第18話 『ソフィとの再会』
ガシャンッと数m離れたところに鎧の頭が転がる。
綺麗な薄い金髪が風になびく。透けるような肌は光が反射して眩しいくらい白い。どこまでも深く、どこまでも吸い込まれそうなくらい綺麗な青い瞳。
―――ソフィ。
「なん……で?」
あれ?賞金稼ぎって言ってたよね?
「セチア、久しぶりってほどでもないか」微笑んでいる。
頭の中がぐるんぐるんしてテンパり始める。
気付くとわたしは「ソフィ! 会いたかった!」 と抱き付いていた。ほんのり甘い香りが鼻をくすぐる。
「私もよ、でもそれはご飯の時にゆっくりと話しましょ」 周りをちらりと伺う。みんな注目している。
「あ、はい、またあとで!」
ソフィが一息入れてみんなの方へ振り替える。
「私は、聖騎士副団長補佐のソフィ・アルトマーレ。テストをさせてもらいました。ライラさん、あなたはその人並み外れた体力と大きな声で伝達係や街を守る警備兵が向いていると判断します。リンナさんあなたは槍の扱いに長けています。聖騎士団にもなれる器ですが一歩及ばずという感じです。来年、また試験を受けてください。必ずなれる筈です」
「そして、マリーさん。あなたは騎士団になれる技術があります。かなりの腕前です。ただ、体力が足りてないです。基礎体力を向上させましょう。試験は合格です。」
「レアさんとセチアさん、あなた方は相手の裏をかいて攻めることに長けています。暗殺部隊にもなれるでしょう」
一気に言われて何も言えなくなる。
「あのチャンスは2回って言ってたと思うのですが……」 リンナが恐る恐る発言する。確かにそれはわたしもちゃんと聞いた。
「あれは必要なら、ということです。大体は1回で分かります」 なんだか恐ろしい人だ。少しの切り結びで実力が分かってしまうのだから。
「他に質問はありませんか? なければこれにて模擬戦は終了といたします。報告は私の方からしておきます。皆さんお疲れ様でした」 上の立場の人とは思えない立ち振る舞いだ、親身によって来るというか…。
「えっと、お疲れ様でした」
男性の試験は三人体制で行っていたらしく、向かうと既に終わっていた。
合格者は全部で六人、タクとマーくんと四人だ。
タク曰く『最後だったから運が良かったかもしれない』とのことだ。タクは動きを分析、予測するのを得意としている。つまりそういうことだろう。
マーくんは魔法と近接を使い分けて上手く一発入れたそうだ。
今日はこれにて終了で気付けばもうお昼、各種手続きは明日行うそうだ。
お昼は食べながら五人で話す。
「みんなお疲れ様です! いやぁすごいですね! 三人合格ですよ!! リンナさんも来年合格するから実質四人ですよ!!」 ライラが自分の事のように話す。しかしライラあなたは……。
「えっと、あの……」 マリーも同じようなことを考えているのだろう、心中複雑だ……。
「私には出来ることがあるのでそちらを精一杯頑張りたいと思います! お互い頑張りましょう!」
「……ライラァ! あんたって子はぁ!」 泣きながら抱き付くリンナ、気持ちはとても良く分かる。良い子過ぎる…。
「うう……自分も、来年こそなってみせる、いやなる!」 空に向けて拳を突き上げる。
みんな落ち込んではなく、むしろ前を向いているようだ。今よりもっと良い戦士になるだろう。
「なー、そういえばあの聖騎士副団長さんめっちゃ綺麗だったなぁ。何者なんだろう。セチアの知り合いみたいだったけど」
「あの人は、ここへ来る前に立ち寄った村で知り合ったわたしの友達だよ」
「いつの間に友達になったの? セチアちゃん…全く手が早いんだから……」
「なんだよーそんな尻軽みたいに言いおって! レアも手籠めにしちゃうぞ!」
ワーキャーと笑っている。
「……そうだ、セチアとレアは、どうするの? 一応聖騎士団には入れる、ってことだよね?」 マリーが思い出したように呟く
「わたし達はここに来る前から決まっているよ、ね? レア」
「うん。そうだね」
もう決まっている。決めたんだ。
お昼から特にすることも無くふらふらしていると、ガリア副団長からお声が掛かった。話があるということで小部屋へ通される。
「まずは試験合格おめでとう」 一息入れて 「さて、この間の件だが、結論から言ってこのカードは君の物だ。それにうちの物とは少々異なっているようだ。」 黒いカードを手渡される。
