3人はプリンセス?(前編)

第6話 3人はプリンセス?(前編)



 黒使 姫とクラス支配計画をしようと言ったものの、具体的になにをすればいいかわからない。

家で1人で黙々と計画を練っていた。

(まず、俺たち2人ともそこまでクラスのやつの事知らなくないか?せめて2人が共通して、話したことあるやつがいれば…)

ふと、今日の柊の笑顔が浮かんだ。

(は!もしかして、今の走馬灯!?俺死ぬの!?いや、待てよ?そういえば、柊さんは黒使と話したいんだよな。黒使の手帳にも友達になりたいって書いてあったし。柊さんはクラスのマドンナだ。仲間にすればチートキャラだ。)

そう思った俺は、すぐさま布団に入った。


 次の日の昼休みを迎えた。

いつも通り黒使と昼食をとりながら、俺は小さい声で言った。

「昨日の計画なんだが、俺に提案があるんだが乗らないか?」

昨日の作戦とはなんだ?という顔をしていた黒使だが、徐々に思い出して恥ずかしくなったのか、顔が少し赤くなっている。

「ほ、ほう。どんな提案なんだ?話してみろ。」

そう言った黒使の耳元に口を近づけてゴニョゴニョとつぶやいた。

それを聞いた、黒使は

「ちょっ!ちょっとそれはいきなりレベルが高いのではなかろうか!?いくらダークプリンセスの我でも、なんでも出来るわけではないぞ…。」

俺はニヤリとして、

「大丈夫だ、俺は勝ち目のない戦いはしない主義だからな。安心しろ。」

本当か?という顔がこっちを見ている。

「まあそういう事だから、今日の放課後、教室に来いよな?」

と言うと、黒使は不安そうに

「わ、わかった。」

と言って頷いた。

(あとは、俺がもう一仕事しないとな。)


 昼休みが終わり、5時間目の授業が終わった。

俺は勇気を振り絞って、隣の席の柊に話しかけた。

「ひ、ひ、ひいらぎしゃん!」

また噛んだ。

いや、噛んだことなどどうでもいい。俺が柊さんに話しかけたということが、すごいのだから。

「こないだ、黒使と話したいって言ってたよね?よければ、今日の放課後にさ、黒使と話す機会を設けようと思うんだけど、どうかな?」

そう言うと、柊はすごい勢いで俺の手を取って

「ほんと!?ありがとう西村くん!」

と目をキラキラさせながら言った。

(可愛い、もう無理。結婚しよう。)

と思った矢先、周りの男子からのまるで鋭い刃物のような視線に気がついた俺は

「じゃ、じゃあ今日の放課後に教室に集合ね。よろしくねー。」

と言って、その場から逃げた。

(誰も俺たちの会話を聞いてないといいが…)


〜放課後〜


 うちのクラスは割と部活に所属している人が多いおかげもあり、教室には誰もいなくなった。

しばらく経つと、柊が教室に入ってきた。

「お待たせ〜!あれ?黒使さんはまだ来てないのかな?」

と言いながら、俺の隣の自席に座った。

(もうこのまま2人だけの空間でいいのではないだろうか。)

「も、もうすぐ来るんじゃないか?」

と俺が言うと、

教室のドアがガラッと開いたと同時に

「待たせたな!そなたらが、どうしてもこのダークプリンセスとお話をしたいと言うから、来てやったぞ、感謝するがいい!」

と言って、黒使が現れた。

柊が反応したように口を開く。

「わぁ!やっぱりすごくキャラが作り込まれてるのね!3人はプリンセスのダークプリンセスよね?」

それを聞いた黒使は、走って柊の元へ近づいて、手を取って

「そなた、ダークプリンセスを知っているのか!?ほんとか!?ほんとなのか!?」

まるでカブトムシを見つけた、少年のような顔をしている。

「本当よ!小さい時見てたもの!」

と柊も続ける。

「へー、柊がそういうの知ってるなんて意外だな。」

俺が横から口を挟むと、黒使はこっち向いて

「3人はプリンセスも見たことないような、外野は黙っとけ!」

と言い放った。

(俺が外野だと?この友達がいなくて、野球すらやったことない俺が外野だと!?)

