俺が王都を出るならばっ!
「えぇ!駿河さんこの町を出ていくんですか!?」
「うん、ダンジョンとかで無双したいなって。クロノスさんにも伝えておいてくれ。話せて良かったって。」
俺は町を出ていく旨を伝えるべく、サラのもとを訪ねていた。相変わらずの美しさである。この調子じゃあもう誰かの許嫁になっているんだろう。
「そんな簡単に無双って言葉出てこないですよ…じゃあもうこの街には?」
「いや、しばらく旅して帰ってくる。まあ何日何ヵ月掛かるかは分からないけどな。」
ここには沢山?の友達ができたし、戻ってくるつもりではある。ティアと俺の出会いの町だからな!
「そうですか…元々旅の途中でここに寄ったんですものね。」
「え?なんのこと?」
「最初に会ったとき言ってましたよね?」
「あー……あぁ!そうだった!そういう設定だった!」
「設定?」
「そんなことはどうでもいいんだよ。それよりダンジョンがある町ってどこだ?」
「知らずに言ってたんですね…凄いんだか凄くないんだか…」
「許せ、俺は慌てん坊なんだ。」
「なんでドヤ顔なんでしょう…確かここから一番近いのはシュロンという町ですね。ダンジョンもまだ攻略されてないところが沢山あります。」
シュロンか。攻略されていないダンジョン…そこを無双してハーレムを作る…そう!これこそが異世界転移の本懐!
「シュロンは有名なところなのか?」
「そうですね…ダンジョンで有名なのは確かです。向こうについたら多分説明してくれると思いますよ。」
「そうか、分かった!色々ありがとな!」
思えばこの世界に来て初めて会った女の人はサラだった気がする。キャランさんにもここまで来るのに助けてもらったし…お礼をしたいもんだ。
「なぁ、お礼とかしたいんだけど何かないか?俺に出来ることならなんでもやるぞ?」
「…なんでも?それは本当になんでもですか?」
「ごめんやっぱり出きる限りの範囲で。」
「ふふ、私はなにもしていませんよ?」
「そんなことはないぞ、サラのお陰でこの街に来れたし、ティアだってサラのお兄さんが戦いを仕掛けてくれたから金をぶんどって買うことが出来たんだ。」
「その節は申し訳ありません…後で叱りつけておきます…」
「いや助かったって言ってるじゃん?お兄さんを許してあげて?」
何気にサラはお兄さんに対してドライだからな、逆にあれでなんでお兄さんはサラのことが好きなんだ…Mなのか?
「で、お礼は何がいい?すぐ出来るもので頼む。」
「そうですね…じゃあ目を瞑っていてください。」
目を瞑る?そりゃあそれぐらいお安いご用だが…なんだ?なにをするつもりなんだ。もしかしてあれか!かくれんぼか!?仕方ないなぁお兄さんが見つけてあげよう…
「んっ…はい、終わりました。」
「ひょっ?」
あれ?なんだ今の頬に触れた感触は…まるでふるふるのプリンを頬にくっつけたような……
「もう目を開けていいですよ。」
「お、おう。なんだいまの?」
「ふふ、気にしないでください。じゃあ駿河さん、次の町でも頑張ってくださいね。駿河さんならきっとすぐに有名になるんでしょうね。」
「サラ?平坦な声だけど顔はものすごく赤くなってるぞ?」
「わ、私のことは良いんですよ!速く旅にいってください!」
「いや旅に出るのは明日からだけどね。」
これ以上邪魔するのも悪いのでおいとまする。ギルドに一回戻ってギルド証に道を登録してもらいにいこう。
「お、ヤドン。ここにいたか。」
「あれ?スルガじゃねえか!久し振りだな!元気にしてっか?」
ギルドに戻っている道中に、道端の露店を見ているヤドンを見つけたので話しかける。ちょうど良い、話しておこう。
