第63話俺が召喚するならばっ!

「よし、じゃあまずステータスを見せてくれるか?」

「ステータスか?分かった、ちょっと待ってくれ」


 ユノが泣き止むのをしばらく待って、これからのことを具体的に考える。うーん…相変わらず行き当たりばったりの俺の性格。


「こんな感じだ。」


______


ユノ=アステリア 16歳 Lv.19


HP 106

MP 354

攻撃力 58

防御力 69

精神力 101

魔法力 185

俊敏 77


スキル


死霊召喚Lv.2ネクロマンス

(召喚魔法Lv.1)

死霊交信ゴーストコンタクト


______




「ど、どうだろうか…?」

「魔法の練習していただけあって魔法面でのステータスは高いな…特にMPに関してはティア以上か」

「ティア?それはスルガの仲間か?」

「あぁ、そんなところだ」


 それより…この(召喚魔法)ってのはなんだ?なぜ()がついてる?


「なぁ、この()の中身はなんだ?」

「かっこ?えっと…そんなの私のステータスにあるか?」


 見えてない?そんな馬鹿な…いや、確かに前にティアのステータスを見たときに、『???の才』と書いてあった…その時もティアは気付いてなかった。

 ということは俺になんらかの能力が備わってるのか?武術の才や魔法の才は…関係なさそうだし、それ以外なら……クロエの加護の影響か?


「おーい、スルガ?どうしたんだ?」

「あ、悪い。考え事をしてた」

「それはいいんだが、それよりも私のステータスを見せたんだからスルガのステータスも見せてくれなければ不公平だ」


 興味津々といった感じで俺に迫ってくる。ふむ…確かにここ最近確認してなかったからな。気になるところではある。


よし、ステータス。



_______



高梨 駿河 16歳 Lv.34


HP 1687

MP 1640

攻撃力 1586

防御力 1011

精神力 1365

魔法力 1468

俊敏 1865


スキル


暗黒魔法Lv.2

限界魔法Lv.2

契約魔法Lv.2

召喚魔法Lv.2

魔力強化Lv.4

身体強化Lv.3

索敵Lv.3



才能スキル


武術の才

魔法の才


創造神の加護 Lv10



____________



 ………………なんだこれ。


 まてまてまて……ん?

 ひーふーみーよー……四桁?

 

 全部のステータスが伸びすぎじゃないか?レベルもいつの間にか34になってるし……え、これ見せていいやつ?

 いやスキルは任意で見せるものだから、スキルだけ隠せば…


「ふふ…私俄然楽しみになってきたぞ。スルガのスキルっ!スルガのスキルっ!」


 あ、ダメなやつだこれ。隠しきれないわ。諦めるしかないやつだわ。


「えっと、あの……どうぞ」

「お!どれどれ!見せてもらうぞ!!」


 ユノが俺の目の前の透明なウィンドウを横に来て覗き見る。近いって。


「…………なにこれ?」

「な…なんだろうな」


 痛い!視線が痛い!目を見開いているよ!限界まで開き切っちゃってるよっ!ドライアイになるよっ!?


「ステータス四桁で…魔法が七個…それに才能スキルッ!?それも2つッ!?」

「あ…あはは……」


 俺とステータスの画面を交互に見つめて驚きの声をあげる。

 いやぁ、まさか俺もこんなことになってるとは思わないからなぁ。


「才能スキルなんて初めて見たけど…2つ持ってる人がいるなんて……も、もしかしてスルガは噂の神様の使徒だったりするのか!?…ですか!?」

「そんな無理に敬語を使わなくても……ていうか神の使徒?そんなの初めて聞いたけど、なにそれ?」

「なんだ…違うのか。それもそうだよな、こんなパッとしない男が神の使徒なわけないか」

「ちょっと失礼過ぎじゃないですかね?」

「あっ!すまない!つい本音が…」

「うーん、謝ってるようで失礼の上塗りだなコレ」


 天然が入ってるのかな?とりあえず悲しいなぁ俺。助けるのやめちゃおっかなぁ。


「でも本当に、神様の使徒じゃなくて良かった。あの人達に崇拝されてるような神様なんて、怖すぎるからな」

「あの人たち?」

「知らないのか?最近噂になってる邪教の集団さ。」

「邪教だと?」

「あぁ。偏った教えを説いている不気味な集団だ。あまり良い噂は聞かない過激な邪教と聞いている。最近はこのシュロンの町に潜んでると言われてるんだが、今のところは音沙汰ないな」


