Who are you〜もう一度嘲笑って〜

KAWAIYUKI

第1話 ルーナ湖

エルフが佇んでいる。何か言っている?なんだろう

「ルーチェ…ルーチェ」私の名だ。

とても懐かしい声。鈴を鳴らしたようなコロコロとした声。

イリスだ。小さい頃に引っ越してしまった幼馴染。

よく夢の中で遊ぶんだ。

「逃げて」なんで 一緒に遊ぼうよ。

「黒い翼を持った妖精がそっちに向かってる。早く逃げて」

ねえ。待ってよ。行かないで


「さっさと起きんか〜〜〜〜い!!!」「わ〜〜〜〜〜〜!!」

ブフェーラの起こした風が翼に当たって、私の身体は飛んでしまった。

辺りを見渡すとまだ夜明け前だ。ブフェーラは蝶の様な羽で浮かんでいる。

「何よー。もうちょっと寝させてよ〜」

「急がないと、ピエトル・デ・ルーナ(月長石)でアルバ(夜明け)見れないぞ」

「!!やばっなんで起こしてくれなかったの!」

「何度も呼んだじゃないか。ホラ」

「あ。フィコとフレーズ(無花果と苺)の実だ。ありがとう置いといて〜」

「タミーマ(お守り)、落とさないようにな」「分かってるー」

私の寝床の横のくぼみに触れると表面の樹皮が横にずれて中の空洞が現れた。

ルビ・ホフトイ(ルビーの頭飾り)を頭に。フィコとフレーズの実を入れたタシャ(ポーチ)をベルトにつけて、スケッチと画材を持って飛び上がった。


私とブフェーラは人間ではない。私は木の妖精、ブフェーラはシルフの一人だ。私は生まれて間もない頃にヴァストーク・レス(東の森)に置き去りにされていた。私は木漏れ日の真ん中で籠の中に入れられていたと言う。書き置きはなく、ディアデムだけが残されていた。この森に住んでいる妖精達やエルフが私を育ててくれた。木漏れ日の真ん中に置かれていたからか、みんな私のことをルーチェ”光”と呼ぶ。ブフェーラ”強風”は私と一緒に育った幼馴染の女の子。今日は一緒にアルバを見るんだ。


「早く早く」「待って〜」

二人ではしゃぎながらピエトル・デ・ルーナ湖についた。ここがそう呼ばれているのは、満月の晩になると月長石に見える。場所によってはカエルラ(青)見えたり、イリス(虹)色に見えたりするからだ。近くの丘に着いた時にはすでにアルバが始まっていた。その後しばらくはスケッチに集中していてどれくらい時間がかかったのか、気が付いたらすでにアルバは終わっていた。

「描けた〜?」「ああ」「最近いっぱい描いたね」「そうだな…ん?」

二人でスケッチを見せ合いっこしていた時


「危ない!!!」


突然ブフェーラに引っ張られた。その代わりにさっきまで私たちが座っていた所に何かが落ちてきた。土ぼこりが舞い、それが収まったらそこにはメラン(黒)の髪と翼を持った男の子が倒れていた。

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