第21話 『ソフィの事、友達の事』

……海だ…。


 聞いたことしかないけど直感的に海だと感じだ。


 広く綺麗で眩しく果てしない蒼。




 訳が分からなくなって、とっさにさっきと同じようにしてエンデへ戻りたいと願ってしまう。




 エンデ、あそこだ。帰る。戻るんだ。









 目を開けると闘技場に戻ってきていた。


 一体何だったのだ……。



 と、そこで自分でも気付かなかったくらいにいつの間にか疲弊している。立ってるのが辛い。倒れこむようにして地面に手を付く。


 耳鳴りが酷い。吐き気もする。体の芯から冷えてきた。寒い。視界がぼやける。呼吸が上手く出来ない。酸素が足りない。心臓が痛い。頭がボーッとしてきた。

 誰かが何か叫んでいるが聞き取れない。反響して煩い。耳が痛い。頭がずきずきしてきた。

 痛い苦しい辛い………。




 そこでわたしの意識は途切れた。









 寒い所へ投げ出されている。


 だけど胸の中から暖かいものが少しずつ広がっている感じがする。


 なんだろう。とても暖かい。


 これなら凍え死ぬことは無さそう。


 その暖かさはやがて全身へと広がっていく。



 気持ちがいい。





 ……。



 目が覚める。


 天井が白い、雰囲気が寮に似ている気がする。


 横に、誰か……ソフィがいる。

「あ、起きたっ! 気分は悪くない? 喉乾いてない? 大丈夫?」ぺたぺたとわたしの体を触れる。


「あの、ごめんなさい。私のせいです。本当にごめんなさい」

 ソフィに謝らせてしまった。


「えっとその前に何が何だか……」



「はい、セチアは4時間ほど寝ていました。そして、あれは私たちの使っているカードの上位版といったところでしょう。」

「私達のは元々空間がつながっているところを開いて潜る感じですが、あれは魔力がある程度満ちているところ同士なら何処でも飛べるようです。その代わり空間を繋げるので魔力をかなり消費します。恐らくですが距離で消費魔力は変わります」

「それでさっきの事ですが魔力が足りなくなって、無理やり生命に関するところから使われていました。つまり命を魔力に変えられたという感じでしょうか、なので多分、寿命が少し減ったのではないかと……」



「ですので、本当に、申し訳ありませんでした。大事な友達を軽はずみな行為で命の危機にさらしてしまって、本当に……っ……ごめん、なさい……っ…」 しゃくり上げながら泣いてしまった。




「……ソフィ、おいで」 なんでそうしたのかわからないけど、抱き寄せた。まだ頭がボーッとしてるせいか、体が勝手に動いた。


「ソフィ、あなたのせいじゃない。大丈夫。心配してくれたんだよね、わたしなんかのために涙も流してくれて。それだけで大丈夫だよありがとう」 胸の中で子供のように泣いている。落ち着くまで頭を軽く撫でてあげる。この暖かさ。夢の中で感じたものと同じだ。








「ごめんなさい、見っとも無い姿を晒してしまって……」 まだ小さくなっている。


「いやいや、大丈夫だよ。可愛いかったから」 やははと笑って見せる。


「……っ」 顔を赤らめてそっぽを向いてしまう。


「あれ……?」 ん??




「……あ、みんなはどうしてる?心配かけたよね…」


「ん、呼んでくる」 そそくさと行ってしまった。


「………」





 少しして三人が来てくれる。

「お姉ちゃん!! 大丈夫!!? 心配したんだからぁ!」 あららレアも泣いてしまった。


「よしよし、わたしは大丈夫だよ。安心して」いっつもいっつも心配……と言ってるけど泣いてるせいで何を言ってるのか良く聞こえないけど気持ちは伝わっている。


「ごめんね、レア、ごめん」 静かに撫でてあげる。





「お、目覚ましたようだな、女泣かせのセチア殿」にやにやしながらガリアさんが来てくれた。



「「 女泣かせ…… 」」タクとマーくんがレアを見た。そして流れるようにソフィへ目線が行く。



 「……っ!」ソフィは慌てて後ろを向く。耳が赤い、隠せてない。



「まあ何はともあれ無事なようで良かった。あれは没収したいところだが、したところでどうしようもないからお前に持たせておく。だが無理な使い方だけはもう絶対にするな。次やらかしたときにソフィが必ずしも居るとは限らないんだ、そこは肝に銘じておくように」


「ソフィが?」


「ん? なんだ知らないのか? ソフィはお前が倒れてからずっと魔力を供給してくれてたんだぞ? 魔力供給なんて出来る人はそうそう居ないからな」


「そうだったの……ソフィありがとう」 夢で感じた暖かさは魔力を流してくれていたのだったのね。ソフィみたいに優しくて暖かかった。


「それにずっと私のせいだ私のせいだって言ってお前さんに付いててくれたんだぞ」



「ソフィ、ありがとう本当に」 あなたは自分を追い込み過ぎちゃう人なんだ、知らなかったことでも自分が悪いと思っちゃうんだ。しょうがない事でも気に病んでしまう。本当に心から優しい人なんだ。




「ん、分かった。あれは気を付けて使うことにします。心配してくれる人もいるし無茶はしません」


「ご心配をおかけしました。そしてありがとうございました」


 みんな微笑んでくれる。





 体も無事……と言いたいところだけど少し重い。まだ本調子では無いのだろう。




 しっかり休めとガリアさんに言われてしまった。




 なので、お言葉に甘えて、休むことにした。




 賞金稼ぎとしての第一歩は明日となりました。









 

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