メアが料理を出来るならばっ!

 次の日になり、タンタさんにも別れ告げて今日俺たちは王都を出る。

 いろんな人がいた町だったが、誰もが愉快な人たちで元の世界ではありえない経験を積めたと思う。


「じゃあな!俺の初めての町!!」


「なー人間、何故建物に向かって話してるんだ?精神がどうにかなったのか?」


「怖いこと聞くな、いいだろべつに。」


 朝もはやいうちに俺たちはでかい門を通り抜けて、シュロンを目指す。ダンジョン制覇をして強くなるぞー。


「ほら、走っていくぞ。3日で着いてやる。」


「ほんとだったら7日掛かるんだろ?全力ダッシュかよ!」


「ん…がんばる…」


「まあまあ、出きる限りな。」


 速く行けることに越したことはない。最悪お姫様抱っこしてやるよ。


「ん…ティアは…?」


……おんぶかな。





 ギルド証の誘導を頼りに平原を駆け抜ける。途中馬車が走っていたが横を通り抜けると中のおっさんが怪物をみたような目で驚いていた。


「よしよし、結構速く着けそうじゃないか。まだ大丈夫か?」


「ん…いける…」


「はぁ…なんで人間もティアもそんなに息が切れてないんだ…」


 そんなこと言いつつ着いてきているのは流石魔族さんだ。


「お!あれは…猪か?」


「デストロイハードボアか!?」


「なに?メア知ってんの?」


「知ってるぞ!魔界のなかでも美味しいと評判だ!くっそ強いけどな!」


「へぇ、静かに草をむしゃむしゃと食べてる姿からは想像できないな。」


「ん…あれ…ちがう…」


「え?違うの?」


「普通…ベアーボア…そんなに…強くない…」


「メア?違うって。」


「む?そうなのか?うーん……あ、ほんとだ。良く見たらそんなに大きくないぞ!それに色も違った!」


「形でしか判断できないのな。アホ毛が輝いてるぞ。」


 近寄って倒してみる。まだまだ倒した魔族って少ないからな。俺が過去に一番殺してるのは明らかにスライムだけど。


「よっし!一瞬で終わらせるぞ!」


 ベアーボアとやらに対峙して拳を握る。そういえば武器なんて買ってなかった、まあ武術の才だしな。シュロンに着いたら籠手でも買って戦おう。


「サンダーボルト!!」


後ろから叫び声が聞こえて目標のベアーボアが一瞬で黒こげになっていた。もう息はしてないだろう。


「あれ?メア?」


「ん?これ食っていいだろー?我が倒したから!」


「あーうん。どうぞ。」


 そういえばこいつは魔族のエリートだった。確かサンダーボルトって前に俺にも使ってきた技だったよな?え?それを俺に撃ってきたの?


「ぶぇ!なんだこいつ!苦いぞ!」


「ん…焦げてる…から。」


「なんだ、やっぱりアホの子か。」


 良く見るとメアのアホ毛がピコピコ動いてる。まさかあっちが本体なのか!?




 それからもベアーボアだったり良く聞くゴブリンとかもいたりしたが苦戦とかはするはずもなく、サーチ&デストロイの要領で全て倒しに倒していった。


「よし、暗くなってきたし寝るか。ほれ、寝袋だ。」


 ずっと走っていて疲れたからな。もう休もう。さて、食べ物をどうするかだけど…まあベアーボアを狩ってるからそれを焼けばいいか。


「ちなみにこの中で料理が出きる人~?」


 俺は料理は出来なくもないが、得意でもない。フライパンや鍋とかもないこんな平原のど真ん中で作れるはずがない。


「ん…ごめんなさい…」


「我は出来るぞ?」


「そうか、やっぱり奴隷の中でも家事奴隷とかを買えばよかったかなー。こんなところで出来るかは知らんけど。」


「おい!我は出来ると言ってるだろ!」


「は?メアが?まさかそんなことがあるわけ…」


「見てろよー!このベアーボアしっかり料理してやる!!」


「ほーう。見せてみろや。出来たら頭撫で撫でしてやる。」


「…それ勝つ意味がないじゃないか…」


 メアはそう言いつつもベアーボアに体を向けると目を閉じて魔法を使い始めた。


「んー!こう!」


「がんばれーがんばれー。」


「もう出来たぞ?」


 は?なにを言ってるんだこの子は…そんなわけ……いや待て、良い匂いがするぞ。まるでステーキを焼いたかのような……


「おいほんとにできたのか!?」


「うむ!これを見ると良い!」


 メアが避けるとそこにはでっかい肉が湯気を立たせてそこにあった。


「おいおい……マジかよ。」


「ん…メア…すごい…」


「へへーん!参ったか!人間!」


「おう!思いっきり地面の上だけどな!」


「あぁ!これでは食べれないではないか!!」


 やっぱりアホの子や!この子やっぱりアホの子だったんや!まあでっかい肉だからな、俺の膝くらいまでの太さがあるし、上の方だけ食べて後は置いておいたら他の動物が食べてくれるだろう。


「それにしてもこれどうやったんだ?」


「ん?料理魔法だぞ!」


「そんな魔法もあるのか。なんでもありだな魔法。」


「ん…すごい美味しい。」


 恐ろしく速い食事…まだ頂きますも言ってないのに…俺でなきゃ驚いてるね。


「よし、俺たちも頂くとするか。ありがとうなメア。よしよし。」


「えへへーなのだ!我に任せるのだー!!」


 最初は嫌がってたくせに褒めながら撫でると素直に喜ぶ辺り純粋な子どもみたいで可愛いもんだ。


よしよしよし…


よしよしよしよし…


よしよしよしよしよし…


「だぁー!邪魔で食べれないのだ!!」


「おぉ悪い。メアの髪の触り心地が凄い良かったから。」


「…ほら、人間も食べろ。食わなきゃ我が全部食べるぞ?」


「あれ?あれあれ?もしかして今デレた?先輩今デレました!?」


「う…うるさい!!速く食べるのだ!!」


 やったー!やっとメアがデレてくれたぞー!長いこと時間は掛かったがやっと俺に心を開いてくれたぞ!


「んなわけあるか!」


「読心術!?」


「…もぐもぐ…」


 ティアさんは食事中、周りに目を配らずにひたすら食べるよね。俺の分も残しといてね?


「てゆうかなんでこんな魔法覚えてるの?」


「ん?美味しく食べたいからに決まってるだろ?食べるなら美味しい方がいいからな!」


「メア…お前凄いけど残念だな…」


「褒めるか貶すかどっちかにしろ!」




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