第2話
「ついた…!」
村から約半日、休憩を挟みつつ歩いてようやくリイナは森の入り口に着いた。リイナの膝くらいまで伸びた草が茂る中、一部の草が倒されていた。それは森の奥に続いており、ハンターたちが通り道にしていたことがうかがえる。
リイナはカバンから大き目の布を取り出し、口と鼻を覆うようにそれを付けてからハンターの足取りを追って森の中へと踏み入れた。
人喰い飛竜がいるとは思えないほど、森の中は自然が生きていた。もっと閑散とした植物の枯れた毒々しい森を想像していたが、全く違ったのだ。
木々は青々と葉をつけ、太陽に向かって真っすぐ伸びており、敵を知らないリスやウサギが群れを成して生活している。そっと口元に付けていた布を顎まで降ろし、肺いっぱいに空気を吸い込む。体をめぐる空気はとても澄んでいておいしくて、リイナは口元をほころばせていた。
気分を良くしたリイナは、辺りに気を配ることを忘れるほど興奮していた。足元にあった小枝を踏みつけたとき、パキという小さな音が森に響いた。
本当に些細な音だったが、森の動物たちにとっては大事で、急いで森の奥へと走り去ってゆく。
リイナ自身もはっとして、注意力を取り戻したが、時はすでに遅かった。
「ギャーーーー!!」
突風と共に、耳を劈く鳴き声が森に響き渡り、両耳を塞いでその場にしゃがみこんだ。とても強い風に吹き飛ばされそうになりながら、目を細く開けて風の吹いてくる方を見る。すると、そこには大きな羽を羽ばたかせながらゆっくりと降りてくるドラゴンがいた。
それが“人喰い飛竜”だというのは、言われなくても分かってしまう。リイナよりもはるかに大きな巨体に鋭い爪、体を覆う鱗は太陽の光を受けて輝き、その眼光はまっすぐにリイナを射抜いている。見られているだけなのに、足は震え目を逸らすこともできない。
「―帰れ―」
低く、殺意のこもったその声は降り立った竜の肩にいる人物から発せられた声のようだった。逆光のせいと、距離があいているせいでよく見えない。それでも、リイナは体全体が震えだした。
「あなたが、ドラゴンテイマーさんですかー!!」
「…は?」
輝くリイナの瞳。大きなその声に、ドラゴンテイマーと思しき人は素っ頓狂な声が自然と出てしまったのだった。
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