エピローグ

 一寸先闇なんてよく言うよね。ほら、何て言うの? 僕って恋人の秘密知っちゃったんだよね。でもまあ、これ。僕がもう居ないから、誰にも話せないと思ってたけどさ。案外聞いてくれる人って居るんだねぇ。イタコって言ったっけ? それで僕を呼び出して語らせるって奴をマジでやった身内が居てさ。いや、ホント。面白いよね。まあ、全部語ってあげたよ。洗いざらい全部ね。付き合ってもらうよ。君にも。


 あれは、僕が彼女の秘密を知る前の事だ。僕には、とある観察対象が居た。佐山凛子。まだこの子は学生だけど、凄くいい感じに綺麗でね。可愛いし中々発育もしてるし、好みだった。まあ、そんな僕は社会人でさ。流石に学生に手を出すには躊躇いがあったわけ。で、僕は彼女とよく話をしてる女性を見つけたんだ。結構、その人も好みでさ。僕気に入っちゃったんだよね。凛子ちゃんの二番目くらい? いやまあ、それからその人に僕は、自然に逢えるように事を仕向けたんだよね。彼女の勤務先は、中小企業で結構儲かってるところだったね。そこの秘書をしているのが彼女だった。そりゃあ、美人だよね。秘書だもの。ま、男の偏見だと思うけどね。僕は、そこまで調べた後、彼女の周りの関係を調べてた。すると、彼女二十四歳独身っていうじゃない。流石に燃えたね。まあ、凛子ちゃんほど萌えないけどね。それでもまあ、僕結構その人好きになって、結構色々と僕を好きになるように仕掛けたんだよね。あれは、ある晩のことだよ。僕は、彼女をGETするために、彼女にゴロツキを絡ませるようにその辺に居た奴に金を払って頼んだんだ。僕は、その時彼女にとって、正義のヒーローって訳だね。


 真夜中、彼女が帰り道に通る公園。そこで僕は、運命の出会いみたいのをしてみたわけね。ま、作り物だけど。

「おい、姉ちゃん。ひとりぃ?」

「な、なんですか?」

「いや、暇でさぁ。特に女に暇でさぁ」

「警察呼びますよ」

「おー怖い! 警察だってよ?」

 三人ほどのゴロツキに彼女へ絡むように言ったわけだけど、あいつら結構ノッてるのね。そのまま手はず通りにしてくれるかと思ってたんだけさ。彼女が、美人すぎて、体型も良かったから、あいつら気が変わったらしいんだよね。そこで僕が登場するわけだけど、それまでちょっと楽しんでたんだよね。

「や! 止めて! お願い!」

 乱暴される彼女を見て、性的な興奮を覚えたね! まあ、それ以外の事を思うのが普通なんだろうけど、とりあえず、一通り彼女が犯されるのを見てから、僕の登場。結構楽しかったけど、仕方ないよね。

「ねぇ、君達。何公園でしてるの? 警察呼んじゃったよ? 逃げたほうがいいんじゃない?」

「お、お前! クソ! 逃げるぞ!」

 ズボンを急いで履きながらそいつら逃げてったね。勿論警察になんか連絡してないさ。いやホント、ギリギリまで見てたから僕の息子はギンギンだったね。それを肩掛け鞄で隠しつつ。当たり前の言葉を言ったんだ。

「大丈夫ですか?」

「……」

 彼女は泣いてたね。でもまあ、僕は楽しめたしいいかなぁ。泣き続ける彼女に優しくして、「何かあったらここに連絡して」って、事前に用意してた携帯番号とメアド渡してさ。僕という人間を当初の正義のヒーローとまで行かないけど、恩人にはなれたね。それから、彼女からお茶を誘われたよ。結構最初は、犯されたショックのほうが大きくて、その時の現状を事細かく言われたけど、全部知ってる訳でさ。僕は、ただ真剣に聞いてるふりをしたね。結構彼女僕に気を許しちゃってさ。それから何回か会ってる内に、彼女から言われたよ。「良かったら、交際してくれませんか?」ってね。内心、凄く湧き上がったね。ああ、これもう結構計画通りだよね! ってね。

