連戦の後に

 出てきた土人形達は、やはり強くはなかった。

 しかし、だからといって放置して良い程弱くもない。

 彼等が持っている武器は確かに武器であり、その力も人間並みにあった。

 朝になるまで散発的に行われた襲撃はセイル達を疲弊させ……しかし、朝日が出る頃には土人形達はその姿を現さなくなっていた。

 あるいは、夜限定の現象なのかもしれないが……イリーナなどは、完全に座り込んでしまっていた。


「ね、眠い……です」

「呪い、か。こんなものが夜通し出てくるとなると……流石にたまらんな」

「ど、どうしましょうセイル様」

「もう寝ていいでありますか……?」


 すっかり限界の様子の仲間達を見て、セイルは考える。

 正直に言って、予想以上だ。

 辛い旅路であろう事は覚悟していた。それ故にアミルとイリーナという、どんな状況にでも対応できるスタンダードな仲間を連れてきた。

 それが失敗であったとは思っていない。昨夜のイリーナの話を聞く限り、この場に全員居たとしても結果は同じだっただろう。

 だが、この先で同じ事が起こるとして……このまま何の対策も無く帝国の中心へと進んでいく事は、退路を断たれるも同じであるような気がした。


「……とりあえず全員、休んでくれ。昨日の状況を見る限り、あの土人形共は日の出ている内には出てこないはずだ」

「やったです……」

「お先に失礼するであります……」


 イリーナとキースはよろよろとテントの中に入っていくが……アミルはその場から動かないままだ。


「どうした、アミル」

「セイル様お一人で見張りをされるおつもりですか?」

「まあ、な。俺なら多少集中力を欠いてもどうにかなるしな。それに……」

「それに?」

「ガチャを引こうと思っている」


 ガチャ、の言葉にアミルは反応し……「エクソシストとミコ、ですか」と呟く。


「ああ。一応言うが、お前達の実力が不足だってわけじゃないぞ?」

「ええ、分かっています。私達だけではどうしようもない状況にこの地があるという事も分かっています」

「まさにソレだ。単純に実力だけではどうしようもない。俺達には、専門家が必要だ」


 勿論、一度戻るという手もあるだろう。

 しかし……この状況を作り出した何者かが、突然気が変わってヘクス王国に攻め込んでこないとは誰にも言えない。

 そしてその時、セイル達が先頭に立たなければどうしようもないであろう事は、確定的だ。

 となれば、このまま進んで今の状況を造り出した主因を叩くのが一番良いのは間違いない。


「……ですが、残りの資金で専門家は出るのでしょうか」

「さて、な。それこそ神に祈るしかないかもな」


 言いながら、セイルはカオスゲートを取り出しガチャへと遷移する。


「目標は、エクソシストか巫女だ」


 言いながら、10連ガチャを選択する。


ガチャ結果:


アンチカース

アタックポーション

鉄の杖(☆★★★★★★)

鉄の槍(☆★★★★★★)

木剣(☆★★★★★★)

布のローブ(☆★★★★★★)

布のローブ(☆★★★★★★)

鉄のサーベル(☆★★★★★★)

木の棒(☆★★★★★★)

鉄の鎧(☆★★★★★★)


「ぬっ……」

「で、でもアンチカースは出ましたよ?」

「そうだな。完全に外れじゃない」


 言いながらセイルは心の中で「こんなの外れだ」と地団太を踏む。

 そんな姿をアミルに見せるわけにはいかないので涼しい顔をしているだけだ。


ガチャ結果:


鉄の斧(☆★★★★★★)

鉄の斧(☆★★★★★★)

鉄の斧(☆★★★★★★)

鉄の剣(☆★★★★★★)

鉄の護身剣(☆★★★★★★)

木の弓(☆★★★★★★)

執事服(☆★★★★★★)

鉄の短剣(☆★★★★★★)

木の棍棒(☆★★★★★★)

鉄の鎌(☆★★★★★★)


ガチャ結果:


巻物(☆★★★★★★)

革の鞭(☆★★★★★★)

道化服(☆★★★★★★)

布のローブ(☆★★★★★★)

鉄の剣(☆★★★★★★)

聖典(☆★★★★★★)

メイド服(☆★★★★★★)

鉄の短剣(☆★★★★★★)

鉄のクナイ(☆★★★★★★)

錆びた槍(☆★★★★★★)


「ぐ、ぬ、ぬ……」

「あの、セイル様。一度休憩にされた方が……」

「いや、まだだ。ここまで引きが悪いと、次は来る気がする」

「気がするって……あのそれ。ダメな嵌り方では」


 そんな事はセイル自身がよく知っている。

 伊達に食費を削っていたわけではないのだ。

 ガチャは、来ない時には本当に来ない。

 ウルザに幾らか預け、この帝国ではガチャ以外に金の使いどころなどないとしても。

 昨日と今日でもう9ゴールドも使っている。

 流石にこれが不味いペースだということくらいはセイルにも理解できる。

 しかし、それでも引かざるを得ない。

 ガチャを引くか、ここから引くか。それしか選択肢はないのだ。


「次に託すしかないな……白の月神よ、導きを!」


 あの少年神の姿を思い浮かべ……なんとなく想像の中で少年神が迷惑そうな顔をした気がしたが……セイルは10連ガチャを選択する。


ガチャ結果:


鉄の斧(☆★★★★★★)

布のローブ(☆★★★★★★)

鉄のガントレット(☆★★★★★★)

エクソシスト【男】(☆★★★★★★)

ガードウォ―ター

アンチポイズン

布の服(☆★★★★★★)

錆びた剣(☆★★★★★★)

鉄のガントレット(☆★★★★★★)

鋼の陰陽剣(☆☆★★★★★)


「よし、出た……出たぞ!?」


 思わずガッツポーズをとって叫ぶセイルの声に……イリーナ達が「敵ですか!?」とテントから飛び出してきたのは、まあ無理もない事だろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る