クラス支配計画part2?

 俺は今、全力疾走で学校へ向かって走っている。なぜかと言うと、見事に黒使 姫との約束に遅刻してしまったのだ。

「遅刻したら許さないから。」

黒使の言葉が脳から離れない。

(ヤバイヤバイヤバイ、何をされるかわかったもんじゃないぞ。)

そう思いながら一生懸命に走る。

学校が見えてきた。学校の正門の前には1つの人影が見える。黒使だ。

黒使が今までにないくらいの笑顔で俺の事を待ち構えている。

(あの顔はやばい。これは、あの作戦でいくしかない。)

俺も笑顔で、

「ごめーん!待ったー?」

と言う。

(これこそまさにテンプレ。さあ、「ううん、今来たところだよ。」と許すんだ。)

それを聞いた、笑顔の黒使ことダークプリンセスは、なぜか正門の前に置いてある、きっと学校の工事か何かで使うであろうレンガの山から1つレンガを手に取った。

そして、

「待ったに決まってるでしょ?相当な命知らずみたいね。私は待ったけど、あなたの死期は待ってくれないみたいね。」

と言いながら、笑顔で俺に近づいてくる。

俺は引きつった顔で

「ま、待ってくれ。遅刻して悪かった!だから、その右手に持ったレンガを俺に渡してくれないか?な?」

と頼む。

そうすると、ダークプリンセスは

「レンガ?なんのことかしら?私が手に持っているのはただのジェンガよ。今からあなたを正座させて、その太ももの上でジェンガをやるの。楽しそうでしょ?」

と満面の笑みで言った。

鬼畜だ。

一体だれが好き好んで、休日の学校の前で女子に正座させられて、しかも石抱いしだきを匂わせる拷問をうけなければならないのだ。

(ドMの方いませんかー?ここにとてつもないご褒美ありますよー?お願いだから、誰か代わって…。)

俺は一生懸命に

「お願いだから、勘弁してください!今日1日言うこと聞きますから!」

と頼み込む。 それを聞くと、ダークプリンセスは持っているレンガを元の場所に戻して、

「ふーん、今日1日言う事を聞く、ね。まあいいわ。その言葉忘れないでね。じゃあ行くわよ。」

と言って、歩き出した。


 黒使に付いて行くと、俺たちは近くの大きなショッピングモールのアニメや漫画のグッズなどがたくさん置いてある店にたどり着いた。

(なんだここは?ここはいわゆるあれか。オタクなる人たちが来る場所か。)

俺が不思議そうに周りを見渡していると、途中で黒使が俺のことを呼んでいることに気がついた。

「ちょっとこっち来なさいよ!」

と言って、少し高めのところにあるフィギュアを指差していた。

「あのフィギュアを取ってちょうだい?今日1日言うこと聞くんでしょ?早く。」

俺は渋々フィギュアを伸ばして取ると、そのキャラクターは黒いドレスに身を包んだ、いかにもお姫様という感じのキャラクターだった。

(あれ、これってもしかして…。)

フィギュアを黒使に渡すと同時に、

「この頭についてるリボン、お前がいつも付けてるやつとそっくりだな。」

そうすると、黒使は目を輝かせながら

「当たり前じゃない!このキャラこそ、何を隠そうダークプリンセスなのよ!そして、これは今日発売した新しいダークプリンセスのフィギュア!」

と言った。

(やっぱり、これが本物のダークプリンセスなのか。それにしても本当に好きなんだな。)

そうして、黒使はこの店から3時間ほど離れなかった。

(一体どんだけ見れば気がすむんだよ。)

とゲッソリした顔をした俺は、店の近くのベンチに座りながら思っていると、満足気な顔をした黒使が大量の袋と一緒に出て来た。

「はい、じゃあこれ全部持って。」

と言って、俺に袋を手渡す。

俺も言うことを聞くと言ったからには、逆らうずに大人しくその袋を持った。

「じゃあ、もう帰るんですか?」

と俺が聞く。

そうすると、黒使は不思議そうな顔で

「なにを言ってるの?これからが本番じゃない。」

と言う。

「え、これ以上買うの!?明日、俺の腕が上がらなくなっちゃうんですが。」

そう反応すると、

「別にそんな買わないわよ。でも、その、今から買うものは私だと少し、分からないことが多くてね…。」

と少し照れ臭そうに黒使は言った。

「へー。で、なにを買うんだよ?」

と聞くと、黒使はモジモジしながら

「美咲ちゃんに誕生日プレゼントを…。」

と答えた。

「え、柊さんってもうすぐ誕生日なのか?俺でさえ知らないのに、なんでお前だけ…。」

それを聞くと、黒使は少し嬉しそうな顔をして

「まあ、あなたと私とじゃ、美咲ちゃんとの仲の良さに天と地の差があるって事ね!」

と自慢気に語ってくる。

「まあそういう事だから、普通の女の子が喜びそうなものを教えなさいよ。」

と言われたものの、

今までの人生、誕生日プレゼントと言うものを家族以外からもらったこともないし、あげたこともない俺は

「そ、そうだな。やっぱりアクセサリーとかが無難じゃないのか?」

と少し適当に答えた。

「アクセサリーね。うん、アリだと思うわ。今からちょっとアクセサリーを探しましょ。」


〜1時間後〜


良さげのアクセサリーは沢山あったが、これだというものは見つからなかった。俺も黒使も頭を悩ませている。

(せめて、柊さんの好きなものでも知っていればいいんだけどなー。)

ふと、こないだの柊さんの言葉がフラッシュバックしてきた。

「私、エンジェルプリンセスが好きなの!」

(そうだ、柊さんはエンジェルプリンセスってキャラが好きって言ってたはずだ。)

俺は黒使に向かって

「柊さん、こないだエンジェルプリンセスが好きって言ってたよな?それに関係あるものでいいんじゃないか?」

と言うと、黒使もハッとした顔で最初に寄った店へと走って行ってしまった。

そして、走って帰ってきた黒使の手の中には、小さな小包があった。


 帰り道の途中、

「しかしまあなんだ、誕生日プレゼントなんて、お前も友達思いのところあるのな。」

と俺が黒使に声をかけると

「べ、別に友達想いなどではないっ!さっきはお前が話を遮ったから言えなかったんだが、これは、その、あれだ!クラス支配計画の一部だ!そうだな、言うなれば餌付け計画だ!」

と慌てて言った。

(餌付けって、柊さんはお前の家畜かよ。)

「そうか。まあ良いものが見つかったならよかったよ。じゃあ、俺はここで。」

と言って、俺の両手いっぱいの荷物を返すと、

「ちょっと待ちなさい!きょ、今日1日言う事を聞いてくれるんだったわよね?それなら、あなたのスマホを貸しなさい!」

と黒使は俺に言う。

「また、急になんでだよ。まあ友達もいない俺のスマホには、卑しいものはなにもないからいいけどな。ほら。」

とスマホを手渡すと、慣れた手つきでスマホを操作して、俺に返した。

「じゃ、じゃあ、また明日…。」

と黒使は小さく手を振って帰った。

(なんだったんだ?特にスマホの画面に変わった事ないし。まあいいか。)


 ある日の放課後、教室には俺と黒使と柊がいた。この前話してから、よくこうやって3人で放課後に集まる事が増えた。

結局のところ、俺は柊の誕生日を知る事はなかった。だけど、俺は最近俺らの中で少し変わったところなら知っている。

それは、黒使と柊が会話している時、2人が前よりも笑顔な時間が増えた事。

そして、柊の頭に黒使とお揃い形をした、小さな黄色いリボンが付いた事に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る