 僕の本命は凛子ちゃんだよ。あの子しか居ない。でも彼女も結構良い線だからねぇ。気に入って、「いいですよ」って答えたら、彼女顔を赤くして「お願いします」って。凄い可愛らしくてさ。萌えたね。最高だった。それから交際が始まって、僕は彼女の名前を知った。刈沼麻音っていうらしい。僕もちゃんと答えたよ。偽名だけど、石木幸治ってね。流石に本名は言えないよねぇ。


 それから暫くしてだよ。あのサイトのことを知ったのは。彼女が僕の家に寝泊まりするようになってからだね。

「幸治」

「何?」

「私、ちょっと変わった趣味持ってるんだよね」

「え、どういう?」

「これ見て」

 彼女の携帯に映しだされたのは、自殺掲示板サイトだった。これは凄いなって思ったね。

「私ここの管理人やってるんだぁ」

「自殺掲示板かぁ」

「驚かないの?」

「え? うん。驚いたよ?」

「なんかそんな風に見えないなぁ」

「いや、だってさ」

 僕は「こんなの普通じゃない?」って言ったんだよね。そしたら彼女こう言ったんだよね。

「私も掲示板に載ってみたいよぉ」

「死にたいってこと?」

「うん」

「そっか」

 そのまま僕は、彼女の首を締め始めた。彼女は何が起こっているのか解っていなかった。

「や……め」

「死にたいんだよね?」

「……!」

「なら死ねば? 僕の本命は凛子ちゃんだし」

「!」

 彼女の顔は、それは引きつっていたよ。まさか、自分が二番目だなんて思いもしないよね。でも死にたいって言ってるし、殺してあげなきゃね。まあ、僕殺人犯になるけど、上手く逃げればいいよね。

「はぁはぁ……麻音?」

「……」

 僕は心音が鳴ってないか調べた。うん。鳴ってない。死んだね。さてどうするかなぁ。僕は、本命の凛子ちゃんにこの事をどう伝えるか考えた。そこで思いついたのが、凛子ちゃんの通学路で、これを遺棄すればいいよねって。それで思いついたから、家にあるもので、死んだ彼女の両腕両足を切断したんだよね。で、その死体全部を布袋に詰めて車に乗せて深夜二時に、凛子ちゃんの通学路の公園の花壇にこれを置いてきた。で、車を少し遠目の場所に置いて、凛子ちゃんが来る前に死角になる場所で待ってたんだよね。そしたら、子供連れの母親が来てさ。んでゲロしてそのまま去っていったんだけど、そのおばさんの子供が、面白いことしてたんだよね。

「これあげる」

 って言って、その子は石を置いた。僕は、前々からオカルトの知識があってさ。それでそれが、鎮め石になるって知ってたんだよね。それで、その鎮め石を本人の死体がある場所で触ったりすると、その死体になった人に祟られるってやつだ。何も知らない子供がそれをやるんだから、僕は凄いなって思ったね。そしたら、凛子ちゃん登場。やっぱり吐いたね。ああ、それは見たくなかったよ。流石にね。可愛い女の子がゲロ吐くなんて見たくもなかったよ。すると、凛子ちゃんは、死体の前にあった石を触っちゃったんだよね! あーあ。祟られちゃった。僕見えるほうでさ。凛子ちゃんに移り神が憑いちゃうの見ちゃったんだよね。そのまま凛子ちゃんは、携帯を取り出して、警察に通報してそのまま走って去っていったね。僕はその時に思ったんだよね。

「そうだ。あの石もっと利用できないかな」

 口に出しちゃってたね。それで僕は、あの石を触ったんだ。そしたら赤いやつが憑いてきたね。赤なんて知らないからさ。流石に焦ったよ。そしたら声が聴こえるんだよね。僕の本名を呼ぶんだよ。「英介」ってね。声がずっと聴こえるから、もうその日から睡眠不足だったよ。夜中の二時になれば、閉めた玄関をガンガン叩く音が聴こえるし、仕切りに僕の名前を呼ぶし。とにかく最悪だった。だから思ったよ。これ皆凛子ちゃんのせいだってね。


 凛子ちゃんの居場所を把握することも簡単だった。あの石に触れてから凛子ちゃんの行動してることが手に取るように解ったんだよね。次に何をするのかとか。トイレに行くとか、お風呂に入るとか。葬式に行くとかね。流石にあれをする気にはならないよね。そりゃそうだよね。友達死んじゃったんだもの。そんな性的に思うことなんて無いよね。ちょっと残念だったな。そう思いながら、凛子ちゃんが僕の脅迫で家出するって分かって、とりあえず喜んだね。麻音のサイトアドレス利用したのは、中々名案だったよ。凛子ちゃんが一人になって殺せれば、この赤いのも取れるなと思ってさ。

