととりあえず追いつくから! 北門出たところにある道をまっすぐ北へ行けば良いんだよね?」
『そうだよ、大体3日で着く予定だから大体の位置は分かると思う、けどその辺はタクミ君に聞いた方が良いかも』
「分かった、ゴメンありがとう!」
「という訳で置いて行かれてしまいました。なので飛びましょう」
人目に付かないところへ移動するために、北門を出る。そして林の中へ身を隠す。
「ソフィがいうにはそこの道を真っ直ぐ行ってるらしいから、その近辺に魔力の溜まり場があればそこに飛べばいいのだけど……」
みんなが心配そうな目をしてくる。前みたいにならないかということだろう。わたしも少し不安ではあるが、最初に飛んだ時を思い出す。一回目は飛んだあとに少し気分が悪くなった。その時には魔力は殆どなかったのだろう。その状態で同じ距離を飛んだのだから、死にかけたということだ。
つまり行くだけなら問題は無いということだ、しかも距離も短い。
だから大丈夫、なはず。
「行くだけなら魔力だけで済むはずだよ、体調が少し悪くなるかもしれないけどね」やははと笑って見せる。
「それじゃ、行くよ」
カードを持って集中する。
……大陸だ、それにケルンも見える。手前にある長い道……。これだ。
……真ん中より手前に、魔力の溜まり場……。
……あった。少し真ん中寄りだけど追いつけないよりはマシだ。
ここだ、飛ぶ。飛んでっ!
……。
目を開けると森の中に居た。
案の定少しふらついたがそれだけだった。
「さて、何とか着いたよ」 と、みんな嘗め回すように体をみたり、レアは顔を触ったりする。
「だ、大丈夫だって」
「セチアちゃんいつも隠すじゃない」 うんうんと二人とも頷いてる。
「………」 何も言い返せない。大人しくしてる。
「問題はなさそうだし動くぞ」
「道は東の方だよ」 飛ぶ前の光景を思い出す。魔力の溜まり場は道から見て西側だったはずだ。「よし、
「東だな、分かった」
少し森を進んで、抜けた先の平原を歩くと道があった。
「これ……かな?」
「んーこれだと思うが、ここら一帯を一望できる場所が欲しいな」
「この先、崖があった様な……気がしなくもないのだけど……」
ん?待てよ、このカードで確認できるんじゃないか…?
ちょっとやってみるが、見ることは出来なかった。
飛ぶ気じゃないと見えないのか、残念。
「先に進む分には問題ないだろう。行ってみるか」
しばらく歩くと崖が見えた。崖…?
「うーん。ただの岩山だね」
「ただデカいから目印にはなりそうだ、ここで少し待ってみるか」
お湯を沸かしたり、軽食を摘まんだりして待つ。
それから1時間程だろうか。そろそろ動くかどうか話していたら馬車の音が聞こえてきた。
数は多い。結構な規模の移動だ、これはもしかして?
「セチア!!」
列の後ろ側から聞き覚えのある声が響く。
「追いついてたんだね、良かった!」
ソフィの乗った馬車が列を外れてこちらへ向かってくる。
「ごめんなさい、わたしのせいでこんなことに…」
「いいえ、大丈夫よ。無事で良かった」 肩を竦めて微笑む。
「さ、お喋りはまたあとで、馬車に乗って乗って」
急いで片付けをして馬車に乗り込む。なんとか間に合ってよかった。
「ここから2日くらいあるから気を引き締めて、セチアはそそっかしいんだから特にね」
「はい、肝に銘じます……」 最近こんなのばっかりだ…もう少しちゃんとしよう…。
それからは特に何もなく野宿となった。
次の日、お昼過ぎから辺りが寒くなってきてる。
早速コートを早めに着込む。冷えてからじゃ遅いからね。
進むに連れてどんどん寒くなる雪も見え始めてきた。
辺りも暗くなって野宿するとき、この寒さだと身の危険があるかもしれないから、寝ないで暖を取る人もいるみたいだ。もし寝るときは数人で身を寄せ合うなりして暖めあって欲しいと言われた。なのでわたしとレアとソフィでくっ付いて寝ることになった。配布されてる毛布よりもみんなと居る方が暖かい…。
その日は寒空の野宿とは思えないほどよく眠れた。
次の日、更に進む。さらに寒くなる。雪もだいぶ積もってきてる
そろそろケルンへ着くころだ。
今日は最後尾だ。後ろを気にしつつお茶を啜る。
「あったかーい……」 身にし沁みる……。幸せだ。
「いい味、落ち着く…」 レアも幸せそうだ。
緑茶に抹茶をブレンドしたソフィのお手製だそうで、いい香りがする。
そこで馬車の車輪が急に跳ね上がり、お茶が一気に口に入って飲み込んでしまう。
「アッ……ツア!」 肺にも入った気がする。げほげほ咽ていると、後ろに何か見えた。
何か黒い影ののような…人くらいの大きさだ。馬車のスピードと同じくらいで走っている…?
「ねぇ、あれなに?」 とソフィに聞いてみると顔色が一変した。
「……っ!? まずい!!」
急いで馬車の上に上り、大声で叫ぶ。
「後ろから奴が! クロセルが来てる!! 急いで走らせて!!! 早く!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます