第59話俺がサキュバスと話すならばっ!


すいません前話がその前の話と同じ物になっていました。訂正しているので、申し訳ありませんが、そちらを見てからこっちをご覧下さい。


______________


「な?酷いだろ?みんな俺のことを変態だロリコンだと、むちゃくちゃを言うんだぜ?」

「うーん…そうね。これは重症だわ」

「我は幼女じゃないから人間はロリコンじゃないだろ?」

「ん…でもメアはティアと同じ背丈だよ?」


 俺たちは床に座って四人でお茶を飲んでいる。ちなみにサキュバスは全裸だったけれど、今は服を着ている。魔力で作れるらしい。

 最初からそうしてほしいが、サキュバス曰く

『服を着ると、苦しいのよね。ほら、あたしデカいし』

とのことらしい。

 ティアは無言で胸を触り、メアは憤慨してサキュバスに罵声を浴びせていたが、サキュバスは高笑いしながら聞き流したようだった。


「ところでこれからどうするの?私を殺すの?」

「あー…でもなぁ。流石にここまで仲良くなったら殺そうとは思えないよな。それに、サキュバスってどこから見ても人間だしな。殺す勇気も実は無かったりする。」

「ん?人間は人を殺したことがないのか?」

「え、たぶん。無いはずだけど?」


 そんな『え?○○したことないの?そんなの小学生までだよねぇ』みたいな風に言われたら、あったような気が…


「しねぇよ!殺したことなんかあるか!」

「…ビクッ!!」

「あら、ティアちゃんが驚いちゃったじゃない。よしよし」

「あ、ごめんティア」


 サキュバスはティアを抱き締めて背中をぽんぽんと軽く叩いている。あれ?おかしいな、サキュバスを見ているとお母さんが浮かんでくるよ?


「ママ、ミルク」

「おい、こいつ殺して良いのか?」

「うふふ、大きな息子が出来ちゃったわね」

「ん…サキュバスはお母さん?」

「そうよぉ、好きなだけ甘えて良いわよ?」

「ん…んぅ…」


 ティアはサキュバスの下腹部に頭を擦り付けて甘えている。

 ふむ、ティアの過去についてはあまり知らないが、これだけ甘えているということは、親離れ出来ていない?いや、それならティアの側に親がいなければおかしいか…

 考えてみよう、ティアは甘えん坊だ。俺と一緒の布団で寝たがるし、頭を撫でてもらうのも好きなようだ。それに何時でも一緒に居ようとしている。孤独が怖いのかもしれないが、ティアはもしかしたらなんらかの理由で親がいないのかもしれないな。


「なぁ、サキュバス」

「なあに?」


 ティアを撫でながら、サキュバスを首を傾げてこちらを見つめ返す。


「良かったら俺の仲間にならないか?」

「……どうして?」

「んーと、まあ別に深い意味はないよ。ただ…ほら、俺たちには頼りになるお姉さんがいないんからさ」


 俺はティアを見てそう呟く。ティアはいつの間にかサキュバスに掴まって寝ている。今はサキュバスが座り込んで、その上に頭を乗せている状態だ。

 多分、サキュバスの母性がティアを安心させているんだろう。ティアがここまであからさまに甘えるのは俺ぐらいだからな。サキュバスがいてくれればティアも喜ぶだろう。


「そうね…着いていきたいけど、それは無理かも。」

「なんでだ?」

「私ってこんなに青白い肌してるじゃない?それにこの長い尻尾だって簡単に隠せるものじゃないし。サキュバスだとバレたらあなたたちに迷惑かけちゃうじゃない」


 サキュバスは少し顔を歪めながら無理に笑いを作る。


「それは、確かに…でもメアだって魔族だぞ?」

「メアちゃんはまだ小さいから、尻尾みたいな身体的特徴もないし、私ほど青白くないもの。見ただけじゃわからないわ」

「小さいって言うな!」

「メアは黙ってなさい」

「ぐぬぬ…」


 ことあるごとに突っ込んできて貰っても困るのでメアを落ち着かせて話を続ける。ほら、ティアと一緒に寝てなさい。


「私が一緒になっちゃったらきっと町を歩けないわよ?」

「でもさ、サキュバスはここにずっと居たい訳じゃないんだろ?」

「そうね…誰一人ここに来ることはなかったしね。あなた達が初めての客よ。モンスター以外ではね。寂しかったといえば寂しかったわ」

「モンスターといえどもそう感じるものなのか」


 サキュバスは多分、生まれてからずっと、このダンジョンに居続けたんだろう。そして、たくさんのモンスターを狩っていく内にここの番人になったわけだ。

 良く分からないけれど、このサキュバスには『感情』がある。それは簡単な喜怒哀楽じゃなくて、もっと深く、言葉じゃ表すことの出来ない『感情』が。

 慈愛に満ちた表情で膝のティアを撫でている姿は、先程までの臨戦態勢のときとは似ても似つかない。


「もし、お前が俺たちに着いてきたときに、俺やその周りの人たちに迷惑にならないとしたら、ついてくるか?」

「……そうね。本当に迷惑にならないなら、行きたいわ。外の世界も見てみたいし」

「そうか。なら決まりだな」


 サキュバスは、今日から俺の仲間だ。奴隷にはしない。奴隷だと周りから見られちゃうからな。


「契約をしよう。」

「契約?」

「そうだ、契約。俺のペットになってくれ」

「そんな急にハードなプレイを要求されても…ぽっ」

「そういう意味じゃねえよ!あと頬を赤く染めるな!」


 いや俺のペットって言い方も悪かったな…そういうつもりじゃなかったんだが。


「俺の召喚獣になってもらおう。」

「え?それってつまり私があなたのペットになるってこと?」

「わざわざ言い方を直したのに戻すなよっ!ほら、いいから。こっちに近付いてこい。」

「いいけれど…そんなことできるの?」

「知らん。けど多分出来る」


 自信はある。メアだって即興で奴隷に出来たんだ。サキュバスと契約することだって出来るはずだ。


「知らんって…ま、なんでもいいけどね。私はもう何をされても文句は言わないと決めたし。抵抗したところで押し倒されるのが落ちね。」

「いやそんなことしないからな?」


 サキュバスは寝ているティアを起こさないようにして床に寝かせてこっちまで近づいてくる。


「よし、じゃあ…やるぞ」

「あなた…意外とカッコいい顔付きしてるのね」

「照れるからやめてくれ。ほら、集中してこっちに意識を向けて」


 サキュバスと互いに見つめあって意識を集中する。契約か、どんなイメージかな?奴隷のイメージは鎖で繋ぐ感じだったし…契約なら……


「僕と契約して魔法少女になってよ!」

「……冗談はほどほどにしてもらえるかしら?」


 すいません、遊び心だったんです。出来心だったんです。

 まあ、俺とサキュバスを線と線で結ぶイメージかな?んーと、こんな感じ。


「『契約(コントラクト)』」


 呟くと同時にサキュバスと俺が感覚的に繋がったような感じがした。さっきよりも近くにいるような錯覚を覚える。


「んぅ…何か体に入ってくる…あっ……ような感じが……んっ…するわぁ…」

「あの、変な声出すのやめてもらえます?」


 次第にその感覚に慣れていき、普段と変わらない状態に戻っていく。


「これで契約は出来たかな?」

「良いんじゃない?」


 どうやら成功したみたいだ。これで外に出ても、召喚すれば何時でも会えるはずだな。流石才能スキルだ。なんでも出来る。ご都合主義?大好物です。


『うふふ、この人たちに会えてよかったわ。今が一番幸せかも』


 ふと頭に響くような声が聞こえた。


「…なにか言ったか?」

「いえ?なにも言ってないわよ?」

『なにも聞こえないけれど…それよりも早く外の世界を見に行きたいわ。何時見れるかしら…』


「やっぱり言ってるだろ?ほら、外の世界見に行きたいって」

「え?口に出してた?」


 ん?待てよ、今サキュバスは口を開けてはいなかったな…てことはこれって…


「なぁ、サキュバス。なんでも良いから何か好きなことでも好きな人でも思い浮かべてくれ」

「…?別にいいわよ?」

『好きなこと…そうね、そこらへんのモンスターを私に惚れさせることかしら。好きな人は…異性の人って会ったのはスルガちゃんだけだから、スルガちゃんかしら?』


「…思ったより濃い文章だな」

「え?」

「モンスターで遊ぶのはやめてやれ…あと俺のことちゃん付けで呼ぶのもやめてくれ。なんか恥ずかしい」

「なんで聞こえてるの!?」

「良くわからんが、今さっきの契約で心が読めるようになったみたいだ」


 契約のイメージが強すぎたのか、心の声まで聞こえるようになってしまったらしい。


「そんな…変態!」

『変態!』

「心のなかで輪唱してんじゃねえよ!」


 もうなんかそろそろ言われ慣れてきたわ!


「でもこれで、一緒についていけるのでしょう?」

「そうだと思うぞ。」

『うふふ、それなら仕方ないわ。これからよろしくね。スルガちゃん!』

「心で会話をするな、あとちゃん付けもするなと…まあいいか」


 俺とサキュバスは、思ったよりも深く結び付いてしまったみたいたが…ま、いいだろう。これで新しい仲間が出来たし、ティアの母親代わりも出来たかな?


「あ、そういえば名前ってあるのか?」

「私?私はサキュバスっていう種族名しかないわ。それがどうかしたの?」

「いや、仲間になるなら名前も必要だろ?無いかもしれないが、町のなかでお前を呼ぶときに『サキュバス、出てこい!』とは呼べないじゃん」

「そうね、ならスルガちゃんが名前をつけてちょうだい」

「最初からそのつもりだ。ちょっと待ってくれ」


 サキュバスか。サキュバスサキュバス……上手くもじりたいものだが、良い名前が浮かばないな。サキュバス…サキバス…サキ…サキはどうだろうか?


「サキって名前はどうだ?」

「別に何でもいいわよ」

「なんでもはダメだ。これからずっと呼ばれる名前だぞ?」

「必死に考えてくれるのね。嬉しいわ」


 サキュバスは顔にニコニコと笑みを浮かべてこちらを見る。

 やめてくれ、そんなお母さんが子どもを褒めるときにするような表情でこっちを見るのは…


「結局サキでいいのか?」

「んー…そうね。じゃあサツキって呼んでちょうだい」

「サキの間にツを入れたのか。その心は?」

「意味はないわ。サキよりも、サツキって名前の方がなんだかしっくりくるのよ」


 ふうん、そんなものか。とりあえず、全国のサキさんに謝ろうか。ごめんなさい。


「じゃあこれからはサツキと呼ぼう。よろしくな」

「えぇ、こちらこそ」


 俺はサキュバス…いやサツキと握手をかわす。

ふぅ、これでやっと大人な女性を俺の仲間に出来た。もうロリコンとは言わせないぞ!


「あ、私。生まれつきこの姿なだけで、まだこのダンジョンに生まれてから5年経ってないわよ」


 …見た目は大人なお姉さんで中身は5歳未満。つまり幼女…いやこれは流石にロリコンとは言われないはずだよなぁ!?




 違うよね?






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