第二ー八話:第三試合(後編)
フィールドで魔法が連射される。
一つ、変わったことがあるとすれば――
「さっきまでの余裕はどこに言ったんですか?」
立場の逆転である。
何故こうなったのかは分からないが、ルイシアは追いつめられていた。
桜の手にあるのは剣で、その剣から氷属性以外の魔法を放つことが出来る。
(厄介な……!)
本当に厄介である。
ルイシアの相棒も全属性対応だが、それ以上に相手――桜の持つ武器は厄介だった。
魔槍だったのはまだ良い。
だが、桜が今持っているのは、
「チッ……!」
桜の攻撃が掠り、追いつめられていたルイシアは、舌打ちしつつも桜の攻撃を必死に
何故こうなったのか。それは数分前に遡る。
ルイシアと桜は普通に試合をしていた。
そこに
どこから降ってきたのかも分からない
自身の相棒である魔槍を投げ捨て、剣を
だが、平然と話しているのを見ると、完全に支配されていないのか、と理解したルイシアは、
(精神干渉系でないだけでもありがたいと思わないとダメみたいだね)
と、思いながらも、様子を窺いながら対策を考えていた。
結果、今の状況となったのだ。
「……っ、」
いくら魔力が有り余っていたとしても、体力も無限にあるわけではない。
「ルイシア、フィールドから降りろ!」
このまま何もしなければマズいと判断したルカが、ルイシアに言う。
その言葉に、はっ、としたルイシアはルカに目を向け告げる。
「嫌です」
「嫌って……」
ルイシアの返事に、ルカは困ったような顔をする。
「ギリギリまで粘ります」
桜に目を向け、相棒の形状を変えながらルイシアは言う。
「それに、精神干渉されてないなら、手はいくらでもある」
(本気は出さないつもりだったけど――)
「その剣、叩き切ってやる」
静かに告げたルイシアに、観客たちから歓声が上がった。
☆★☆
「
銀にリヴァリーが声を掛ける。
「
「知るか」
即答である。
えー、と言いたげな顔をするリヴァリーに、横から声が掛けられる。
「何、この状況」
説教から解放された
「説教、終わったんだ」
良かったね、と言うリヴァリーに、質問に答えろ、と鞍馬は睨む。
「アルカリートも説明、いる?」
何となく察知していそうなアルカリートに尋ねるリヴァリー。
「必要ない」
あ、やっぱり? とリヴァリーはそんな顔をする。
「だが、相手の武器は何だ。見たことがないぞ」
アルカリートは銀に尋ねた。
だが、ルイシアが今、その手に持つ武器は見たこともない。
アルカリートが頼人に目を向ければ、頼人はルイシアの武器に驚いていた。
(あいつも知らない武器、か)
そう思いながら、アルカリートは本部の面々と共に、試合を見るのだった。
☆★☆
「何だよ、あの武器……」
頼人は驚いていた。
大体の武器は把握してるつもりだった。
(なら、ルイシアの持つあの武器は……)
頼人はルイナを一瞥する。
そんなルイナの表情は何とも言いにくいものだった。
「……」
「あれ、何なんだ?」
ルイナの無言に対し、
「あれは……」
ルイナは答えようとして、口を閉ざした。
(あれは、あれを出したという事は――)
ルイシアが本気だということだ。それぐらい、彼女が――いや、彼女の持つ剣が厄介ということだ。
本気は出すなとは言ったが、今回は仕方ない。
(私は援護はしないから)
ただ、見守るだけ。
それでも、ルイシアと桜の試合を見ていたルイナたちは、少しずつ不安になっていた。
もし、ルイシアが負ければ、頼人とルイナは負けるわけにはいかないからだ。
(いや、今はそんなこと関係ない)
何があっても、ルイナはルイシアを信じるだけだ。
☆★☆
「……っ、」
床に思いっきり叩きつけられる。
だが、ルイシアは戦っていて、分かったことがあった。
