第60話俺がハーレムに憧れたならばっ!

「あ、そういえば本来俺は宝を取りに来たんだった。」

「あら、そうなの?」


 俺とサツキは寝ているティアとメアを起こさないようにして会話をする。


「でも宝って言ったって、大したものはないわよ」

「え、なんで?」

「だって、装備を落としたり、お金を落としたりするのは人間でしょ?この最下層まで今まで誰一人降りてこなかったのよ?お宝なんてあるわけないじゃない」


 えー……そりゃそうだけどさぁ…ダンジョンでお宝ゲットって夢じゃん。マジかぁ…なんかやる気が削げてきた…


「そんな悲しい顔しないの。ほら、これならあるわよ」


 サキュバスはどこからか綺麗な宝石のようなもこを取り出した。


「それは?」

「これは魔力が詰まった石よ。良く分からないけど、この部屋に最初からあったの。」

「それがあるとどうなるんだ?」

「さぁ?でも何もないよりマシじゃない」


 そうだよな、何もないより全然いいか。それに、綺麗な石だし高く売れそうだ。


「ありがとな」

「いえいえ、どうせ私はもうあなたのモノだ・か・ら」

「胸を強調するな、揉むぞ」

「あら?そんな勇気があるの?」


 くっそこいつ!舐めやがって!!俺だってやるときはやる男だぞ!!


「……無理です(血眼)」

「別にいいのに」

「俺の理性を壊しに来るな淫魔め!」

「ええ、淫魔よ」


 そうだった…くそう、しっかりモンスターとしての領分をこなしてんじゃねえか……


「ん…あるじ……?」

「お、ティア。起きたか」


 ティアが目を擦りながら起き上がる。次いでメアも気だるげな声を出して目を開ける。


「んー…爆ぜろ人間……むにゃむにゃ」

「寝言!?違うよねっ!?本音じゃないよね!?」

「うるさいっ!」

「あぶなっ!おい今目の前に雷が落ちたぞ!?」


 メアって意外と寝起きが悪いんだな…


「サツキ、俺たちは一回帰るぞ。その内呼び出すからな」

「ええ、いつでも呼んでちょうだい」

「ん…サツキ?」

「もしかしてサキュバスのことなのか?」

「おう、そうだよ。俺たちの仲間になったんだ」

「よろしくね」

「ん…!うれしい」

「えぇ…どんどん増えていくのだな…ハーレムでも作るのか?」

「それもいいな!」

「女の敵だぞコイツ!!」


 ティアは素直に喜んでいるがメアは歓迎してないみたいだ。相変わらず頭が固いなぁ。


「ま、まあ我は優しいから、世話をしてやらんでもないけどな…」


 おっと、ツンデレだったみたいだ。やっぱり根は悪い子じゃないんだよな。撫で撫でしてやろう。


「よしよし」

「鬱陶しいっ!!」

「とか言いつつ手を払わないのはなんでかな?」

「に、人間に労力をかける必要性を感じないからだ!!」

「からのぉ~?」

「うぜえっ!」


 ふう、やっぱりメア弄りは楽しいな。やめられないとまらない。



 あの後サツキと一旦別れてニーアの家に戻った。

今はすることもなくボーっとしている。


「それデ、サキュバスは結局どうなったんダ?」

「んー、仲間にしてきた。」

「仲間?魔族ヲ?」

「あれ、これ言っちゃいけないんだっけ?」


 魔族は嫌われてるんだっけ?まあ町を荒らされたりしたら困るもんな


「私は構わないガ、その、サキュバスは何処にいるんダ?」

「呼び出してもいいのか?」

「呼び出ス?」

「なんだなんだ?サキュバスを呼ぶのかー?」

「ん…サキュバス来るの?」

「そうそう、こうやって…『召喚(サモン)、サキュバス』!」


 俺は叫びながら一回手を合わせてからそのまま地面に両手を下ろす。

 すると地面に魔法陣のようなものが現れて周りが輝きだす。


「なぁ、今の動作必要だったのか?」

「いや、必要ない」

「人間はかっこつけるのが好きだな…」


 アニメの影響受けちゃったかな?…いいじゃん、折角の魔法なんだからかっこつけたって!

 と、思っていると目の前に人形の影が現れる。無事サツキを召喚できたみたいだ。


「早速出番かしら?」

「ん…サキュバス…!」

「あら、ティアちゃん。私はサツキって名前になったのよ。これからはサツキと呼んでちょうだい?」

「ん…サツキ…」

「なんだかママを思い出すのだ…」

「あ、俺も思った。気が合うな、メア」


 メアは心底嫌そうな顔をしてこちらを見る。そんな不細工な顔をするな。

 それよりも、ニーアが何故か停止している。どうしたんだろうか、もしかして魔族に驚いてるのか?


「おい、ニーア?大丈夫か?」

「……スルガたちハ何も思わないのカ…?」

「別に思うところはないが?」


 なんのことだ?それに何故ニーアはそんな顔を赤く染めているんだ?


「だってサキュバス…さん?は全裸じゃないカ!!」

「はっ!気付かなかった!?」

「えっ!?私裸だったかしら!?あらほんとっ!」


 サツキは常に全裸のイメージがあったから気付かなかった!ふう、全く。けしからん!もっとやれ!


「ていうかニーア、意外とそういうの気にするんだな」

「逆になんで気にしないんダ!?私は女だがスルガは男だろウ!?もっと気になるんじゃないのカ!?」

「え、うん。でももう慣れたかな」

「慣れって怖いナ!!」


 もうそういうものだと思えばどうにでもなるものだよ。


「ニーアって意外とウブなんだな。」

「ん…ウブってなに?」

「初々しい感じのことだ」

「ニーアは…ウブなの?」

「う、ウブじゃない……と思ウ…」


 顔を赤くして俯くニーア。これは可愛い。


「ねぇ、私外を見てきてもいい?」

「大丈夫なのか?」

「えぇ、ちょっとくらいならバレないわよ」

「別にいいんじゃないか?」

「なア、そのサキュバスは」

「サツキよ」

「さ、サツキは魔族だろう?町に出したりなんかしたら、スルガ達が捕まるんじゃないカ?」


 ニーアが恐る恐ると言った感じに話す。視線はサツキに向けてない。多分恥ずかしいんだろう。気にしなければ良いのに。


「ニーア、俺の故郷にはこんな言葉がある。」

「な、なんダ?」


 俺はニーアの肩を掴んでしっかりと目を合わせる。

 ニーアは何故か呼吸が止まったかのように頬を染めてこちらを見つめ返す。数秒の間が空いて……



「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ」



「最低かっ!!」


 メアが鋭く突っ込んでくる。メアもつっこみが板についてきたじゃないか。


「そ、そうカ…ならいい…のカ?」

「お姉ちゃん!惑わされちゃダメだぞ!」


 あ、そういえばメアってニーアのことお姉ちゃんとか言ってるんだっけ。


「行ってきまーす」

「ア……行ってしまっタ…」

「大丈夫だって。それよりご飯にしようぜ。お腹減ってきた」

「あ、ご飯か!?速く食べようっ!」

「メアは突然元気になるな…情緒不安定か」

「速く!速く!」


 俺の声は聞こえてないようだ。食い意地張りすぎだろう。


「じゃア、とりあえずご飯にしようカ」


 ニーアははにかみながら台所に向かっていく。


 さて、トバリのダンジョンは攻略できたし、次はどこのダンジョンに行こうかなー。




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