 渋滞することもなく、高速であの町に着いた。まあ、そこでまさか自分と瓜二つの学生君に出会うとは思ってもみなかったね。結構その似てる本人驚いててさ。それで誰も居ないのを確認して、「こんにちは」って声を掛けた後。すれ違い様に、後頭部を殴打してやった。見事に気絶したね。それからは、本人と入れ替わって、多島町ライフを満喫してたね。まあ、直ぐに凛子ちゃんが来てさ。僕は、あの二人組というか小さい女の子から助けてあげたんだよね。しっかりお礼を言われたけど、ここで変に印象付けたくなかったから、すぐに去ったよ。それから、あの場所で捕まえた子をガムテープで拘束してたから、蹴って遊んでたね。その内、凛子ちゃん、自分の移り神を取っちゃったんだよね。あの二人組に居た、芝目とか言う奴がそうさせるようにしたっぽいけど。まあ、いいんだ。僕は、暫く大人しくしてたよ。ここで捕まえた子も死なない程度にはしてやったさ。面白かったからね。男の子蹴るのって楽しいんだよ? タフでさ。それでいて呻き声だけは、しっかり出すから面白いんだ。暫くそうしてる間に、凛子ちゃんは施設に行っちゃってね。そこに僕、手紙送ったんだよね。さぞ凛子ちゃん驚いてたろうね。移り神だけでも心が折れそうだったのにね。可哀想。まあ、僕。その凛子ちゃん殺さないと、この赤いの消えないからね。


 僕が、見えることに気付いたのは、十歳の頃だった。親は離婚してて、親戚の家で世話になってたね。離婚の理由は、夫が妻に暴力振るったもんで、それに耐えかねていた妻が、刺したって感じかな。まあ、よくあるよね。いつでも論争になってたのは、僕のことじゃなくてさ。父親の浮気の事とか、母親の浮気とか。まあどっちもどっちだよね。そうやって育った僕は、結果的に人格破綻者みたいになっちゃったわけだね。そんな過去のことを思い出しながら、僕は、捕まえた昇君を小屋に残して、凛子ちゃんの施設に向かったんだ。中々警備が凄かったからさ。まず引き返して、調べておいた施設に続く電源ケーブルを切断してやったんだよね。それから、あの馬鹿な藤本って奴を騙して、施設に入った。皆混乱して声を上げてたね。いや、楽しかったよ。声を出せば静まるしさ。裏口に回ってた係員の首を後ろから締めた時も中々良かったなぁ。鍵も手に入ったし。僕は裏口を開けて、警察の奴らが居ないかどうか確認して、安心して凛子ちゃんを探したんだよね。


 でも、あの芝目って奴は、ホント嫌だったね。楽しんでる僕を突き落としたんだよ? やってられないよね。それから、芝目……いや、京香ちゃんに赤いやつのことを聞いてたんだけど、音がするんだ。あの聞き慣れた音。僕を呼ぶあの音がしきりに聴こえてきたからさ。僕は、嫌になってそこから逃げたんだ。必死で逃げ道用に確保した裏口まで走ったんだよね。そしたらさ。裏口が開いてたんだよ。そこになんかさ。女が立ってたんだよ。気味悪くてさ。声も出なかったよ。それ良く見ると母親でさ。僕は、「母さん?」って言ったんだよね。そしたらさ……。

「早くおいで」

 って言われたんだよ。僕はそこから逃げようとしたんだ。そしたら僕の後ろに何か居たんだよね。

「英介……」

「父さん!?」

 あの芝目って奴が言ってたんだ。赤い奴は生霊が出るって。じゃあ、こいつらは……。

『早くおいで』

 二人の言葉が重なった瞬間。僕は死んでたって訳だね。どうだい? 面白かった? 僕個人的には、結構面白い人生だったね。まあ、自分が死んじゃったら意味ないけどさ。それから、僕はこうやって呼び出されるまで……え? 死んだ後、昇って子の前に居なかったか? さあ? 知らないよ?


 誰だろうね。


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タタリ2 星野フレム @flemstory

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