それは、今みたいに床に叩きつけるのは、桜の意思ではなく、剣の能力だということ。
「うざっ」
思わず本音が出るルイシア。
起き上がろうとして、ルイシアは桜に腹部を蹴られ、フィールドの隅に追い詰められる。
「意外と呆気ないんですね、先輩」
そういう桜に笑みを浮かべるルイシア。
「っ、そっくりそのまま返すわよ。桜」
起き上がり、立ち上がりながらも、服に付いた土などを軽く払う。
「自分の相棒じゃなくて、ぽっと出のそんな武器に頼っていい気になるのは変じゃない?」
「なっ……」
その言葉に苛ついたのか、桜はフィールド外へ突き落とそうと攻撃するが、ルイシアは難なく躱す。
「……」
桜が攻撃し、ルイシアが避ける。
ひたすらその繰り返し。
そのままフィールドの中心に戻る二人。
その隙にちゃっかりと桜の槍を拾うルイシア。
それに気づきながらも、何も言わない桜。
「その剣、捨てなよ」
「お断りします」
「捨てるって言っても、フィールドの外に、だよ?」
「嫌です」
一応、話しかけてみれば、これである。
理由を言っても、手放したくないらしい。
「なら、使う手は壊すのみ、か」
ルイシアは攻撃を仕掛けるが、避けられる。
もはや予想云々ではない。
実力勝負だ。
桜の槍と自身の相棒。
どちらを使うかなんて、決まっている。
「あんたの主を取り戻すよ」
桜の槍に話し掛け、攻撃態勢に入るルイシア。
桜の槍は、使用者である桜も得意とする氷属性の武器。
桜のことだから、対策をしてないわけがない。
試合開始時の立場まで逆転したけど、それでもルイシアは負けるつもりはない。
(今から放つ魔法は、一撃で決めないといけない魔法)
でも、放つまでの時間が詠唱を含めて必要である。
詠唱破棄が出来ないこともないが、そうすれば威力は格段に落ちる。
あの剣の破壊が目的なら、詠唱破棄をするわけにはいかない。
とはいえ、詠唱は必ずしも声に出せばいいわけではなく、心で唱えても問題ない。
(だが、その余裕もあるかどうか)
ルイシアは息を吐いた。
しかし、体力はまだ残っている。
「何とかなりそうね」
作戦を纏め、ルイシアは桜に攻撃を仕掛けた。
☆★☆
桜の持つ剣とルイシアの持つ槍がぶつかる。
「……っ、」
やはり間合いか、と思いながら、桜は間合いを取る。
さっきまでの試合内容を思い出し、よくもまあルイシアは対応できたな、と思う桜。
「“
桜が火属性の魔法を剣に纏わせ、攻撃するが、ルイシアは避け、
「“
桜の“炎刃”に、ルイシアは応戦する。
(やっぱり、
多属性持ちが厄介なのは、ルイナの相手をしていて、理解していたから大丈夫かと思っていたが、やはり『前は前、今は今』である。
「“
すかさず攻撃する。
だが、桜は“炎刃”で相殺する。
「せっかく、他の属性も使えるのに、火属性しか使わないつもり?」
「そんなの、私の勝手です!」
まぁ、そうなんだけど、と答えるルイシアに、熱風が放たれる。
「あ、良いこと思いつきました」
「却下」
桜が内容を言う前に断る。
「まだ何も言ってません」
「聞かなくても分かる」
「へぇ……」
炎の渦と風の渦がぶつかる。
「その髪、邪魔そうだから切って上げます」
「断る。断固拒否だ」
笑顔で言う桜に、拒否反応を示すルイシア。
「邪魔になるから、縛って纏めているんじゃないんですか?」
「私の髪型は、今は関係ないでしょ」
不思議そうに言う桜に、不機嫌そうにルイシアは返す。
「そうね。なら、その髪留め、壊して上げる。髪と一緒に」
「どれだけ、髪にこだわるのよ!」
唐突に髪の問題になったとはいえ、どれだけその問題を引っ張るんだ、とルイシアは思う。
(というか、髪型はどうでもいい。髪留めを壊されたら、試合が終わるまで邪魔になるじゃない!)