 はぁ…見事なフラグだ。嫌な予感しかしない。仕方ない、サツキに様子を見させに行くか。まあ、そんなわけないと思うけど…ね。


「サツキ、出てこい。『召喚(サモン)』」

「あら、もう出番かしら」


 魔法を発動させると地面に出来た魔法陣から直ぐにサツキが現れる。


「て、どこよここ?洞窟じゃない。ジメジメして気持ち悪い…はっ!もしかしてスルガちゃんはこんなところで私を呼び出して…そんなっ!でもスルガちゃんなら……い・い・わ・よ」

「おい、後ろにゾンビがいるぞ」

「え?…いやんっ!?股間丸出しっ!」

「そこじゃねえだろっ!?てゆうかさっきから一人でなにいってんだよ!服着ろ服っ!」


 サツキ…ぶれないなぁ。あと召喚されるときは毎回服着て出てきてくれないかな…待ってるときは裸でいいから…


「ぼー…」

「おいユノが唖然として『ぼー』とか言ってるじゃないか。責任を取れ」

「仕方ないわね、スルガちゃん。ご両親に挨拶に行きましょう」

「そういう意味じゃねえよっ!脳内ピンク一色かこの変態!」

「あらひどい。私は性の魔族なのよ?これくらい当たり前じゃない」

「そうだとしても節度を持ってだな…」


 俺は頭痛がしてきた頭に手を当ててため息を吐く。サツキと会話すると疲れるばっかりだよ…


「ぼー……あれ!?えっ!?お、おいスルガ!このサキュバスは一体……!?」

「あー、俺の仲間だ。サツキと呼んでやってくれ」

「よろしくね」

「さ、サキュバスだろう!?魔族じゃないかっ!ぐ、グーちゃん!私を守れ!……てあれ?」


 いつの間にか|屍鬼(グール)たちがいなくなっている。多分召喚魔法の効果が切れたんだろう。


「え…えっと!…す、スルガ!危ないぞ!そいつはサキュバスと言って男を誘惑する魔族でっ!」

「分かってるって、少し落ち着けユノ」

「あらなにこの子。可愛いじゃない…じゅるり」

「ひぃっ!?」

「やめろっての」

「あいたっ……うぅ…スルガちゃんの愛が痛いわ…」


 ユノに飛び付こうとしたサツキの頭をチョップで叩く。

 全く、性の魔族なのは分かったが節操が無さすぎだろう。それに今のは愛じゃない。ただのチョップだ。


「サツキ、あとで説明するからここからシュロンの町に戻ってティア達の様子を見に行ってくれないか?」

「私ここ始めてきたところなんだけど…シュロンの町も分からないし」

「あ、そうだった。仕方ない、一回帰るか」

「あら、出来ないとは言ってないわよ。ティアちゃんの魔力は覚えてるからそれを追えば良いでしょう?」

「そんな器用なことが出来るなら最初から言いなさい」

「テヘペロっ!」


 可愛く……ないこともないけど、ムカつくからチョップな。


「あいたっ!……そういうプレイがお好み?」

「やかましわ!」


 わざとらしくメソメソとするサツキを適当に流して、シュロンへ向かわせる。

 はぁ、本当に疲れるばっかりだ……まあ、面白いと言えば面白いけどな。


「…魔族を仲間にするってどうやるんだ…?それに召喚魔法を使って呼び出したように見えたんだが…?」

「ユノ、世の中には不思議ってのが溢れてるもんだ。良く言うだろう?『事実は小説より奇なり』ってな」

「う、うん…そうなの…かな?」


 ユノを無理矢理納得させて、そろそろ本題に移ることにする。


「よし、閑話休題。話を戻すぞ」

「あ、うん。そうだな」

「で、さ。ユノってさ、魔法って何々試した?」

「魔法か?できることは大概試したからな、全て言うと霧がない」

「そうか、じゃあ聞き方を変えよう。召喚魔法は何を試した?」

「え?それは…『死霊召喚(ネクロマンス)』だな」

「そうか、じゃあ、

「え…?」


 ユノは色んな魔法を試したと言っていた。しかし召喚魔法ってのはどんな小説でも誰でも使うような魔法ではない。むしろ高等な魔法である場合が多い。


「死霊召喚以外の召喚魔法を試したことはあるのか?」

「いや、それは…ないな。そもそも召喚魔法自体がそこまで知られてないから、魔法の使い方も分からない」

「ビンゴ。かな?」

「どういう意味だ?」


 ユノは多分、勘違いしている。本当は、死霊召喚という魔法が使えるんじゃない。


「ユノ、多分、お前は死霊召喚が使えるんじゃなくてが使えるんだよ」

「え…?召喚魔法が?」

「そうだ。試しにやってみろ」

「やってみろってどうやって…」


 ま、お手本が必要だよな。だからこそ、俺の『才能スキルズル』だ。


「言葉で表現するのは難しいから、見て感じてくれ。いくぞ。」


 サキュバスは契約魔法を通じてだったから魔力をあまり使わなかったし、イメージもそんなに必要じゃなかったが、今回は普通に召喚するんだ。何を召喚してやろうかな?


