第5話
「その、師匠さんは…」
「しぶとく生きてたよ。師匠の力で俺でもレアード抑えることができたしな」
語り終えたジードの背を、静かに見つめる。空から降り注ぐ光と、風によってまう花弁に包まれた彼は、どこか遠い存在のように見えた。
「それに、師匠はまだここにいる」
振り向き、リイナと目を合わせて視線を誘った。誘われるままそちらをみると、そこにはあの大木があった。ピンとこないリイナは顔を傾げる。
「師匠の体は、土に還るとこの木になったんだよ」
「この、大木に…」
「でも、義手だけは還れなかった。だからここにいるのさ」
ジードは右腕を叩き、金属の擦れる小さな音が響く。腕を見つめるその視線はとても穏やかで、少し寂しさがにじんでいた。
リイナは大木に近づき、そっと触れる。ひんやりとする木肌は心地が良く、目を閉じて聞いた師匠を想像する。そんな彼女を、ジードは温かい目で見つめていた。
すると、二度目の鳴き声と共に突風が吹き荒れた。
「レアード?」
いつもはジードが呼ぶまで森の奥にいるのだが、明らかに威嚇状態で高ぶっている。リイナに対する警戒かとはじめは思ったが、レアードの視線は森の入り口の方を向いてうなっている。
「ハンターが来たのかな…」
リイナのつぶやきに、頭を縦に振りかけたが、いままでこんなに警戒したことはなかった。数日前のハンターにレアードは遊んでくれるんじゃないかと目を輝かせていたいたのだ。外から流れ込む風に紛れ、殺気を感じ取ったジードはその多さに嫌な予感がした。
「…様子を見てくる。レアード、彼女を守っていてくれ」
「待って!!」
走り出そうとしたジードを止めたのは、真剣な目をしたリイナだった。
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