何だかんだでルイシア自身も気にしていたらしい。
炎の渦と風の渦の間を突破し、振り上げた剣を振り下ろす。
「ちょっ……」
さすがに渦の間を通ってくるのは、予想外である。
だが、それ以前に、パキンという音がルイシアに聞こえ、目を大きく見開く事になった。
「なっ……」
視界に髪が見えて、ルイシアは理解した。桜の言うとおり、髪留めが壊されたのだと。
「あっははは、そういうこと」
そんなルイシアの様子を見て、高笑いする桜。
対して、驚く観客たちと銀を除く本部側の面々(つまり、リヴァリーたち)、ルイナと頼人を除くツイン側(つまり、玖蘭たち)が驚いていた。
だが、驚くのも無理はない。髪を下ろしたルイシアの姿は、ルイナとそっくりなのだから。
動揺する玖蘭たちに、ルイシアは気にした様子もなく、壊された髪留めを拾う。
「あーあ、本当に壊してくれちゃったんだ」
壊れた髪留めをくっつけたり、離したりしながら、ルイシアは桜に呟く。
「私の髪留めってさ、魔力の制御装置なんだよね」
言いたいことが分からないと顔をする桜。
ルイシアが言うか言わないかのうちに、審判であるルカは何故か物凄い勢いで、二人から距離を取っていた。
「|髪留め(これ)、かなり高かったんだよね」
「それが、どうしたのよ」
何が言いたいの、と桜は首を傾げる。
「弁償。私が勝ったら、
「全額って、正気!?」
「私は正気。というか貴女に言われたくない」
何の感情も込められていない目を向けられ、桜は凍りついた。
「そんなの、勝たなくったって、払ってやるわよ。
かなり自信満々に言う桜に、ルイシアは笑みを浮かべる。
「そう。じゃあ、約束ね。
「……」
これで桜は約束は破れなくなった。
「でも、よく立っていられるわね」
「は?」
また訳の分からないことを、と言いたそうな桜に、ルイシアは説明する。
「私の魔力に当てられて、ふらつかないのって、ルイナや銀先輩みたいな、かなりの魔力保有者ぐらいなのに」
そういうことか、と桜は理解できた。
そんな二人の間――というより、ルイシアよりに、何かが投げつけられる。
投げつけられた何かは跳ね返り、フィールドの床に落ちる。
ルイシアが目を向ければ、何かを投げたような体勢のルイナがそこにいた。
「……ざん」
「ルイナ?」
体勢を戻しつつ、ルイナが呟けば、頼人が怪訝そうな顔をする。
「散々、私と同等と言った上に、追い詰められて、切羽詰まってその
それを聞き、驚きつつも、ふっと笑みを浮かべるルイシア。
「本当に、凄いなぁ。ルイナは」
ルイシアはそう言いながら、投げつけられたものを拾い、ツイン側の面々に目を向ける。
「凄い、凄すぎる」
そして、ルイナから頼人、玖蘭、
「勝つよ。リーダー命令だからね」
ニヤリと笑みを浮かべ、桜を見る。
「まだやるつもりですか?」
「一度の逆転で調子に乗らないの」
そんな状態で、と問いかける桜にルイシアはそう返す。
「私が貴女を逆転する可能性だって、あるんだから」
「……」
それを聞き、目を細める桜。
「さて、髪留め有りと無しの私、どちらとバトルしたい?」
にっこり微笑み、ルイシアは尋ねた。
☆★☆
「……」
髪留めを壊されたルイシアの試合を見ていたツイン側――ルイナたちだが、リーダーであるルイナの機嫌が悪く、ツイン側の空気自体を悪化させていた。
