これは仕方のないガチャである

「そうだな、仕方ないな」


 これは仲間の為のガチャだ。

 元々短剣系は恐ろしく攻撃力が低く、無いよりはマシという程度でしかない。

 その程度でしかないが……無いよりはマシだ。

 それにガチャを引けば他の星3武器も出るかもしれない。

 つまり、これは仕方のないガチャだ。


 セイルはそう理論武装すると、10連ガチャを迷いなくタップする。


ガチャ結果:

布の服(☆★★★★★★)

鉄のガントレット(☆★★★★★★)

巻物(☆★★★★★★)

鉄のクナイ(☆★★★★★★)

鉄の刀(☆★★★★★★)

鋼の盾(☆☆★★★★★)

鉄の短剣(☆★★★★★★)

鉄の槍(☆★★★★★★)

鉄の剣(☆★★★★★★)

鉄の鎌(☆★★★★★★)


「布の服か……これはエイスかお前用だな」

「そうね。でもエイスに回していいわよ?」

「そうか?」

「ええ」


 早く次、と促してくるウルザに頷き、セイルは次のガチャを回す。

 10連で1シルバーを消費。


ガチャ結果:

ハルバード(☆☆★★★★★)

鉄の剣(☆★★★★★★)

革の鞭(☆★★★★★★)

召喚書(☆★★★★★★)

鉄の鎧(☆★★★★★★)

錆びた剣(☆★★★★★★)

鉄の弓(☆★★★★★★)

鉄の盾(☆★★★★★★)

ミスリルの杖(☆☆★★★★★)

木の棍棒(☆★★★★★★)


「召喚書……? これって何かしら」

「ああ、召喚士の武器だな。カオスゲートとは別物だ」


 異界から自分の手足となるモノを召喚するという職業だが、カオスゲートの召喚……ガチャとは異なるものだ。

 いや、しかし……召喚士は現実化した時、ひょっとするとカオスゲートの召喚のようなものも再現できるのかもしれない。

 まあ、どちらにせよ今は召喚士はいないのだが。


「ミスリルの杖はイリーナ用だな。これまでの戦いを考えれば、鋼の杖よりもいいだろう」


 ミスリルの杖は金属系の杖ではあるが、同じ金属系の鋼の杖と少しだけ能力が異なる。

 魔法攻撃が35、物理攻撃が5、物理防御が3上昇する。

 たった5の差ではあるが、それでも魔法攻撃はミスリルの杖の方が高い。


「まあ、短剣は無いわね。次よ、次」

「そうだな……」


 10連で1シルバーを消費。


ガチャ結果:

鉄の斧(☆★★★★★★)

鉄の斧(☆★★★★★★)

鉄の斧(☆★★★★★★)

王国重装兵【男】(☆★★★★★★)

鉄の杖(☆★★★★★★)

鋼の短剣(☆☆★★★★★)

鉄の弓(☆★★★★★★)

鉄の盾(☆★★★★★★)

鉄の剣(☆★★★★★★)

鋼の短剣(☆☆★★★★★)


「おっ……」

「あら」


 鋼の短剣が出た。出たが……ユニットも出た。

 その事実に、セイルとウルザは同時に声をあげる。


「重装兵、ね……苦手だわ、短剣が通らないもの」

「ハハ、そうかもしれないな」


 待望の硬い前衛だ。

 この重装兵を召喚すれば、今後の戦いは更に楽になるだろう。

 しかし、とセイルは考える。


「とりあえず、お前の短剣だ」

「ええ、ありがとう。鉄製の方は返すわね」


 鋼の短剣をカオスゲートから取り出せば、ウルザは嬉しそうにそれを鞘から抜き鉄の短剣をセイルの方へと放る。


「で、その重装兵は呼び出すの?」

「……」


 今現在、そこまで戦力の早急な拡充は必要とされているだろうか?

 個別のレベルアップでどうにかなる範囲だとセイルは考えている。

 呼び出す事で急速な戦力アップの見込める星3のユニットであればともかく、そこまで慌てて召喚が必要であるとも思えない。

 人数が増えるということは、それだけ維持コストが増えるということでもあるからだ。

 ゲームの時のように、待機ユニットとしてどっさり居ても問題ないというわけではない。


「……いや、今のところは呼び出さない。然程困っても居ないしな」

「そう。セイル様がそう考えるなら、私もそれに従うわ」


 鋼の短剣を満足そうな顔で鞘に仕舞うと、ウルザは頷きながらそう答える。


「で、どうする? もう1回ガチャ引くの? ああ、あと10回だったかしら?」

「む」


 目的のものは引けた。

 ならばもう問題ないという考え方もある。

 しかし、あと1回10連をすれば何かが出るかもしれない。

 目的の鋼の短剣を引いて物欲が消えた今だからこそ、何かが出るかもしれない。

 そう考える事こそが物欲の現れなのだが、セイルはそんな細かい事は気にしない。


「……いや、やめておこう。今日はもう星3が出ているしな。大人しく聖剣を強化しておくことにする」

「あら、そう」


 少しつまらなそうなウルザだが、気にせずにセイルは要らない星1武具を強化画面に突っ込んでいく。


「そういえば……」

「ん? 何かしら」

「あの偽ヴァルブレイドは強化素材に出てこないな……?」


 カオスディスティニーでも誤操作防止に「鍵」をつけた武具は合成一覧に出てこないようになっていたが、偽ヴァルブレイドも同じなのかもしれない。

 まあ、どちらせよどうでもいいことだ。

 セイルはすぐに忘れ去ると、聖剣ホーリーベルを強化していった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る