第10話 『別れと新たな道』
長い一日が終わり、次の目的地が決まった。
中央都市エンデだ。
いつも通り準備をして、モナカとおっちゃんのいる鍛冶屋へ向かう。
「おはようございます! メンテナンス終わりましたか?」
昨日とは違って騒がしかった。ちゃんと働いてるみたいでよかった。
「おう、お前らか、ばっちりがってんだぜ」親指をグッと立ててこちらに向ける。大きな手だ私の2倍はあるんじゃないだろうか。 「ほれ、持ってけ持ってけ」
カウンターに綺麗に並べられたわたしたちの武器は新品みたいにピカピカになっていた。と言うか…
「なんか色変わってるんだけど……」
自分たちの武器なのは確かだ、長年使ってきたから握ればそれはすぐに分かるが、見た目が変わってると不安になってくる。
「それな、手入れがされてなかったって昨日言ったろ? 多分それのせいだ。本来はその色なんだろうな。俺も磨いてるうちに色が変わってきてたまげたわい」グハハと大口を開ける。「問題はないはずだが、一応確認してくれ」決まりなんでなと付け足す。
わたしのナイフの短い奴が刃の腹の部分が黒っぽい灰色で何か花びらのような模様が描いてある、刃の部分が白に近い鼠色、柄は黒く所々茶色の模様が入ってる。
長く細身のナイフは全体が雪のように白く綺麗だ、刃にも柄にも青い唐草のみたいな模様が入ってる。
一応、あまり使って無かった弓も手入れしてもらった。そこまで変わってない。茶色ベースの黒い筋が入ってて、折り畳み式のコンパクトな弓だ。ナイフに比べると劣るがこれもそこそこ良い物らしい。
レアのナイフはわたしの短い奴と同じように見えるもしかしてセットだったのかな?
弓は白く、何だか発光すらしてるように見えるくらい白くてキレイだ。
タクのハンマーは深緑ベースで複雑な濃い黄色い模様が入ってる。ハンマーの上が尖っててが攻撃にも使えそう。持ち手の下も四角い鋼の様なものが付いててこれでも殴れそう。
マーくんのは杖というより棒に近い。色は白い。頭にごつい装飾が付いてて近接も出来るようになってるそうだ。それと柄の下に丸い球が付いてる。
それぞれが確認をを終えると見計らったようにおっちゃんが口を開いた。
「よし、問題なさそうだな! また何かあればいつでも来いや、お前らなら歓迎するぞ、こいつもお前らの事気に入ったみたいだしな」モナカの背中をバシバシ叩く。
「だから痛いってば!」
んんっと咳払いして 「いや、アタシ友達とか少ないからさ、仲良くしてくれると嬉しいかなって」 気前悪そうにあっちこっち目線が泳いでる。
「えぇ、わたしたちで良ければ」モナカの手を取って握手をするとぱーっと表情が明るくなる
「不束者ですがよろしくおねがいします!」腕をブンブン降りたくる。
「また来るからその時は宜しくね」 手をなかなか放してくれなくてちょっと困りつつも。「それでは、そろそろ行きます。お世話になりました」
おっちゃんがモナカに耳打ちをしている。表情が驚いてから明るくなる。
「西門までお送りします!」
一緒に鍛冶屋を出て、西門へ向かう前にエルの店へ行く。
「こんにちはー、お世話になりましたのでご挨拶に……」
やっぱり中にはいない、となると。
「下と見せかけて上!!」
「ちょっとなによアタシの事なんだと思ってるのよ」
普通に後ろの扉から来た。
「いえ、下から来るなら上からもあるかなと、やはは」
「アタシだって普通に扉から出るわよ、それでもう旅立つのかしら?」ウインクをする。
「はい、お世話になったのでご挨拶に来たんです」レアが手を前に重ねてぺこりと挨拶する。
「そうなのね、気をつけて行ってきなさいな」
後ろのタクとマーくんへ視線を向ける。
「あんたたち、ちゃんと二人を守ってあげなさいよ?次会ったときに顔に傷なんて付いてたら、骨抜きにしてやるんだから」 指を骨が無いんじゃないかと思うぐらいグネグネ動かす。
「「 は、はい! 」」二人とも顔を引きつらせて乾いた返事をする。
「ふふん、それじゃまたいつか」と言って店の奥へ消えてゆく。
「悪い人じゃないのは分かるんだが、身の危険を感じるから怖いんだよなぁ……」「わかる」
二人はしみじみと言う。わたしには良く分からない。
それからモナカと色々話をしながら市場近くに馬車を借りに行く。借り場に行くとそこにはマルフさんが居た。
「あ、マルフさん、こんにちは」
「やあ、みんなしてどうしたの? もう出かけるのかい?」
あの馬車、借り物だったのか、ボロボロにしてしまったのでなんか申し訳ない。
「えぇ、中央まで行こうかと思いまして、マルフさん。いろいろ教えて頂いてありがとうございました」マーくんが一番色々お話ししてたし、話の合うのかな?商人とか向いてそう。
みんなで頭を下げてからお別れを言う。
そして馬車を選びに行く。
馬車には荷物運び用と移動用の2種類があって、マルフさんの馬車は荷物運び用だったみたい。
今回は移動用の馬車を借りた。四人が入っても少しスペースが合って、何より座る所がある。薄いけど布もあるから嬉しい。
そのまま西門へ向かう。
西門へ着いて、泣きながら送ってくれたモナカに別れを告げ、手を振る。
――さて、出発だ。
タイタンより、お昼前に出発する。
馬車はマーくんが騎手となってくれる。村で乗ってるのを見たことがあるから経験はあるのだろう。
「おお、これは速いな。これなら4日もあれば着くんじゃないか?」流れる景色を眺めながらタクが呟く。
「そうだねー、地図見る限り少し距離がありそうだけど、思ったより速くてよかったよ」手綱を握る姿が様になっている。あれ、わたしにもできるかな?後で教わってみよう。
「座る場所があるし、お尻の安泰は守られた」小さくガッツポーズしてるレア、嬉しそうだ。
後ろを振り返る。
東方都市タイタンの木製の壁が見える。
バタバタしてたけど今度ゆっくりと遊びに来よう。
浴衣も来たいし、会いたい人も出来たし、良い街であった。
―――さようなら、タイタン また来ます。
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