「つか、何でルイシアの髪留めを壊されたぐらいで、お前が不機嫌になってるんだよ」
頼人が尋ねれば、ルイナは不機嫌そうな視線を向けただけだった。
「ルイシアが言ってたでしょ。
やはり不機嫌は直らないらしい。
「そもそも、不機嫌の理由が分からないんだけど」
美波の言葉に、頼人と玖蘭が同意する。
「ルイシアの性格が若干変わったの分かる?」
そう言われ、フィールドに目を向ける三人。
言われてみれば、違う気がする。
「ルイシアはさ。髪留めが無くなると、冷酷さが増すんだよね」
何となく冷たい。
それが嫌だと、ルイナは言う。
「
だが、壊された現在は違う。
ルイシアがルイナと同等――いや、ルイナとルイシアが同等の実力者だと言われた理由の一端が、髪留めを外したルイシアの状態である。
(あくまでも一端、だけど)
今だって、戦っている。
(どんな性格になったって、ルイシアはルイシアだよね)
もしもの場合は止める。
(それが、私の責任だから)
☆★☆
ルイナに投げられた髪留めをポケットにしまい、桜と対戦するルイシア。
そんな彼女たちを、本部の面々も見ていた。
「銀、知ってたのか」
アルカリートに尋ねられ、視線だけ返す。
そんな二人に、観客席にいた茶髪の男は言う。
「知ってたに決まってるよなー」
「……」
そんな茶髪の男に、睨みつけるような視線を返す銀。
「送り主が知らないわけないか」
リヴァリーの言葉に、銀は徹底的に無視することにしたらしい。
「でも、あそこまでの魔力量だと、いろいろと面倒くさそうだな」
鞍馬の言葉に、茶髪の男とリヴァリーが同意する。
「というか、抑え込んでいた彼女も凄いけど、よく制御装置の方も
「あの制御装置は特注品らしい」
リヴァリーの言葉に、銀がようやく答えた。
「特注品?」
「ああ。だから、
銀は内心で無理だろうけどな、と付け加える。
ちなみに、銀がそれを知っている理由は、ルイナとルイシアと一緒にいた際に、本人たちから聞いたためである。
もし、ルイシアが暴走したとしても、ルイナが止めるだろうから大丈夫だろう、と銀は思った。
(さて、あいつ相手にどこまで出来る? 獅子堂桜)
最強に近い存在に、果たして武器を変えた桜は届くのだろうか。
☆★☆
「氷属性メインなら、氷結系の最上位魔法ぐらい取得しとけよ」
そう言いながら、ルイシアは桜と攻防を続けていた。
「――“
最上位魔法を取得しとけという割には、ルイシアは最上位ではなく上位魔法を使う。
使えないわけではない。
ただ、使えばうるさそうだから使わないだけだ。誰とは言わないが。
「うわわっ」
桜が“凍土”で転びそうになる。
「“
その隙を付いて、ルイシアは攻撃する。
「っ、“火炎弾”!」
二つがぶつかり、爆発が起きる。
(今……!)
タイミングを見て、すぐさま詠唱に入る。
「『凍てつく氷結の世界』」
それが聞こえたのか、桜がはっとした顔でルイシアを見る。
「『貫くは氷結の刃』」
詠唱を完成させるわけにはいかない、と桜が攻撃するが、ルイシアは器用に避けながら詠唱を続ける。
「『善には情けを 悪には裁きを』」
次で詠唱は完成する。
それは――魔術師協会が誇る氷属性の
「『判決を下せ――“
ズドン!
