第15話
創造魔法。それは創造したあらゆる物を実体化させ、戦闘には勿論、汎用性の点でも圧倒的優秀さを誇る。唯一の欠点は知識が無いと物が作れないことだが、転生者であり前世界の知識を持ち合わせている俺が使えば世界を狙えるであろう、まさしく王道チート魔法。
そ、そんな魔法があまり強くない魔法だって!?
一瞬驚きはしたが、この世界の文明レベルを思いだしすぐに納得する。
確かに未だに弓を使ってるぐらいだから銃みたいな物は実体どころか構造の発想すら無いだろうし、作れる武器が剣とか弓とかなら普通に火とか水とか出せる汎用魔法の方が強いだろうと。
んー……やっぱ勿体ないな。後でちょっと話してこよう。
納得はすれども行動しないかは別の話。俺は静かにそう決意した。
自己紹介の後はオリエンテーション。規則や仕組み、授業のやり方、決闘の方法などを担任のリュークから説明を受けた。
ここで嬉しい知らせがある。どうやらSクラスは寮室が個別にあるらしい。
他のクラスは三人で一部屋らしいので、他のクラスだった場合、間違いなく女子と混合部屋に送られていたと思うと心の底から安堵する。
「--えー、ま、こんなところだ。 授業は明日から始まるからくれぐれも遅れないように。 今日の連絡事項は以上だ。 何か質問はあるか?」
「はい」
手を上げたのは……ユリウスだ。
「ん? ユリウスなんだ?」
「んー、質問なんだけど入学試験の結果を教えて貰うことって出来るかい? 今僕がどのくらい首席と離れているか確かめたくてね」
え……。合格したんだし点数なんてどうでもよくね?
しかし、回りの反応は上々だった。
「あー、確かに!確かに! 私も興味ある!興味があるわ!」
「うん。 俺もリーシャに何点離されてるかが気になるな……ついでにシルアの点数も」
「私も、……ヴィルは眼中に無いけど上の人の点数には興味あるわね」
次々に同調していくクラスメイト達。
その様子を見てリュークは困ったように頭を掻いた。
「入学試験の点数は門外不問になってるんだが…………まぁいいかバレたらバレたで土下座しとけばなんとかなるだろ」
いいのかよ!?
わー!クラスメイト達から拍手喝采が沸き上がる。
「じゃあ。 ま、さっきは上から言ったし、下から発表しますかね。 まずはアリス」
「は、はい!」
呼ばれてアリスはびくりと肩を揺らした。
「お前は……筆記90点、実技60点の計150点だ」
「すげー、あの難しい筆記で90取ったのかよ!?」「……頭良い」「中々やるな」
あのー、ここは審査会じゃないんだからコメントは出来る限りお控えください……。なんか聞いてて恥ずかしいから、ね?
「次、エティカ。 お前は筆記70点、実技85点の計155点だな」
「うぅ。 ……筆記苦手」
いやいや70点って意外と高くないか?
「次、ソフィヤ。 お前は筆記80点、実技80点の160点だ」
「ありがとうございます」
「次、リリー。 筆記80点、実技82点の162点だ」
「スゴい!スゴいのね私! うん。うん!」
「次、レンフォールド。 筆記70点、実技98点の168点」
「くぅぅう!! 2点足りねぇ!!!」
「次、ユリウス。 筆記80点。 実技100点だ。 合計は180点」
「うん。 やっぱ僕は流石ですね」
……当たり前だが点数が停滞し始めてきてるな。やっぱ上位はあまり点差がないのか――
「……先に言っとくがへこむなよ? 聞きたいって言ったのはお前たちだからな?」
あっ、なんか今意味深な台詞をした。これはフラグか?まさかフラグがたったのか!?
「次、ヴィリック。 筆記100点、実技130点の計230点だ」
――急なインフレキター!やっぱフラグたってたか。まぁ確かに実技が百点満点なんて言われてないもんな。
「「「え……」」」
「よっし!」
インフレで言葉を失う六人を置いてヴィリックはガッツポーズを決めた。
「次、リーシャ。 お前は筆記100、実技140の合計240点だ」
「く……10点差か! すぐに追い付いてやるからな!」
「ヴィルじゃ無理ね。 諦めなさい」
さっきの態度から一変、涙眼で宣戦布告するヴィリックをリーシャは呆気なく切り捨てる。
一方、六人はまだ石像と化したまま動かなかった。
「次、レグルス。 筆記90点、実技155点の245点だ」
「ふん。 まずまずと言ったところか」
「ま、まずまず?」「あの点数で……?」
ようやく石化が解けたのか、審査会が復活した。だが、インフレの連続で感覚が麻痺したのだろうか、やれやれといった感じで遠くを見つめている者もいた。
「最後、シルアート。 お前は筆記100点、実技200点の合計300点で歴代初満点合格だ」
「「「ま、満点!?歴代初ぅぅ!?」」」
まさかインフレから更にインフレするとは思わなかったのだろう。
全員が驚愕の声をあげる。
「――ってどうしてシルアまで驚いてるのよッ!」
「え?」
呆れるリーシャに、きょとんと首を傾げるシルアート。
二人のお陰で多少空気が和らぐが、それでも周囲は固まって動く気配がしない。
「……」
「……」
「「「……」」」
なんとなく気まずくなった二人は口を閉ざし、重い沈黙が流れ始めた。
「……ふははははは!!!」
「「「!?」」」
――なので突如教室に響き渡った笑い声に皆が一斉に振り向いた。
皆の視線の先、そこに立っている紫の髪の少年――ユリウスは顔を破顔させ言う。
「満点合格か。 凄いな。 勝てる気がしないよ。 だが、それでも僕は勝つ。 君がどんなに大きな壁でも僕は越えて見せるよ! 君が女の子であるかぎりね! 僕は……女の子に負けるわけにはいかないのさ!」
「は? お前何言って……いや、あの、えーと……貴方の仰ってる意味が私には分かりかね――」
思わず素が出かけて、それに気付き慌てて言い直す俺の言葉を待たずに、びしぃっ、と人差し指を突きつけユリウスは宣言した。
「僕、ユリウスは……シルアート、君に決闘を申し込む!」
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