第四話:本部の人間とルイナたち
打ち合わせは終わった。
途中でツインの状況説明をしたりもしたが、それでも、説明の度にツインを見下す者たちからは罵倒されたり、逆に罵倒仕返したりもしたが。
さて、現在。
部屋に残ったのはルイナとルイシア、二人をツインへ送った人物たち――銀髪の男と茶髪の男と、数人の本部の者たちである。
静寂が場を占めた頃、最初に口を開いたのはルイナだった。
「お久しぶりですね。先輩方」
その言葉に、本部側はピクリと動いた。自分たちが送った人間が平然とここにいて、挨拶をしてくるとは思ってもいなかったからだ。
「お元気そうで何よりです」
「それは、こっちの台詞でもあるけどね」
ルイナの言葉に、茶髪の男が返す。
「この部屋に入った時からビックリしたよ。二人がツインの代表として来るなんて」
茶髪の男は銀髪の男にも言うように告げた。
「それで、ツインの状況はさっきの話通りなのか?」
「あら、私たちを送っておきながら、ツインの様子が気になるんですか?」
銀髪の男の問いに、ルイナは答えず、質問で返す。
気分を害したのか、不機嫌そうな気を発する銀髪の男に、ルイナは軽く首を傾げる。
「もし、一言だけでも言うのなら」
ルイシアが口を開く。
「
「ふん、やはりツインはツインだな」
鼻で笑う本部の者に冷たい視線を向けつつ、ルイナは溜め息を吐いた。
「どういう意味だ?」
銀髪の男は本部の者に尋ねる。
「だってそうだろ? 問題児は問題児同士でいるのがいいと、こいつらは自分からそう言った。違うか?」
本部の者の言葉にルイナたちと茶髪の男は苦笑いし、銀髪の男は不機嫌オーラを放つ。
「まあ、そうも取れるよね」
「意味は全然違うんですが」
「本当、誰かと変わってほしいわ」
順に茶髪の男、ルイシア、ルイナの言葉である。
「それで、どういう意味だ?」
「あ、さっきの質問は私たちに向けての質問だったんですか」
再度尋ねてきた銀髪の男に、ルイナたちは納得した。
「どうもこうも、言葉通りですよ。こちらの人たちみたいに、一度の失敗で本部から追い出すような奴がいない場所に
そう言うが本部の奴は鼻で笑う。
「当たり前だろ。他に行く場所がないのだからな」
「最後まで話を聞け。つか、他に行く場所なんて必要ない。ツインはツインだ。本部の問題児の受け入れ場所じゃない」
本部の者の言葉に、ルイナはそう告げる。
「ツインは本部の問題児の受け入れ場所だ。お前らが何と言おうとな」
「もし、それで貴重な戦力が失ったとしても?」
その言葉に、銀髪の男がピクリとした。
(地雷、踏んだね)
あーあ、と茶髪の男はそう思う。
ルイナなら、何と言えば銀髪の男の機嫌が悪くなるのかぐらい知っているはずなのに。
「ハッ、お前らが貴重な戦力? 笑わせるな」
やはりバカにしたような言い方をする彼らに、ルイナはあることを持ち掛ける。
「なら、バトルしませんか? 5vs5の魔術師による
その言葉に、その場に居た者は驚きを隠せなかった。
「バトル大会の前哨戦というわけか」
「お好きなように解釈してください。ですが、私たちも元から負けるつもりで挑んだりしません」
それを聞き、銀髪の男は目を細め、茶髪の男はフッと笑みを浮かべた。
「ふざける――」
「受けてやる」
ふざけるな、と言おうとしたのだろう。
だがそれは、銀髪の男に遮られ、最後まで言われることはなかった。
「何勝手なことを――」
「本当に断っていいの?」
勝手に決めるな、と言いたげな本部の者に、茶髪の男は尋ねる。
「何だと!?」
「もし、ここで断れば、『ツインからの宣戦布告に、本部はバカバカしい、と逃げ出した』なんて噂が立つかもしれない」
茶髪の男はそう説明する。
「何たって、貴方がたが毛嫌いするツインです。そいつらから逃げ出したとなれば、貴方がたの信頼はがた落ちになりかねない。さて、どうします? 受けるのか、受けないのか」
これは受けるしかないだろ、とルイナとルイシアは思った。
「貴方は受けてくれるんですよね?」