しょうがなく、外野は黙っておくことにした。

(あーあ、俺も柊さんと仲良くなりたかったのに…)

俺の目線の先には、2人の可愛い女子がガールズトークをしている。

柊の声が聞こえる。

「私は、エンジェルプリンセスが好きなの!」

話の内容は女子小学生並みの内容だ。

少し経つと、柊が急に立ちだして、こう言った。

「そうだ!今度3人でカラオケに行こうよ!」

俺は驚いた。

そしてそれを聞いた黒使は、俺の方を見ながら、

「なぜ、あいつも一緒なのだ?2人がいいのだが。」

(おい、ここまでやってやったのは俺だぞ。俺のなにが不服なのだ。そして、行きたい。初カラオケ行きたい。)

なにを隠そう、カラオケに行ったことがないのだ。

何度かヒトカラに挑戦しようとしたが、店の前で毎回帰ってきてしまう。

しかも、女子2人とだ。男なら行くしかない。

「行ってもいいなら行こうかな?」

そう言うと、柊はパンっと手を叩いて

「じゃあ、決まりね!そうだなー、今週の日曜とかどう?みんな空いてるかな?」

2人ともコクリと頷く。

「日曜日に学校前に11時集合ね!じゃあ、私は用事があるから帰るね!バイバイ!」

(嵐のような人だった。普通な人はみんなあんなもんなのか?見習わなければ。)

「よかったな。とりあえず、仲良くなれたじゃないか。」

と俺が言うと、

「まあね、最後の方はあなた、邪魔でしかなかったけど。」

と長い髪を手で払い、なびかせながら言う。

(この女…、明日から一緒にご飯を食べてやらないぞ。)

「でも、まあ今回の事は感謝するわ…、きっと1人だったらこんな機会自体ありえなかったもの。今週の日曜日楽しみましょうね!」

と黒使は笑顔で言った。

相当嬉しいのだろう。


「そうだな。じゃあ、俺も帰るわ。じゃあな?」

と言って、帰ろうとする俺の制服を黒使は掴んで言った。

「正門のところまで一緒に帰ってやってもいいぞ…。」

(え、なにこれ、なんかフラグ立ってね?なんとかフラグだよね?これ!)

俺は少し照れ臭そうに

「別に帰ってくれるなら、一緒に帰るけど?早く準備しろよ。」

と言った。黒使はすぐさまカバンを持って、2人で教室を出た。

夕日の光が顔に当たる。

いつもとは違う感じが、なんか新鮮でなんか良い。

(男女で一緒に下校。青春だ。もしかしたら、こいつ、俺に気が…)

と妄想にふけっていると、隣から

「ちなみにあなた、カラオケでどんな歌を歌うつもりなの?」

と質問された。

「俺か?俺は一応、一般ウケしそうな歌なら知ってるから、そこらへんを歌おうかと。そう言うお前は?」

と聞き返す。

「私はやっぱりサンプリの歌かなー!」

となにやら自慢気に話している。

「サンプリ?なんだそれ?初めて聞くグループだな。」

と言うと、

「サンプリを知らないと言うの!?3人はプリンセスのオープニングとエンディングを担当しているグループよ!」

(いや、そんな事を急に言われても困る。)

黒使は少し考えて、俺に言った。

「じゃあ今日は金曜日だから、あんた日曜日までにサンプリの歌を聴いて、一曲でもいいから覚えてきなさい?歌わせるから。もし、覚えてこなかったら、こないだの体育の授業の時の事を柊さんに伝えるから。よろしくね。」

(こないだの事件のことを言われるとなにも反論出来ないじゃないか!てか、歌うの!?)

「う、歌うのはキツイ!せめて聴くだけにしてくれ!絶対に聴いてくるから!」

と頼みこんだ。

「しょうがないわね。わかったわ。ただし絶対聴いてくること!わかった?」

と黒使に念押しされる。

「わかったわかった!だから、こないだの事については黙っといてくれ!」

と言うと、

「それは、あなた次第よ?早く帰って、聴いてきなさい?」

と黒使が言うと、正門にちょうど着いた。

「じゃあ、私はこっちだから。じゃあね。」

そう言うと、黒使は足取り軽く帰っていった。

(俺に立っていたフラグは、サンプリフラグかよ。)

そんな事を思いながら、俺は自転車に乗った。


 家に帰り、俺はベットに横になりながら、言われた通りにサンプリの音楽を聴こうとして、調べていた。

(全35曲!?どんだけあるんだよ。とりあえず一曲だけ聴いてみるか。)

と一曲流してみると、女の人のヘヴィメタだった。

(おいおい、小学生とかが見るアニメだよな?最近のは、こういうものなのか?まあ、大半は普通の歌っぽいけど。)

少し戸惑い、全35曲を自動再生しながら、日曜日に事について考えていたが、全くもって想像できない。不安と期待を抱きながら目を閉じた。

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