 ふむ、どうせユノが真似するのなら可愛いものを召喚してやりたいよな。てことは…


「『|召喚(サモン)、フェアリー』」


 可愛い異世界のキャラと言えば精霊や妖精。英語で言えばフェアリーだ。これなら…


「…あれ?何も出てこないな…」

「あ、あの、スルガ?何も見えないが…」

「まっ、待て!今のは練習だ!」


 まさか失敗するとは…よしっ!もう一回!


「成功してるですよ!」

「え?」

「だから!成功してるですよっ!」


 妙に可愛らしい声が聞こえて、周りを見るがどこにも人影はない。成功っていうのは、召喚のことか?


「お、おいスルガ?誰と話してるんだ?」

「私ですよっ!」

「なにっ!?誰だ!?」

「姿が見えない…召喚は本当に成功したのか?」

「見えないです?あっ、今は『葉隠れ』を使ってるんでした!解除するです!」


 そう声がすると同時に、目の前に小さい、緑色の髪をした130センチくらいの幼女がいた。この世界の妖精はこんな感じなのか、思ったより大きいな。というか…


「また…幼女なのか……」

「ぷくぅっ!幼女とはなんなのですっ!?リーフィは幼女じゃないです!」

「うわぁっ!?妖精!?スルガが召喚したのか!?」

「リーフィは妖精族の中でも上級妖精なのですっ!それにもう何百年も生きてるです!立派なレディーなのですっ!」


 リーフィ?が大きい胸を張って叫ぶ。

 ……え?なんだこの妖精さん!?サツキ程ではないが、それでもDはあるぞ!?背丈からは想像できないほどだ!

 あ、サツキは多分、Gくらいあります。しゅごい。


「で、召喚したのはなんでなんです?上級妖精を召喚するなんて、一体どんな供物をくれたんです?」

「召喚したのは特に理由はない。なんとなくだ。あと、供物なら…屍鬼でいいか?」

「理由もないのに召喚したですっ!?というか供物が屍鬼ですっ!?そんなグロいものいらないですよっ!」


 ぶんぶんと手を大きく振って首を横に振る。

 うーん、可愛い。青い目が大きくって、胸まで伸ばした緑の髪が可愛らしさを更に助長させている。


「別になんでもいいですよ?魔力が籠ってたら木の実でもいいですし、リーフィは妖精ですから、悪魔みたいに何でもかんでも求めないのです」

「ふむ、そうか。じゃあこれならどうかな?」


 俺は懐からソフトボールサイズの石を取り出す。

トバリのダンジョンで、サツキがいた部屋にあったっていう魔力が詰まった石。

 正直使い道に迷っていたから、ここで使えるなら使ってしまおう。


「むむ、まあいいです。じゃあそれをくださいです」

「はいはい、わかりましたよ姫様」

「ふふん、それでいいのですっ!」


 リーフィは満更でもない様子で喜ぶ。姫様と呼ばれるのがそんなに嬉しいか?まあ、ちょうどこのくらいの背竹の子は姫様に憧れるもんだからな。


「じゃあ、いただくです」


 リーフィは美味しそうに石をかじる。

 おおう…幼女が石を食べてるって、これ良いの?親御さんが必死に止めようとするやつじゃない?まあ本人がいいと言ってるんだからいいけどさ。


「あの、スルガ?リーフィちゃんのこと、どうするんだ?私に召喚魔法を教えてくれるんじゃなかったのか?」

「う、うーん…とりあえず様子見させて?」

「美味しかったです!」


 ペロリと石を食べ終えてリーフィは言う。


「で、リーフィは何をすればいいんです?」

「別に用はないんだが…そうだな、じゃあユノ…えっとこの子に召喚魔法を教えてあげてくれないか?」

「そんなことでいいですか?まあ、リーフィはいいですよ。魔法の天才と言われる妖精族の力を舐めてもらっちゃ困るです!」


 ほう、魔法の天才なんて呼ばれているのか。ではお手並みを拝見させてもらおう。




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