天久鷹央の推理カルテ/知念実希人

 主人公の名前、読めますか?

 「あまく たかお」と読みます。

 男性――ではなく、女性内科医師。

 それも高校生に間違えられるくらいの童顔です。文庫本のカバーイラストはラノベ系のかわいい女の子が描かれていて、その影響で、この本を手に取らずに過ごしてきました。(^^;)


 二十代の若さながら超人的な知識を誇る彼女が、医学の観点から謎を解明していくミステリーです。

 若くてかわいくて超人的な知識って、主人公はチートじゃん、と思われるかもしれませんが、彼女はアスペルガー症候群という発達障害を持ち、対人コミュニケーションがうまく取れず、廻りの人々を怒らせてしまうことも度々。

 そんな彼女をサポートするのが、部下の医師・小鳥遊優です。


 この名前、読めますか?

 「たかなし ゆう」と読みます。

 女性――ではなく、男性内科医師。

 しかも空手有段者の元外科医で、暇な時間?に鷹央の命令で救急外来へ貸し出されています。その辺のいきさつは本書を見て頂くとして……。



 この物語の魅力は、医師でもある作者・知念氏の医療知識に裏付けされたミステリーという点にあります。殺人事件は起きないけれど、様々な事件や謎が医学的な視点から解き明かされていくのは、へぇーという知識欲を満たしてくれます。

 ちなみに、知念氏は医療系のトリビア(雑学)をツィートされていて、四万人以上のフォロワーを持つそうです。

 余談ですが、シリーズ五作目「神秘のセラピスト」では、私の既往歴に対する副作用が謎解きの一つとして明かされ、『あぁ、そう言えば、そうだった』と納得しました。ミステリー好きとして、言われるまで気がつかないのも如何かとは思いますが。


 しかし、最大の魅力は鷹央と小鳥遊がお互いに成長していく様だと思います。

 他人との接触を避け、場の空気が読めない鷹央が、悩みながらも少しずつ人として成長し、そんな鷹央に振り回されながら、小鳥遊も人として内科医として成長していく――読み終わるごとに温かい気持ちにさせてくれる、そんなミステリーなのです。



 知念氏の作品では、このシリーズの他にも「仮面病棟」「時限病棟」など医療知識を基にしたものが多くありますが、「屋上のテロリスト」「優しい死神の飼い方」といった、読後にほっこりした気持ちにさせてくれるものもあります。

 また別の機会に紹介したいですね。

 

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