第17話 『模擬戦』

 次の日、現聖騎士団の人と模擬戦を行う。最終試験だそうだ。


 女性は女性騎士、男性は男性騎士で、一本取るか相手を認めさせたら合格だ。チャンスは2回だ。

 スキルを使うのなら評価の基準が上がるらしい使うか使わないかは自分次第、使う武器は使い慣れたもので良い、自分のがあればそれでもいいとのこと。勿論わたしは短いナイフと長いナイフ。

 久しぶりに握るがやはりこれだ、しっくりくる。軽く素振りや、予備動作を行う。うん、大丈夫そうだ。



 戦う順番はくじ引きで決まった。

 1.ライラ

 2.セチア

 3.リンナ

 4.マリー

 5.レア


 2番手か…。もう少し後ろの方が嬉しかったかな…。




「よーし、がんばりますよ!!」


 二人とも礼をして構える。


 予想通りというか、すぐさまライラが一直線に突っ込む「やぁぁっ!!」 鋭いが直線的過ぎる。難なく躱されてしまうが、軸足をそのまますぐさま振り返る。良い反応だ。

 運動神経自体は良いが感情的過ぎる。それがライラの欠点だろう。それからも何度も躱され続けるが鋭さは変わらない。体力もすごい。数十回後、見計らったかのように攻撃をかわして武器を打ち払う。鮮やかだ。


「くぁーダメでした!! 早いです! 気をつけてください!」 なんて体力だ、まだまだ動けそうなくらい元気だ。




 次はわたしだ、一礼をして短いナイフを逆手持ちに構える。

 あの躱してるときの動き、完全に見切られているようだった。見切られないような速さか、不意を付くくらいしか一本取れる気がしない。


 相手の騎士を中心に円を描くように走る。とりあえずいつものようにやってみる。兜のせいで視線が読めない。これも厄介だ。相手の真横に来た辺りで全力で気配を消す。今まで培ってきた自力でだ。

 騎士は頭を動かしてなかったから横目で見ていただろう。横目だとはっきりと認識することは難しいはず。かといって後ろまで行くと振り返るなり警戒するでいいことは無い。ならギリギリを責める。

 そのまま姿勢を低くして懐へもぐりこみ下からナイフを振り上げる。騎士はすぐさま体を此方へ向け防御態勢に入る。速い。ギャリンと刃物が擦れ合う音が響き渡る。

 近くだとまずいと思い一旦離れる、がそれを読まれていたようでそのまま追い込まれる形になる。後ろへ飛んだ慣性と押し込まれた力でバランスを崩して倒れてしまう。喉元に剣先がある。


 負けだ。



「むぁー負けたぁー、悪くは無かったと思うんだけどなぁ……。あそこで離れたのがまずかったかな」

 芝生にドサッと大の字になっていると、横にマリーが座った。


「悪くは、無かったと思う。飛び込む前、何だかセチアの姿、揺らいで見えたし、動きも、鋭かったよ」

 最近マリーがよく話してくれるからとてもうれしい。


「そう?ありがとう、次こそ一本取ってやるぞー」 その意気だよと応援を貰う、頑張ろう。



 次はリンナ、武器は槍だ。礼をして構える

 背の高いリンナにリーチに長い槍、射程は大分ある。くるくると振り回す。何だか舞っているかのようだ。踏み込んで突き、払い、躱される。一歩後退。さらに踏み込んで突きからの柄の尾で殴りかかるが受け止められる。

 槍の扱いは難しそう、それに肉薄するされると大変そうだ。


 肉薄か…。


 それから果敢に攻めるも負けてしまう。今の所リンナが一番うまく立ち回れてる気がする。


「早いのは分かってたけどやってみると予想以上に早いわ」 リンナは座り込んで空を仰いでいる。



 次はマリー、剣の腕は一番だ、どうなる…


 礼をして構える。構えが不思議だ。それに剣というより刀だ、刀身が少し反れてる。

 腰に刀を携え、集中している。


 静寂が訪れる。


 先に騎士が動いた。半歩動いた辺りで、マリーが凄まじい速さで一閃。空気をも切り裂いたかのような速さだ。剣筋が全然見えなかったが騎士には数ミリ届いてなかった。マリーが攻寄る。切り落とし、切り返し。騎士の剣戟も刀で受け流す。互角以上に戦えてる。凄い。

 しばらく切り結んでいたがマリーが体力がなくなってきてキレが無くなっている。これが弱点だろうか。

あの技のキレがないなら反撃もされてしまう。 マリーの負けだ。


「……くやしい」 珍しくムッとしている。


「最初のアレ何? 凄まじかったけど!」


「あれは居合い。集中して神経を研ぎ澄ませてから刀を抜く、研ぎ澄ませば研ぎ澄ましただけ切れ味は鋭くなるの」 いつもよりスラスラ喋っている。なるほどこういうタイプか。


「ナイフとかでも出来たりするの?」


「刀の大きさとフォルムが丁度いいの、だから多分ナイフじゃ無理なんじゃないかな」


 そうなのか、残念。でも真似事なら出来なくはなさそうだし、今度やってみよう。




 次はレアだ、礼をして構える。構えはわたしと少し違うが似ている。

 相手を中心に円を描くように回り込む。足を踏み出すタイミングとかが一定じゃない。わざとだ。それだけじゃない、何かいつもと違う…?

 意を決したように、飛び込むがすぐバックステップ。フェイント、何かを待っているかのようだった。それに応じたのか、騎士が前に出る。とそれに合わせてレアが前に出る。倍速で動いたかのように見えた。なるほど、歩幅を少し小さめに動いていたのか、そして勝負時に歩幅を伸ばした。

 キィンと高い音が鳴り響く。相手の小手に掠った。


 これは、入った…?




「……やった!」


 レアは見事に一本取った。





 一通り終わって次は2回目、先にわたしを見たいと言われた。



 ―――わたしも早くやりたかった――。



 先ほどと同様に礼から構え。


 さっきと違うのは、二本持ち。



 本気で戦ってないと思われたのだろうか。




 ……実際はただ忘れていただけなのだけど。




 体から余計な力を抜く。 


 一先ず、正面から突っ込む。騎士も驚いた様子で防御態勢になるが関係ない。



 ―――肉薄だ。



 近付いて相手の攻撃範囲の内側から攻める。やり難いはずだ。近いのだから。離れようとする。関係ない。喰らい付くんだ。纏わりつけ。離れるな。防御しか出来なくしてやるんだ。


 防御が崩れ少し体から剣が離れたときに、長いナイフをその間にねじ込む。防御をこじ開けて短いナイフを振りかざす。


 ガギィンと音が鳴り響く。


 無理に首を振りたくったせいで鎧の頭が吹っ飛んでしまう。






 鎧から綺麗な薄い金色の髪がばら撒かれる。




 ―――妖精。




 ―――いや、ソフィだ。






「なん……で……?」


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