ルイナの問いに、銀髪の男はルイナを見る。
「受けてやる」
二度も言わせるな、と顔を逸らされる。
「貴方がたは?」
本部の者にはルイシアが尋ねる。
「……っ、受けてやる。だが、後悔するなよ。お前らが勝てる確率なんか無いに等しいんだからな!」
そう言うと、部屋を出ていった。
数人の本部の者も、それに付いて行き、部屋にはルイナとルイシア、銀髪の男と茶髪の男のみになった。
「それで、何が目的だ?」
銀髪の男の問いに、ルイナは首を傾げるが――
「ルイナ!?」
バン! と音を立て、ルカが部屋に入ってきた。
「兄さん……」
ルイナは頭を抱えた。
「どうしたの?」
尋ねるルイナに、息切れしながら、ルカは説明する。
「いや……中々、戻ってこないし、連中がブツブツとツインだの勝負だの言っていたからな」
あいつら、と四人は思う。
「相変わらずだな、柊」
銀髪の男の言葉に、ルカは不機嫌そうに銀髪の男に目を向ける。
「お前とは、一度話し合うべきだと、俺は思うんだが?」
ルカの問いに、銀髪の男はルイナに目を向ける。
「それで?」
ルカをスルーし、銀髪の男は尋ねる。
「おい」
無視するな、と言いたげにルカは声を掛けるが、ああ、と頷いたルイナに、
(この二人は……)
と、ルイシアと茶髪の男は内心でそう思った。
この二人は、変なところで似ている。
近くにいるルイシアでさえ、この二人の方が兄妹らしくね? と思うほどである。
容姿は別にして、だが。
「目的が無いといわれれば、嘘になりますが、強者が好きな貴方なら分かると思いますよ?」
ルイナの言葉に、銀髪の男は眉を寄せる。
「実は今のツイン、本部ではかなりの実力者だった人たちが在籍してるんですよ」
話したルイナと聞いていたルイシア以外が、怪訝な顔をする。
「本部で暴力事件を起こしたり、仕事の失敗ぐらいならまだしも、実力者だった人々はほとんどが特殊事例でツインに送られて来てるんです」
「特殊事例……?」
ルイシアの説明に、茶髪の男は首を傾げる。
「たとえば、私たちが送られた理由とか」
「……」
「まあ、そうだよね」
静かに告げるルイナに、無言になる銀髪の男と、素直に頷く茶髪の男。
「まあ、私たちのことは、どうでもいいです。話を進めます」
「ああ」
ルイナの言葉に、銀髪の男は頷く。
「その実力者たち、何とか
銀髪の男と茶髪の男、そして、ルカは固まった。
「本当なら、こういう人たちがいるんで、知っといてください程度の話だったんですが……」
「ツインの協会祭の参加条件といい、ツインに流れてきた本部の妙な噂といい、不穏な空気が流れっぱなしなんです」
ルイナが説明し、ルイシアに目を向けると、ルイシアがその続きを言う。
「なら、それ、さっき言えばよかったじゃん」
茶髪の男の言葉通り、何故あの場で言わなかったのか。
「そんなの、信じると思えなかったからですよ。ツインの批判を聞いて、話すと思いますか?」
「それは……」
先程の批判を見ればわかる。
本部よりツインが強い。
それは、彼らにとって、許せないことであり、もしツインに本部より強い者がいると聞けば、彼らを本部に引っ張っていくことになるのだろう。
「自分たちで追い出しておきながら、強いから戻す? 私たちは道具じゃないんだから、そういうの止めてほしいんですがね」
嫌だ嫌だ、というルイナに、ルイシアは何ともいえない表情で視線を逸らし、ルカは溜め息を吐いた。
「それで、ルールはどうするつもりだ?」
銀髪の男の問いに、ルイナは答える。
「魔術師バトルのルール適用でお願いします」
ルイナの言葉に、そうか、と銀髪の男は短く返した。
「さてと。いつまでもいると、貴方たちにも悪影響が出かねないので、私たちはそろそろ戻らせてもらいます」
ルイナはそう言うと、部屋から出て行き、その後ろを慌ててルイシアが付いて行く。
「じゃあ、俺も行くからな」
ルカも二人に一声掛け、出て行った。
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