「それは君の物だから説明をさせて貰うが、許可書のようなものだ。都市から副都市へ、副都市から都市へ一瞬で飛べる代物だ」
「……」
「……うぇえ!?」
「驚くのも無理はない、それほどの代物だ。そのため量産も難しくてな、全然出回ってないわけだ」
「そ、そうなんですか……」 そ、そうなのか…としか言えない頭がどうしょうもない。
「使うには警備兵のいる建物へ行け、それを見せれば上の者へ取り次いでもらえる。それから転移所に通してくれるはずだ。それとそのカードの詳細は話すなよ、知ってるのは上の立場の人だけだから、ただの兵士にはただの通行許可書みたいなものとして扱え」
「は、はい」
「まあでかい顔してろってだけだ、ドーンと構えてれば問題は無い」
「は、はい」
頭がパンクしそうだ。タクを連れてきたいけど、わたしの事だ、しっかりしないと。
「話は以上だ、またな」
失礼します。と部屋を後にする。
エンデに行くと良いことあるカード、ふざけた名前だが
このカード、とんでもない物でした。
アイナ村……。これをどこで手に入れたのだ……。
時は過ぎ夕ご飯の時間。ソフィと約束した通り一緒に食事をする。今回はレアと一緒だ。
正規騎士の人と同じ時間にご飯になるのは初めてだ。いつもはバラバラだったけど……。
……凄い目立っている。物凄く目立っている……。
理由は簡単だ、ソフィだ。
ただでさえ目立つ容姿だ、普段は誰も寄り付かない。いや寄り付けないだろう。
だが、今日はどこの馬の骨かもわからない、見習い聖騎士でもない奴が一緒に居るのだ。目立たないはずがない。
「あの、えっとなんか目立ってますね……」やははと笑うしかない。
「お、お姉ちゃん……」ガタガタと聞こえるくらい震えて怯えている。アイナ村の時は祝福的な目線だったが、今回は興味や嫉妬の類だろう。恐ろしいに決まっている。わたしも恐ろしい。
「いつものことよ、気にしないで」ふふと笑う。 いや良く笑えますね……。
周りは無視しよう。気にするな。ムシムシ……。
「ソフィ、あなたに聴いて欲しいことがあるんです。わたしの名前です」静かに耳を傾けてくれている。「わたし達には訳あって苗字が無かったんです。だからあの時友達になりたいと言ってくれたのに失礼なことをしたなって思って……。言い訳になっちゃいますけど世間知らずで、何も知らなかったので……それで……」
「ううん、私も謝らないといけないの、最初に賞金稼ぎって名乗ったでしょ?あれ警戒してたのがあるの、聖騎士って結構世間の風当たりが強かったりするから、普段は賞金稼ぎって名乗っているの、ごめんなさい」頭を下げられてしまう。
「いえいえ、此方こそ、知らなかったと言えちゃんと名乗らなかったのが……」
「いやいや」「いえいえ」「いやいや」
もちゃもちゃしてるとレアが吹き出して笑う。
つられて二人も笑う。
「なんだか変ね、私達。気が合うのかな」肩を上げて笑い、涙を軽く拭く。
「そうだね、仲良くなれそう」
「面白い人です。優しい方」レアも微笑む。
「それじゃ改めて自己紹介します。わたしはセチア・カーディナル。双子の姉です」
「私はレア・カーディナル。双子の妹です」
「私はソフィ・アルトマーレ。聖騎士副団長補佐をしています」
「「「 改めて宜しく 」」」
とそこでレアとわたしに耳打ちをする。
「あとね、私はローレライの血が流れているの。つまり、人魚なのよ1/4だけどね」 これは秘密ねとウインクされる。
「いいの?そんなこと教えてもらって……」
「いいの、あなたたちは信用できる人だと思ったから話したのよ」ふふっ微笑む。
……泣きそうになる。好きになりそう。
それから食事を終え、楽しく過ごした。
ソフィと別れた後、通路で聖騎士の人に囲まれる。
「あなた何者!? あのソフィ様とお話しするなんて!?」「どうやって知り合ったの!?」「どういう関係!?」「あんな楽しそうなソフィ様、初めて見たわ、あなた何者!?」
揺さぶられて頭をグワングワンとされる。
ソフィ、近付きにくい雰囲気あるもんね……。
みんな、勇気出して話しかけてみれば分かるよ。
とても心の優しい、良い子だから……。
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