紀・魍魎伝説/谷 恒生

 現在連載中のノンフィクション作品の中で、神社の渡御行列に用いる四神ししん旗(青龍旗、朱雀旗、白虎旗、玄武旗)について記しています。

 文中に補足説明を書き始めたのですが、四神への思入れが強く(^^;)、長くなりそうだったのでこちらへ独立させて公開と相成りました。


 四神を初めて知ったのは、三十年ほど前に読んだ伝奇ロマン小説「紀・魍魎もうりょう伝説」(谷恒生/角川書店)です。それまでも、白虎や朱雀、青龍は単体で耳にしていたものの、玄武を入れた四体が四神としてあがめられているのは知りませんでした。まずは四神のご紹介です。


 四神は中国の神話を基にした、四方の方角を司る霊獣です。

 元々は方角を表す色と神獣を組み合わせたもので、東を表す青と龍、南を表す朱(赤)と雀(スズメではなく鳳凰を示すと言われています)、西を表す白と虎、北を表す玄(黒)と武(亀の甲羅に蛇が絡みついたもの)、といった具合です。麻雀をやる方なら方位の順番がトンナン西シャーペイであることはご存知でしょう。

 それぞれの色は四季にも対応していて、順に春・夏・秋・冬。太陽が昇る東は春で、暑い夏は南、西日が傾く秋を経て、冬の季節である北。わかりやすいですよね。色と季節を結びつけ、青春、白秋といった言葉が生まれたのはよく知られた話です。


 四神と方位の覚え方は色々ありますが、私はかなり特異かも。この「紀・魍魎伝説」の舞台となる平安中期に四神が登場します。(以下、ネタバレを含みます)


 主人公の現代青年が平安時代に現れ、体内に宿していた白虎の力が目覚めます。(文ストの中島敦ではありません(^^;)) 関東で暴虐の限りを尽くしていた平将門と対決し、勝利した彼は自らが平将門として帰還。青龍を宿した藤原純友、朱雀(女性だったはず)、玄武らと共に、魍魎が跋扈ばっこする平安京を救おうと立ち上がります。対する敵は、異次元界から日本を支配する礼無利亜れむりあ人。果たして未来は変わるのか……。

 といった話なのですが、結末に向けて話が拡散してしまい、強引に終わらせた感があります(^^;)。そして、もう一つ――すでに気づいた方もいると思いますが……。

 白虎が将門? 東だから青龍じゃないの?

 作者の意図は分かりませんが、四神が持つ方位との関連性と真逆な設定が、かえって印象深く脳裏に焼き付くこととなりました。玄武が藤原純友(西)を助けに現れたりするし、あまり深い意味はないのかも。



 最後に、平安京の四神相応説について。

 物語の舞台となった平安京(京都)は、四神に護られた地として選ばれたという説があります。

 東の青龍は大きな川、南の朱雀は池、西の白虎は街道、北の玄武は山、これらの条件に当てはまる地は四神に守護され繁栄するとされ、東に鴨川、南に巨椋池、西に山陰街道、北に船岡山があるこの地に都が作られた、とされています。

 諸説あるようですが、平安京の成り立ちに思いを馳せながら、締めさせて頂きます。

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