第13話


 キュレイス山がかつて鉱山として使われていた頃、その採掘中に、人為的に掘られたような空洞と水脈、そして鉱族リベラノ由来の鉱床が発掘された。その埋蔵量は鉱族リベラノ数十体にものぼり、そのどれもが金属ではない、研磨すれば宝石となる鉱物の原石ばかりであった。

 元が鉱族リベラノであるから採掘をしてはいけない、などという決まりはない。しかし、あまりにも鉱床が一箇所にかたまり過ぎていることに疑問を抱いた採掘主は、国と交渉し、キュレイス山での採掘権を返還して、一切の関わりを打ち切ったという。

 キュレイス山に調査の手が入ったのは、それからしばらくのことだ。


「そんとき新たに見つかったのが、俺たちが今回潜った【珪蝕蛇の路チルタミルグラシア】だ。

 チルタミル(珪蝕蛇)って言えば、昔から地震を起こすと言われ恐れられていて、実際この辺は地震が絶えない時期が続いたこともある。

 だから、鉱族リベラノ達はそのチルタミルを鎮めるための生贄として捧げられたものなんじゃねえかっていう結論に一度は落ち着いたんだ。

 で、それが確か、今から一千年前くらいらしい」

「ずいぶん昔ですね」

「そうだな。だが、鉱族リベラノの発現とチルタミルの出現時期が符合しない、という意見から、後になってチルタミルとの関連性は認められないとされてしまった……

 結局何故鉱族リベラノの鉱床がそこにまとまっているのか、空洞は誰が掘ったものなのか、今でも解決しないまま、謎のままになっている。

 で、この話はエレミースでは割と有名で、調べれば簡単に知ることができる。まぁその所為もあるんだろうが、今でもその立入禁止区域に侵入して、鉱床を持ち出そうとする輩が後を絶たないらしい。

 今はその立入禁止区域に結界が張ってあって、易々と立ち入り出来ないようにしてあるんだよ。してあるはずなんだけどな」


 カディンは喉を唸らせてふと遺体の四人を見やる。


「それだけ結界の外に転がっていた、というのは?」

「あまり考えられないがな。それに」


 カディンは首と胴体の離れた守族リフィアの男を見て眉を吊り上げた。


守族リフィアなら、結界を解くなり、または抜けるなりの技術を持っててもおかしくねえんだよな」


 カディンは思いを馳せて、ひとりため息を吐く。


「で、どーすんですかその石」


 ポートがカディンの手元の石塊を指差す。


「まあ、結界の外から投げて中へ戻すってのもアリかもしれねえが、俺はエレミースではそれなりに顔が利くし、これはこれで出すところに出して調べてもらうさ。面倒でも、やることはやらなきゃな」


 カディンは無理やり笑ってみせると、そこで話を打ち切った。

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