第6話
「あなたは、テイマーになる気はありませんか」
「…どういうことだ」
リイナが冗談で言っていないのはその目に現れている。しかし、今その話をする意図がつかめない。ジードの眼光が鋭く射るように見つめている。
「もうすぐ、満月の夜がやってきます。今、あなたがこの場から離れてしまえば、私ではきっと止められません」
「当たり前だろう」
少女の弱腕で剣が握れるとも、盾になれるほどの強さがあるはずもないのだから。
「しかし、敵はすぐそこまで迫ってきています」
リイナはゆっくりと未だ警戒を続けるレアードに近寄る。大きな羽を羽ばたかせ、風を起こし近づくなと言っているようだったが、リイナは懸命に立ち向かう。
「この子は、きっと臆病なんです。臆病で、それでも強くなりたくて、力を求めたのが満月の夜だった」
ぴたりと、レアードの動きが止まる。そしてリイナはその巨体に触れて瞳を閉じる。
「レアード。あなたは守りたかったのね。自分を大切にしてくれるあの人たちを。でも、怖かったのね、いつかあの人のように壊してしまうんじゃないかと」
「!!」
優しく語り掛けるリイナにレアードは自分から頭を近づけた。左頬にちょん、と自分の顔をくっつけ、リイナの瞳を覗き込む。
その様子を見ていたジードは、ただ驚愕していた。レアードが心を許している。しかも初めて会った人間に。
「どうして、わかるんだ」
「ただ、お話を聞いてそう思ったんです。レアードの強さを抑えるためには、テイマーになるほかないと思います」
「テイマーになるだけで、抑えられるのか?」
そんなことでいいのなら、なぜ師匠はしなかった?自身の腕を失ってまで、テイマーにならなかった?
「テイマーとして、レアードと契約すれば、彼はもう二度と自由に空を飛べなくなる。お師匠さんは、それを恐れたのではないでしょうか」
「…飛べなくなる?」
「一定以上離れると、契約がドラゴンを苦しめるんです。人間の勝手でドラゴンをこの地につなぎとめるのは、きっと嫌だったんでしょう」
テイマーになれば、レアードは暴走することはなくなる。しかし、自由を奪ってしまうのかもしれない。
ジードは昔のように自分の手を見る。ずいぶん太くなったものだ。
何もできなかったあの頃と、今の自分は違う。あの人の想いを、守っていくために選ぶべき道は1つしかない。
「レアードは、いいのか?」
「ギャーーーー!!」
元気のいい返事に、近くにいたリイナはわぁ!と耳を塞ぐ。ジードもレアードも嬉しそうで、つられてリイナも嬉しくなる。
「それでは、契約を―!」
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