召喚士クロス
ポニーテールの金色の髪。
まだ焦点の合わぬ目は、奇麗な青色……まるで悪戯好きの猫を思わせる。
イリーナよりも更に小柄な、およそ13歳から15歳程度を思わせる小さな体を包むのは、東方の服を思わせる……しかし、そうではないとも分かるゆったりとしたデザインの服。
腕に抱えた本は、彼女の武器。異界からの使者を呼び出す術が記されているという召喚書だ。
召喚士クロス ☆☆☆★★★★
レベル1/50
魔法攻撃:50
物理防御:10
魔法防御:50
【装備】
・古い召喚書
・服
【アビリティ】
・白の護法陣
【魔力属性】
・光
能力的には、クロスはこんな感じだ。
ハッキリ言って、素の能力だけで言うと魔法系ユニットとしては星1のキャラ以下だ。
敵に小突かれただけで死にかねないが、それは「召喚」という能力があるが故のバランス調整なのだろう。
召喚ユニットのレベルは召喚士のレベルに連動する為、高レベルの召喚士は1人で戦況をある程度支える能力を持っているからだ。
……まあ、それはともかく。
クロスはゆっくりと目を開けると、辺りを見回し……やがてセイルを見つけると、トテトテと歩いてきてセイルを抱きしめる。
「……うん、この感触。王子だ。なんか記憶よりイケメンになってるような……」
ペタペタとセイルに触れて頬擦りするクロスにアミルが絶句しているが、イリーナは無表情のまま近づいてクロスとセイルから引き剥がす。
「なに。ていうか誰」
「それは、ダメです。あと、私はイリーナ。魔法兵です」
「む? むむ?」
そこでクロスは、先程よりも大分真剣な表情で周囲を見回していく。
イリーナ、アミル、ウルザと視線を移し……エイスをスルーして目の前のセイルに抱き着く。
「よく分かんないけど、王子の女好きが極まったのは分かった。欲求不足?」
「何がどうなってそういう結論になったかは知らんが誤解だ」
「ていうか今俺スルーされてませんでしたかね?」
イリーナに再度引き剥がされるクロスにしゃがんで視線を合わせると、セイルは出来る限り優しい笑顔を浮かべる。
「……とりあえず、ようこそクロス。まず伝えなければならない事実だが、此処は俺達の世界とは違う世界だ」
「それは、俺の命令が絶対の欲望世界だ的な……」
「違う。ていうかお前の中で俺はどういう評価なんだ」
「いつの間にか新しい女の子を引き込んで仲良くなってる稀代のハーレム王」
「……そんな事ないだろ……」
確かにカオスディスティニーでは華やかな女性ユニットは多かったが、男ユニットだってたくさん居たのだ。
男女関係なく仲良くなるイベントはあるのだから、そんな稀代のハーレム王と呼ばれる程ではない……はずだ。
「事実」
アミル達を指差すクロスからセイルはそっと視線を逸らす。
確かに男女比自体は否定できないが、エイスだっているのだ。ハーレム王じゃないと信じたいところだ。
「あー……真面目な話だ。此処は俺達の居た世界とは全く違う、別の世界なんだ」
セイルが改めてそう伝えると、クロスはようやく真面目に考え込むような様子を見せる。
「……異界、ということ?」
「召喚士の言う「異界」と同じかは俺には分からないが、俺達の知る場所が一つも地上に存在しない……という意味では異界だな」
その言葉をクロスはかみ砕くように繰り返し「……過去か未来の可能性は?」と問いかけてくる。
「ない。そもそも俺達を……いや、俺をこの世界に呼んだのは神だ。この世界は、俺達の世界とは関係のない世界だ」
「神……」
そこで、クロスは再び黙り込み……セイルの持っているカオスゲートへと視線を向ける。
「それは? 何処かと繋がってる気配がする」
「カオスゲートと名付けた。今察した通り、これにはガチャという俺達の世界の人や武具を制限付きで呼び出す能力がある」
やはり召喚士の能力はカオスゲートと似たものがあるのか。
そんな期待を胸に、セイルはカオスゲートの画面をクロスへと見せる。
クロスは画面を見ると何度か触れるが……カオスゲートは反応しない。
「……弾かれてる感覚がある。たぶんこれ、王子専用」
「だろうな。これでお前も呼び出したわけだが……」
「同じ事を私が出来るか否かなら、召喚書次第。私達の世界に繋がるような召喚書が要る」
セイルの言おうとした事を察したのか、クロスはそう言って肩をすくめる。
「王子のそれは召喚書というよりはたぶん何らかの神器の類。選ばれた人間にしか使用できない」
「ああ」
「そして、この世界が「違う世界」なら召喚書については恐らく期待は出来ない。王子のカオスゲートで武具が出せるとしても、「私達の世界」の召喚書なら「私達の世界に繋がる召喚書」はないと考えていいと思う」
すらすらと推論を述べていくクロスだが、完全に理解しているのはイリーナくらいのようだった。
セイルも言っている事は分かるが、ゲーマー的思考で変換している部分がある。
「つまり、クロスがカオスゲートの機能を代行する事は現時点では不可能、ということだな?」
「その理解でいい。それで、今の話からすると王国軍のメンバーは此処にいるので全員?」
「ああ、それについてだがな……」
意外なブレーンを手に入れることが出来たかもしれない。
そんな当初とは別の期待を胸に抱きながら、セイルは現状をクロスに伝えていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます