第23話 『2体組のオーク討伐依頼』
初めてのお仕事は簡単に終わった、難しいはずは無かった。
勿論、報酬も少ない。これでは貯蓄が減っていく一方だ。
報酬が多い物が来ないかと依頼を眺める日々、増えない貯蓄。
数日経ったある日
どうにかならないものかと受付に聞いてみる。
「よお! 兄弟! どうした? ん? 魔物狩りとか報酬が多い奴が無いかって? あるぜ? 奥の方だ! 危険が伴うから奥にひっそりと貼ってるぜ! 俺のやさしさだったりするんだ!」
「「「「 それを早く言ってくれ! 」」」」
奥へ行くとホントに掲示板があった。そこまで大きくないが数はそこそこにある。
報酬も数倍から数十倍になってる。これなら四人で分けても十分だろう。
目に入った物を手に取ってみる。
数日前に来たやつだ、『二体組のオーク討伐』
護衛の少ない商人や少人数の旅人を狙って襲っているそうだ。危なくなると逃げるらしい。なかなかに賢いという。
オークは簡単に言うとゴブリンをそのまま縦と横に引き延ばした感じで体形通りに力が強いからそれに注意が必要で、頭も良い。
目撃情報はエンデから北へ行くと途切れ途切れに森や林が茂ってる所がある。そこによく現れるらしい。
目印は頭に赤い紐と青い紐を付けてるようだ。
よし、これなら何とかなるのでは?
これを受けることにした。受諾してオークの出現場所に向かいながら作戦会議をする。
「こいつらは少人数を狙う感じだから男女で二組に別れるぞ、俺ら男は中身が無いのリュックを背負って歩く。旅人の偽装だ。」 分かったとマーくんは頷く。
「そして無事に合流できた場合の陣形は、俺一人で一体、双子で一体。 または武器の不向きを見て、俺と双子のどっちかを本命に、そしてもう一人は囮だ、オークをなるべくくっつけさせるな。そしてハイマーは様子を見て手助けを頼む。指示も出してもらって構わない」
「そして、例によって自分と仲間の安全第一だ。行くぞ!」
わたしとマーくん、レアとタクに分かれる。
先行して本命の囮として歩くのはわたし達だ。後ろからレア達が来てるはず。
「そういえば、ちゃんと魔物と戦うのってマルフさんに会ってから以来じゃない?」マーくんはリュックを何度も背負い直ししながらつぶやく。
「あー、確かにそうかも」
あれ以来、人以外とあまり関わってなかったかもしれない。久しぶりだ。しかもオークは初めて戦う。
うーん、流石に冒険しすぎだったかも…?
しばらくして、それらしい所へ着く。
気を引き締める。
足跡や気配を探ってみるが見当たらない。頭の良い生物だ、気配を消したり痕跡を消したりはしてると考えるべきだろう。なかなかに手強そうだ。
またしばらくすると小さな道へ出た。この辺とか狙われやすそうと思ってマーくんに話そうとして振り返ると、何か気配を感じた。
「……何かの気配。今はもう消えた……」 もしかしたら狙ってたけど私が突然振り向いたからやめて去ったのだろうか、わたしもなんとなくだったし。
これはなかなかに大変そうだ。
少しすると後ろの方から鉄と鉄が擦れるような音がわずかに聞こえた。
「まさか……!」 そっちを狙った……?もしかして囮がばれてた…?
全力で走って向かうと、レアとタクがオーク二体と対峙していた。
「おう、ばれてたみたいだな。こいつは厄介だ」
確かに数では有利なのに勝てるか分からない。レアの袖が少し切られてる。悪くてかすり傷だろう。
オークは胴台のようなものを着ていて、青龍刀みたいなものを構えてる。二体とも同じような格好だ。頭には赤と青の紐がある。あいつだ。
「手筈通り俺と双子で別れる!気をつけろよ!」
わたしとレアで青オークを担当、引き離しつつ戦うのは難しい。相手も一緒になりたいはずだ。
いつものように周りを走る。長いナイフで切りつけるが防がれる。そのまま振り払われる。すごい力だ。あれじゃまともに受けれない。躱さないと危険だ。 ちょいちょい切り傷を入れているが皮が厚くてダメージにはなっていないようだ。刺すくらいはしないと駄目そうだが反撃が怖いまだやるべきではないだろう。横目でタクを見てみる。苦戦している。これは片方を先に倒した方がいいんじゃないかな…?タクのハンマーの威力を発揮するには少し隙が必要だろう、だけどあれじゃ攻撃に転じられない。
「レアちゃん!タクの援護に入って!先にそっち倒そう!」 マーくんの声だ。「分かった!」と隙を見てタクの方へ向かう。 青オークがこちらを見る。与えられた仕事はちゃんとやらないとだね。任されました。地面を思いっきり蹴る。肉薄とまではいかないが、なるべく近付く。体が大きいから振りも大きい。動きをよく見れば躱せる。が、青オークが振りかぶったときに足掛けをされてしまう。これは予想外で転んでしまうがすぐに横へ転がって立ち上がる。腕を少し切った。結構痛いが、かすり傷だ。
さっきまでいた地面を見ると地面が深く抉れている。当たったらすごく痛そう。
赤オークは、大分ふらふらしている。あと少しだ。
少し落ち着く。『ヒール』 切り傷を治す。よし、痛みは引いた。まだいける。
また近付くべきかどうか迷っているとマーくんと目が合った。軽くうなずくと。それに答えるように突っ込む。 後ろから『クエイク』と聞こえる。青オークの右足元が崩れて足を取られる。その隙を見て短いナイフを抜き、上から左側の肩と首の間くらいに刺す。入った。「グォア…」と痛そうな声を上げた。効いてるが深追いは禁物だ。青オークも近付かれまいと剣を振り回している。取られた足も立て直しているが息は上がっているようだ。レア達は終わったみたいだ、此方へ来てる。鉄串を顔目掛けて投げる。深手で焦ったのか固くガードされてしまうが、そのおかげで隙が出来た。その間にタクが刺さったナイフ目掛けてハンマーを打ち込む。ナイフが見えなくなる位に深く入る。心臓部まで達したのではないだろうか。そのまま断末魔を上げて倒れてピクリとも動かなくなった。
「お、終わった……」
みんなで喜び合う。
大変だった。初めてやる依頼じゃないよ。次はもう少し慎重に選ぼう…。
装備を剥ぎ取ってリュックへ入れる。戦利品だ。それとわたしのナイフも取り出さないと…。
ナイフで切り取ったりするのは慣れてるが、人型となると何とも言えない気持ちになる。南無南無…。
それからエンデに戻り、鍛冶屋に売りに行くと装備はなかなか良いものだったらしく良いお金になった。
こうして初めての討伐依頼は終わった。
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