第54話俺が鍛冶屋に戻ったならばっ!

 俺はトバリのダンジョンから抜け出し、ニーアの鍛冶屋に戻ってきていた。


「で、サキュバスから逃げてきタ…ト?」


「そういうことだっ!」


「なんで胸を張って言ってるんだ…」


「素材はあるかラ、籠手は作れるゾ。」


「よろしく頼むよ、ニーアさん。」


 籠手があればどんなやつが相手でも手が痛くならないぞっ!モンスターだってまあまあ硬いから殴ったら逆にこっちが傷付くんだよ。


「さて…ニーアさん。」


「なんダ?」


「ものは相談なんだが…頼みたいことがあるんだ…」


「なあティア、なにか頼むことなんてあったか?」


「ん…なんだろう…?」


「今夜泊めてくださいっ!」


「流れるような土下座っ!?」


 仕方がないだろう!?この街は冒険者が多くて空いてる宿屋が見当たらなかったんだ!…だから決して褐色幼女の家に泊まりたいわけじゃあないんだ!褐色貧乳カタコト幼女の家に!!


「今私、貶されたのカ?」


「ん…あるじがごめんなさい。」


「人間がすまなかった。こいつはもう…先が長くないから……っ!」


「なぜ謝る!?あとメア、勝手に俺を殺そうとするなっ!!」


 まだこの世界に来て一ヶ月と経ってないんだぞ、それに彼女も出来てないしな!


「泊まるのカ…うン、いいゾ。」


「本当ですか!?」


「あァ、父がいなくて寂しかったところなんダ。」


「そう…だったな。」


 ニーアのお父さんは一ヶ月前にダンジョンから帰らなくなったらしい。


「ん…今日は…楽しくお泊まり…」


「そうだな!よろしくなニーア!」


「じゃあ今夜はお世話になるよ。」


「うン、じゃあこっちに来てくレ。部屋に案内するヨ。」


 ニーアは座っていた座布団から立ち、寝食をしている部屋へ案内してくれる。

 正直ダメだと思ったが、どうやら寝床は決まったようだ。良かった、このままだとまた野宿みたいになるところだった。ニーアさん優しい人だよ。


「なあニーアさん。」


「なんダ?というかもうニーアでいいゾ。」


「そうか、悪いな。じゃあニーア。」


「ン?」


「ここ、かなり広いけど…一人で住んでるのか?母親は?」


「そうだナ、母親は今は故郷の方にいるヨ。一人で住んでることになるかナ。」


「そうか、それじゃあ俺が寂しさなんて吹き飛ばしてやるからな!」


「フフ、楽しみにしてるヨ。」


 俺の右手が撫で撫でしたくて疼くぜ…はて?変態?可愛いものを愛でることのなにが悪い。


「無駄にかっこつけてるけど、あれ、さっきサキュバスに誘惑されて動けなかったんだぜ。」


「ん…かっこいい…」


「ティアはなんの魔法に掛かってるんだ…解呪魔法でも使うか?」


 恋の呪いか…ふっ…俺の美しさが憎いぜ。


「うん、憎いよ。その腐った根性が。」


「さっきから酷くない!?」


「酷い?あぁ、顔が?」


「ティア聞いて!メアが辛辣なの!!」


「ん…メア…め!」


「女々しいのだ人間っ!!ティアを使うのはズルいぞ!!」


「ふはは!ティアは永遠に俺の味方なんだよう!!」


「この…ロリコンめっ!!」


「ロリコンはやめろぉっ!!」


「フフ、本当に騒がしいナ。」


 ニーアがクスクスと手を口に添えて笑いを漏らす。俺たちがうるさくしすぎたみたいだ。


「すまん、うるさかったか?ほら、謝れメア。」


「我なのか!?我が悪いのかッ!?」


「ん…謝る…大事。」


「ティアもなのか!?味方がいないのだぁ!!」


「おいおイ、あんまり虐めてやるなヨ。可愛そうじゃないカ。フフフ、本当に仲が良いんだネ。」


「に、ニーア姉さんなのだっ!!」


「ニーア姉さん!?」


 メアがニーアに抱きついた!おいやめろ!その絵面は俺に来る!主に俺の鼻にくる!!


「フフ、困ったナ。私も妹が欲しいと思っていたガ…大きい妹が出来てしまったナ。」


 なんだこの包容力、メアを抱き締め返しているのを見ているとまるでお母さんや!!でも背丈がどっちも同じくらいだからめっちゃ微笑ましい…写真を撮りたいっ!!(血涙)


「…鼻血も出てるぞ人間!?」


「ン…ティッシュ…あるかナ?」


「俺は幸せだ…」


「ん…めでたしめでたし…」


 鍛冶屋の廊下で何してるんだろうか、俺たちは。




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