第55話俺とメアが二人きりならばっ!
「ここが私の部屋ダ。入ってくレ。」
ニーアについていき、廊下の突き当たりに扉があった。中に入ると、シンプルな見た目の部屋で不必要なものはあまり置いていないようだった。
「あまり女の子みたいな部屋じゃないだロ?」
「あーいや、そんなことはないと思うが…」
「気にするナ。私も自分でそう思っているから。そこの棚を開ければ布団があるから、自分の分を取り出してくれ。」
ニーアが部屋の隅の押し入れを指差してそういう。今まで泊まった宿屋は全てベッドだったけど、布団もいいな。そもそも日本にいた頃はベッドではなく布団で寝ていたし。
「ここから取ればいいんだなー!?」
「そうダ、それと食事を作ってくるガ、なにか食べたいものはあるカ?」
「悪いな、簡単に作れるものでいいから…」
「我は肉がいいぞー!」
「相変わらずだな、メア。」
「ん?なんだ人間?」
なんでもねーよ。もう肉単体で食べろよ。ほら、ボムバッファローの肉残ってるし。
「じゃあ作ってくるヨ。待っててくレ。」
「おう、よろしく頼む。」
「ニーア姉さん肉を頼むぞー!」
「ん…ティアも料理…出来るようになりたい…」
ティアが両手の人差し指を突っついて呟く。
「別に出来なくても料理魔法があるだろ?」
メアが料理魔法が使えるのだからもう料理をする必要はないのだ。
「料理魔法…?なんだそレ?」
「え?料理魔法ってあるだろ?メアが使えるぞ、なぁ?」
「ん?そうだな!我の自作魔法だ!」
「えぇ!?」
マジかよ!なんだこいつ、時々天才なんだなって思うよ!なに?魔法ってそんな簡単に作れるものなの?なわけないだろ!
「メアちゃんは凄いんだナ。料理魔法なんて聞いたことがないヨ。」
「ふふん!もっと誉めてくれてもいいんだぞ!」
「調子に乗るなって。ニーア、あんまり褒めるとこうなるから、褒めすぎない方がいいよ。」
鼻を高々と伸ばしているメアを横目にニーアに注意する。ほら、メアが小躍りしてるぞ。ちょっとかわいいじゃねえかおい。
「じゃあまア、料理を作ってくるけド、ティアちゃんもくるカ?」
「ん…いいの?」
「あア、構わないヨ。こっちに来てくレ。」
「あるじ…」
ティアがこちらに許可を求めるような視線を向ける。正直料理ができる必要はないが、あって困ることではない。
出来るに越したことはないのだ。それにティアがしたいと思うことならやらせてあげたい。
「おう、行ってこい。」
「なにー!?ティアが料理するのかー!?じゃあまず火炎魔法と氷結魔法を覚えなきゃな!」
「メア、料理魔法をするわけじゃないからな。あとそんな物騒な魔法の応用だったの!?」
火炎魔法とか氷結魔法って明らかに上級魔法じゃないか!火魔法とか水魔法とかの段階を踏めよ!
「キッチンはこっちダ。」
「ん…いってきます。」
ニーアとティアが出ていき、メアと二人きりになる。メアは寝転んで暇をもて余してるようだった。
「二人きりになったな、メア。」
「ん?そうだな。」
メアはそれがどうしたと言わんばかりに目をこちらに向けることすらしない。どこから持ってきたかは知らないが古い本のようなものを読みふけっている。
「なぁ、暇じゃないか?」
「それは人間だけだろう。我は魔法の勉強で大変なのだ。」
持っていた古い本はどうやら魔法の本だったようで、勉強をしているみたいだった。ひどい!俺よりそんなほこりっぽい古本の方がいいっていうの!?
「……」
無視!?くっそ…メアのくせに…
「なあメアー。暇なんだよー。かまってかまって!」
ティアが行っちゃっておれは寂しいんだ。いつもティアが俺の話をずっと聞いてくれてるから暇をもて余すことがないのだが。
「…なあ人間。」
「お!なんだなんだ!?」
俺に出来ることならなんでもしよう!ほら!はやく!暇なんだよ!
「人間は…この世界の人間か?」
「whats?」
「ワッツ?それはどういう答えなのだ?否定か?肯定か?」
いきなり核心ついてくるじゃねえかコイツ。つい俺の英国本能が働いちまったよ。日本生まれで海外に行ったことすらないけど。
「なんでそう思う?」
「んー…なんとなく?他の人間やエルフとかと違う感じがする。突然変異とか、生まれの問題じゃなくて、根本から変な感じだ。」
「お前は変なところで鋭いな。」
そんなことが分かるのか?メアだから気付いたっていうならいいけど、見てわかるものなのだろうか。
「まあ、異世界から来たっていうのが、正しいわな。」
「えぇ!?人間は異世界から来たのか!?」
「いやなんで驚いてんだよ…指摘してきたのはお前だろ?」
「いやまあ、そうなんだが…まさか本当にそうだとは思ってなかったのだ。」
真顔で言うから気付かんかったわ。まあ一緒にいる以上いつかバレただろうし、いいけどさ。
「異世界ってどんなところなんだ?」
「んー…そうだなぁ。ここみたいに魔物とかいうモノは存在しなかったな。そもそも魔法がない世界だったから。」
「そうなのか!?不思議だな…だったらなんで人間は魔法が使えるのだ?」
「あー多分、ここにくる前に会った神様に貰った…のかな?」
ここにくる前に会った神様、つまりはクロエのことだ。ステータスを作ってくれたのもクロエだったしな。
「神様に会ったのか…?」
「そうだ、クロエって名前だったぞ。」
「クロエって…創造神様の名前じゃないか!?本当なのか!?」
創造神って、そんなこと言ってたような言ってなかったような…ていうか有名なんだなやっぱり。
クロエっていう名前が伝わっているんだから、やはり神様なんだな。あんな可愛い感じなのに。
「まあ、それ以来会ってないけどな。」
この世界に来てからは会っていない、というか会う方法すら知らない。久しぶりに会いたいものだ。
「……それが本当なら、教会に行って祈るなりなんなりしたら会えるかもな。」
「祈るなりなんなりって…適当だな。」
「だって我魔族だし、ほぼ正反対の立場だからな。」
自分の頭から生えている角を撫でながら呟く。
「ふぅん…まあ試してみる価値はあるか。」
クロエと話せるなら話したい。この世界に連れてきてくれたお礼を言いたいからな。あと一応元の世界に戻る方法も知りたい。
「ぐぅ…お腹が減ってきたぞ…」
「だな。そろそろ俺も減ってきた。」
「……」
「……」
やばい、会話することがなくなってしまった。メアは本を読めるからまだ良いかもしれないが、俺は手持ちぶさただ。めっちゃ気まずいねんやけど。
「な、なぁメア。」
「…なんだ?」
「ピザって十回言ってくれ。」
なにも思い付かないから適当に問題を出してみる、ポンコツなメアは引っ掛かるだろう。
「ん…ピザピザピザ………ピザ!」
「じゃあここは?」
「クルイエティ・スロンクリア。」
「クルイエティ・スロンクリアッ!?」
なに!?この世界では肘はそんな物々しい名前で呼ばれているの!?
「まて、じゃあ次はそうだな。シャンデリアって十回言ってくれ。」
「シャンデリアシャンデリアシャンデリア……」
「リンゴを食べてしまったのは?」
「我。」
「そうだった!この世界にシンデレラなんていなかった!ていうかお前リンゴ食べたの?この世界にもリンゴあるんだ。そういえば王都の露店にあった気がするわ。」
「シンデレラ…?なんで2代目魔王の名前が出てくるんだ?」
「魔王様がシンデレラだったの!?なにそのラノベにありそうな設定!?」
いやあったら絶対コメディだろうけどさ!感動とか欠片もなさそう!めっちゃメルヘンやん!
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