大きな振動と共に、桜が持っていた剣に突き刺さり、剣にひびが入る。
「た、ただの氷結魔法、じゃないの」
そう言う桜だが、ルイシアは知っていた。
彼女が、この魔法がどんなものなのかを知っているということを。
“
氷結系上位魔法で、その効力は状況により変化する。
今回は運良く桜の持つ剣を狙ったように、貫いてくれたらしい。
ちなみに、最上位魔法には、“絶対零度”や“永久凍土”があり、どちらも剣だけではなく、桜まで攻撃してしまうため、ルイシアは使用しなかった(その他の理由として、桜の槍が耐えられるか分からなかったということもある)。
ピキピキと剣を通じて、桜の身体が凍り付いていく。
「ね、ねえ、氷の侵食を解いてくれない?」
縋るようにルイシアに懇願する桜。
そんな彼女を見て、ルイシアは呟く。
「あっさりと頭を下げるのね」
はぁ、と溜め息を吐いた後、内心で舌打ちし、侵食を止める。
侵食が止まったのを確認し、安堵する桜。
「安心するのはまだ早いでしょ。試合はまだ終わってない」
ルイシアの言葉に、身体の
そんな怖がる必要ないのに、と思いつつ、そういやこの姿だと怯えられるんだよなー、と理由が分からず、内心首を傾げるルイシア。
(まあ、今は決着をつけますか)
桜の槍ではなく、自身の相棒を振り上げる。
「こ、殺そうとするのは――」
ルール違反、そう言おうとしたのだろう。
でもそれは、最後まで言われなかった。
桜を倒せばツイン側の勝利だが、ルイシアは桜ではなく、彼女の持っていた剣を攻撃した。
「何で……」
「私は命を奪うほどのことはしていないし、第一、私自身に何の利益にもならないから」
答えになってねーよ、というルイナの視線を感じつつ、それに、とルイシアは付け加える。
「
「あ……」
この剣がフィールドに来てから、ルイシアは剣を破壊するだの壊すだの、何度もそう言っていたのを思い出す。
つまり、桜がその剣を手にしたときから、ルイシアの中では
「その剣の処理は任せた」
「えっ」
そう言うと、驚いたような桜をフィールドに放置し、ポケットから髪留めを出し、髪を纏め、いつも通りのポニーテールに戻ったルイシアが、あ、と何か思い出したように、桜に言う。
「髪留めの弁償、忘れないようにね」
「……ちなみに、値段は?」
肝心なことを聞いていなかったと恐る恐る尋ねる桜に、ん? とルイシアは口を開く。
「金貨十枚」
ぴきっ、と場が凍り付く。
「よ、よよよよく、そそそんなもの、手に入れたわね」
「無いと被害者が出るからね。私の中でも一番の出費は
あっさりと言い放つルイシアに震えが収まらない桜。
(私は何て言うことを……)
内心頭を抱える桜を見て、頼人がルイナに呟く。
「お前らの金銭感覚、変わってるもんな」
余談だが、ルイシアの髪留め代金である金貨十枚は、ルイナの実家である柊家が一部(それでも金貨四枚程度)出している。
本人たち曰く、親同士と子供同士が仲良いためらしいが、本当の理由は、当時子供だったルイナとルイシアが分かるはずもなかった。
なお、ルイシアと同等の魔力を持つルイナが制御装置を必要としないのは、契約精霊たちという消費先があるためである。
そして、ルイシアに向かって投げられた髪留めは、ルイナが念のためと所持していた髪留めである。
そんなことはさておき、ルイシアの言葉で桜が噛みついていた。
「どどどうやって払えと!?」
「分割払いでもいいよ」
そういう問題ではない。
「獅子堂に払えないものは無いんでしょ?」
「う、ぐっ」
確かに、桜はそう言った。
「まあ、無理にとは言わない。直せないわけじゃないしね」
え、と再び場が凍りつく。
だが、意に介さないルイシアはルカを一瞥し、フィールドから降りるために、歩き出す。
『第三試合、勝者――
審判をしていたルカは、ツイン側の勝利を告げた。
☆★☆
「ご苦労様」
「ん」
フィールドから降りてきたルイシアを労うルイナ。
「さて、あと二試合か」
「ルイナはともかく、頼人は大丈夫?」
ルイシアの言葉にどういう意味だ、と目を向ける頼人。
「頼人なら大丈夫。……多分」
「おい」
ぼそりと付け加えられた言葉を聞き取った頼人はツッコむ。
「まあ……早く行って、さっさと勝ってきなさい」
そういうルイナに溜め息で返し、頼人はフィールドに上がる。
――本部側。
「ごめんなさい……」
銀たちに謝る桜。
「……」
鞍馬同様、アルカリートから雷が落ちるのではないのかと案じる桜。
だが、雷は落ちず、アルカリートは桜を通り過ぎ、フィールドへ上がろうとして、一度止まる。
「俺が勝てば問題ない」
桜はアルカリートの方を見る。
「アルさん、甘いねぇ」
くっくっ、と笑うリヴァリーを珍しく思いながらも、アルカリートはフィールドに立つ。
残るは後二戦。
ツイン側――
本部側――アルカリート・ベルフェル。
そんな二人が対戦する第四戦は、今始まろうとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます