9
「マ、マツリ……」
メグは泣きだしたマツリに対してどうしたらいいか分からず、ただ
「マツリ……!」
名を呼んでも、彼女は黙ったまま機械のように涙を落っことし続ける。
「……っ」
メグは強くマツリを抱きしめたいと思った。けれど同時にひどく
そんな風にもぐもぐするメグなんかそっちのけで、彼女は泣いた。
「…………メグ」
しばらくの硬直と沈黙を超えて、彼女はようやく声を出した。
「どうした?」
メグがマツリの顔を覗き込む。
「本当は、もっとずっと前に、言うつもりだったんだと思う」
「……え?」
あの日――記憶を意図的にあいまいにしてしまった、あの日。手を振り払われてしまっただけで足元から崩れ去ってしまう、そんな
「でも、ずっと。ちゃんと言いたかったことがあるの」
「……なんだよ」
メグは小さく身構えた。少し怖くもあった。涙を流しながら告げる彼女は、今にも崩れてしまいそうで。
「メグが大事なの」
その肩は今にも砕けてしまいそうで。
「メグが、多分。いわゆる……」
その首筋は今にも折れてしまいそうで。
「……その」
その涙が。今にも。だから。
「好きなんだよ」
だから、抱きしめたいと思った。きつく、抱きしめたいと思った。
「メグ? メ……――――」
だから。きつく。メグは彼女の細い体を抱きしめた。少し乱暴に手を解いて、両手で彼女の体を包んだ。思った通り、マツリは細くて、柔らかくて、このまま力を入れたら壊れてしまいそうだと思った。
驚いたマツリの瞳から涙がこぼれる。
「メ……ッ、メグ……」
そして少なからずの動揺でマツリが体をこわばらせると、メグは抱きしめた手をゆっくりと解いた。マツリはびくりと肩を揺らす。
「なんもしねぇよ」
メグはそんなマツリの耳元で小さく呟いた。
だって、「怖い」という感情で一瞬左手が
「わりぃ……」
そしてするりと彼女の身体から身を離し、マツリを見た。マツリの目からは涙は消えていた。そして、大きな目を見開いてメグをじっと見つめ、口を開いた。
「……欲情した?」
「だから! お前はなんでそうなんだよ!」
無感情に見えるマツリの心臓は、その時確実に
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