第22話 『賞金稼ぎとしての初仕事』
朝起きると体は軽くなっていた。むしろいつもより良いくらいだ。
ガリアさんとソフィに挨拶へ行く。
「今度こそ、またな。気をつけろよ」 にかっと笑う。最初に会った時の副団長らしい雰囲気よりこっちになれてしまって、わたしの中でただの気前のいいおっちゃんと化してる副団長。何かすいません。
「……むぅー」ソフィが項垂れている。 「騎士団やめてセチア達に着いて行きたいー」 凄いこと言いだしたぞこの子。
「お? 行ってもいいぞ?」
「え!? ホント!?」
「嘘に決まってんだろ、自分の仕事あるだろ」 ソフィにデコピンをする。ガリアさんはカカカと笑っている。
「もー酷いー」 両手でおでこを押さえて抗議している。
ソフィを片手であしらいつつガリアさんがわたしに耳打ちをしてくる。
「実はな、ここ数日お前さんと会ったおかげか、ソフィの評判がいいんだ。昔は何だか素っ気無いというか、いつも一人で居たんだ。だけど雰囲気が柔らかくなって誰かと居るのを見かけるようになった。お前さんのおかげだ。ありがとうな」
それは、良かった。
あの食堂の一件で何となく察してたけどやはり浮いてしまっているのだろう。勿論悪い意味ではないが一人ということには変わりない。
「そうだ、セチア、これ持ってて」 と指輪を渡される。
「これは?」水色の綺麗な石が埋め込まれてる。ソフィの瞳みたいだ。
「これ、実はアイナ村で貰った景品なの」
アイナ村、あの鬼ごっこ……?
「え! もしかして4年前に逃げ切ったのって……」
「そうよ、私。でもあれはちょっとインチキだったからね。魔力の流れで鬼の位置を判断してたの。スキルでも魔法でもないから厳密にはインチキではないんだけど。実力で逃げ切りたくてあれからも挑戦してるのよ」肩を竦めてみせた。
「あの村の……これまたとんでもない能力が付いているのでは……」 体から指輪を離して警戒してみる。
「そうね、凄い能力付いてる」 ちょっと待ってて、と何処かへ行ってしまう。
「……?」 行ってしまった。少しすると声が聞こえる。
『セチア、聞こえる?』 どこからか聞こえる。『指輪、指輪』 と言われて指輪に目を落とす。ホントだ指輪から声が聞こえる。
「これ! すごい!」
ソフィが戻ってくる。
「でしょ? これならどこにいても話せると思うの」
「こんなにすごい物、いいの?」ちらっとガリアさんに目線を向ける。
「それなら心配はない。エンデから各副都市への通信技術としてすでに取り入れているからな」 指輪は例によって例の如く使えるのがソフィだけで戻されたという。
「でもガリアさんわたしのときに分からないって言ってましたけどあれは?」 確か言っていた。出所とかそういうことではなかったのかな?
「あぁ、あれはアイナ村がってことだ。あの村を調査したいと言ってもさせてくれない上にやけに強力な結界が張ってあるからどうしようもないんだ。特に実害があるわけじゃないから一先ず後回しになってるのだが。」
「なるほど、そうなのね」 特に実害がない上に、考えても答えは出ない。なら後回しにするべきだ、他にやることもあるだろうし
「あとこの指輪だけど、親が私だから私が開かないと通じないの。そこはごめんね」
「いえいえ、話しができるだけでうれしいよ、ありがとう大切にする」
それから別れを告げ、今度こそ城を出発する。
宿へ行き、必要ない物を置いていく。ここに来て最初に止まる予定だった宿だ。
「さて、セチアが騙されてなかったのを確認したわけだし、役所へ行ってみようか」
役所へ着いて受付の人に話すと、大きな掲示板の前に連れてこられた。
「お好きなものを取ってください。受諾用のカウンターがありますのであとはそちらへ」
これ全部が仕事の以来だろうか、かなり多い。
試験としては難しいわけではないからそこそこの人数は居ると思うのだけど、と依頼内容をよく見てみる。
『ペットのお世話をお願いしたい』『今日のご飯作って下さい』『可愛い子限定、デートして下さい』『人生相談に乗ってください』『お茶しませんか?』『戦闘の基礎を教えてください』『朝、起こしてください』『護衛をお願いしたい』etc…
これは……。
賞金稼ぎの仕事なのだろうか……。
受付の人に話を聞いてみた。
「あの賞金稼ぎの仕事ってこれなんですか?何だか関係ないのばかりな気がするのですが……」
「そう! バラエティーに富んでるでしょ!? なっはははは!! いやね! こんなものだよ? 多分ね! 最近はそこまで賞金首なんて言うほど悪い奴は…まあいるけどそこまで多くないからね! カーランド大陸全土が安定してきた証拠だよ! 良いことだ!」
「だからね、最近は安定を取って警備兵に行く人が多いんだ。それでも自由に行動できるからってことで賞金稼ぎの数自体はそこまで減ってはいないんだよね! 増えても無いけどさ!」
「そういうことで賞金稼ぎの仕事は魔物退治が主な仕事になってるね。護衛や素材集めもしてる。でも結構重要だよ? 安価な金額の物じゃ不安って人も居てそういうものを欲しがる人は多い。だから素材を欲しがるってわけさ!」
「魔物退治なら退治した後に皮なり牙なり取って売ってしまえばいいのさ、慣れてくればいい稼ぎになると思うよ! がんばれよな! 若者よ!」
「そうそう最近じゃ賞金稼ぎって呼ばれてなかったりするんだよね、何でも屋だってよ! 適当に依頼を張り付けてる俺のせいかもしれないけどな! なっははは!!」
「つーわけだ! あばよ! 兄弟!」
嵐が通り過ぎたかのようだ。テンションに身を任せて全部喋ったという感じか…。
まあ、なんとなく事情は把握したからいいか
「どうしよう……?」
「「「 …… 」」」 三人とも悩んでいる。
変なものに手を付ける訳にもいかず端から端まで目を通してみる。
………。
四人でやるような仕事がどこにもない……。
どうしようもないので個別で好きなやつをやることになった。
わたしは『戦闘の基礎を教えてください』
レアは『ペットのお世話をお願いしたい』
タクは『一日用心棒(簡単なやつ)』
マーくんは『お店の手伝い』
賞金稼ぎとしての初めての仕事……こんなのでいいのだろうか……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます