第57話ニーアが意外とうぶならばっ!


「お風呂沸いたゾ。好きに入ってくレ。」


「お、ありがとう。ニーア。」


 よかった。暫く風呂に入ってなかったから辛かったんだ。もしティアに臭い何て言われたら俺は泣くよ。


「よっしじゃあ入るぞ、メア。ティア。」


「うーい。」


「ん……」


 ティアとメアは服を脱いで準備をする。さて、俺も服を脱いで……


「ン!?ここで脱ぐのカ!?」


「あ、悪い。」


 危ない危ない、忘れていたがニーアは体は小さいが大人のドワーフらしいからな。俺のような素敵な男性が目の前で着替えると興奮してしまうみたいだ。


「どこで着替えたら良い?」


「その廊下を歩いて途中にあるヨ。見たら分かるから行ってみてくレ。」


「分かった。ティア、メア。行くぞ」


「久しぶりの風呂なのだー。」


「ん…あるじの背中ごしごし…するね」


「おう、ありがとなー。」


「三人とも一緒に入るのカ?」


「おう、駄目だったか?」


「いや、狭いわけではないから良いんだガ…」


 俺と裸の二人を見比べている。何か変なところがあっただろうか?ていうかティアとメア、もう既に裸なんだな。


「寒いぞ、人間。行かないのか?」


「あぁ、そうだな。ニーア、行ってもいいか?」


「あ、あア、ゆっくりしてきてくレ…」


 納得がいかないような難しい顔をして、どうしたんだ。あ、もしかしたらドワーフと人間じゃあ文化の違いや感性の違いがあるのかもしれない。例えば幼女と風呂に入るのは、俺達にとっては当たり前、むしろ推奨されていることなのにドワーフではそうではなかったりしてな。まあ、有り得ないか!



 私はニーア、ドワーフだ。シュロンという町でしがない鍛冶屋を開かせてもらっている。父と共に開いた店だが、暫く前に父がダンジョンに素材を取りに行って以来、戻って来ず、今は一人できりもりしている。


 そんな中、二人の可愛らしい奴隷を連れた男が現れた。どうやら護身用及び、戦闘用の武器を買いに来たようだった。


 奴隷というのは本来、主人には忠実なものだが、銀髪のティアという子はともかく黒髪のメア、という子は忠実とは言い難い。主を変態と罵ったり、軽く小突いたりと、奴隷とはおおよそ考えられない行動をとる。

 しかしその主人である駿河という男は全く意に介していないようだった。むしろ、その関係や会話を楽しんでいるようだ。


 話をしているうちに分かったのは、どうやら駿河はダンジョンに挑むらしい。そのための武器を探しているようだが、本当に大丈夫なんだろうか。正直見た目は普通の青年にしか見えない。


「武器を作るならボムバッファローの毛皮、アラクネの糸、マグナ鉱石が必要ダ。」


 籠手を作りたいらしく、そのための素材を要求する。それぞれの素材の入手はかなり難しいはずだ。ボムバッファローなんかはかなり負傷者を出している。やっぱりもっと簡単な素材にした方が良いか?


「素材取ってきたよ、作ってくれる?」


 …マジですカ。


 意外にもその日に駿河は素材を入手してきた。正直驚きだ。もちろん素材を入手してきたことにも驚いたが、ダンジョンの最下層まで行き、番人のサキュバスと戦って逃げ切ることが出来たということに驚いた。

 サキュバスは魔族に分類される強いモンスターであり、駿河は男性だから逃げるなんてよっぽどの実力がなければ出来ない。どうやら私はこの駿河という男を舐めていたみたいだった。二人の奴隷もそれ相応の強さを持っているとなると、この三人ならば、父の潜ったダンジョンも攻略出来るかもしれない。


 いや、例えそうだったとしても、それを頼めるほどの金も信頼もない。おいそれと話せるわけがない。




 三人が寝床に困ってるみたいなので、私の家に泊めることにした。父と二人暮らしの家なので、あまり広くはないが、私を含めて四人ならば不自由なく過ごせるくらいの広さはある。


 しかし……その、当たり前のことなのだろうか……若い男女が一緒にお風呂に入るというのは……


 先程駿河とティアちゃんとメアちゃんが一緒にお風呂に入ったけれど、なにか間違いが起こったりはしないのだろうか?

あまり誉められたことではないが、つい風呂場に聞き耳を立ててしまう。


「んぅ……!人間、どこ触ってるのだぁ……」


「別に普通に身体を洗ってるだけだろう?それとも何か?変なところに当たってるのか?ホレホレ。」


「ふやっ!?や、やめるのだぁ!そ、そこは……ッ!」


「どこに当たってるのか言葉にして教えてくれ、ほら?どこに当たってるんだ?ん?」


 駿河君!?一体何をいっているんだ!?

 風呂に入っているだけだろう!?生まれてこの方、男性とそういう関係になったことはないが…こんなこと普通しないはずだ!


「ん…あるじ。…いい?」


「おう、いいぞ。よろしく頼む。」


 次はティアちゃんか?一体何を…


「ん……ん……」


「気持ちいいなぁ、流石ティアだ。もっと強く擦ってくれるか?そう、そこだ。」


「ん、あるじのココ……凄い逞しい……硬くて……大きくて……もっとゴシゴシするね?」


「うっ……いいぞ……その調子だ……」


 ホントに何やってるんだぁぁぁぁあッ!?

 背中だよね!?背中を流してるだけだよね!?硬くて大きくてって、ソッチじゃないよね!?


「じゃあティアにもお返ししてあげよう。ほら、ごしごし。」


「ん……あるじ……気持ちいい……」


「ティアは華奢だなあ、背中を流すのにも怖くて力入れられないよ。」


 よ、よかった……やっぱり背中だったのか……い、いや別に最初からそう思ってたけどね?

 はぁ…私なにやってるんだろ。部屋に戻ろう……



「ふぃー、いいお湯だった。ありがとうな、ニーア。」


「ン、気にしないでくレ。」


「ん?どうした、ニーア。顔が妙に赤くないか?」


 風邪かな?それならネギを持ってこないとな、確か首に巻くのと、お尻に刺すのがあったけど、どっちがいいのだろう?


「そんなことはないゾ!わ、私も風呂に入ってくル!」


「お、おう。行ってらっしゃい。」


「なぁー人間、そろそろ寝ないかー。」


 メアよ、お前は自由だな……そういうところ嫌いじゃないよ。


「あるじ…明日は…サキュバス倒すの…?」


「あーどうしようかな。むしろ仲間にしてやろうか。」


「無理に決まっているだろう、人間。どうやって仲間にするのだ。」


「奴隷にしたりとか。」


「そういえばこの人間は魔族を奴隷に出来るんだった…」


 はは、その節はどうも。これからもよろしくね。









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