「駿河さん!久し振りです!ピオネです!覚えてますか?」
「おぉ、駿河殿。ライだ。久し振り。」
ドラゴン退治の時のパーティーが丸々揃っているみたいだ。
「久し振りだな、ピオネさんもライさんも元気そうでなによりだ。」
「俺は?なんでそこに俺の名前は入ってないんだ?」
「あぁ、なんて名前でしたっけ?」
「さっきお前から話し掛けて来たよな!?ヤドンって呼び掛けてきたよな!?」
元気な奴だ。テンションが高くて鬱陶しいぞ。
「そうだ、俺この町から出ていくわ。」
「なんだ急に、なんかあったのか?」
「いや、ダンジョンとか攻略してみたいなって思ってな。」
「そんなちょっとお洒落してみたいなってノリでダンジョン攻略を語るなよ…ダンジョンっていうと、シュロンか?」
「あそこはたくさんダンジョンありますもんねー。私も行ってみたいですー。」
「しかしスルガ殿ならダンジョンを簡単に攻略してきそうで怖いな…」
「余裕ですよライさん。俺とティアとメアがいればな。」
「メア?そういえばお嬢ちゃんがいねえな?もしかして嫌われたか!?あはははは」
「は?殺すぞ?」
「ハハハハ……冗談です。」
「ヤドンはどれだけ駿河さんに弱いんですか…まあ怖いですけど。」
怖い?俺が?そんなわけないだろ。こんなに優しくて紳士的な男性を俺は見たことがないぞ。コワクナーイ。
「まあ、そういうことだ。ヤドンたちはもうこの王都に住んでるのか?」
「いや、俺たちも宿に住んでるけど…今は王都で満足してるかな。」
「そうか、じゃあしばらくは会えないな。俺は行くよ、またな。」
「おう、元気でな。死ぬんじゃねえよ。」
「ばいばい駿河さん!」
「達者でな。スルガ殿。」
「そう簡単に死んでたまるかよ。お前らも死ぬなよ。」
ヤドンたちと別れて再びギルドに向かう。この街には優しいやつらが多くて離れるのも考え直したくなってきた。
ギルドに着くとちょうどノノさんが受付で暇をしていた。
「ノノさん、また来ちゃいました。」
「あれ?駿河さん。もしかして忘れ物ですか?」
「忘れ物って言うか、まあそんな感じだ。シュロンの町への道を登録してほしいんだけど…」
ギルド証を取り出してノノさんに渡して頼む。便利なもんだよギルド証は。どういう仕組みか知りたいもんだ。
「良いですけど……シュロン行きの馬車とかありますよ?」
「あー…いやいい、走っていく。」
「走る!?そりゃ7日あれば徒歩でも行けると思いますけど…」
「そんなにかかるのか?まあなんとかなるさ。」
「はあ…まあ頑張ってください。登録しときましたよ。どうぞ。」
「おう、ありがとな。じゃあまたな!」
「はい!あの…頑張ってくださいね!」
「おうおう!余裕のよっちゃんタコのたっちゃんさ!」
「それはよくわからないですけど。」
滑ったぞ!俺の面白センスによるギャグが滑った!不思議だ…これが異世界か…
宿に戻ってきて部屋に入る。中ではメアがベッドで寛いでいてティアは何故か円を描くように歩き回っていた。
「ただいま。ティア、メア。」
「ん……!おかえり…!」
「おー、人間かー。おかえりなのだー。」
ティアが急いで立ち上がり駆け寄ってきた。
「おーどうしたティア。よしよし。」
「あるじが…ひとりで…心配だった…」
「うん俺もう16歳だからな?」
ティアの中で俺はどんなご主人様になってるんだ…
「そうだ、お前ら。明日からこの町を出るぞ。」
「ん…わかった…」
「おー!我も飽きてきたところだ!何処へいくんだ?」
メアが寝返りをうってこちらを振り向く。ちなみにメアは今ワンピースを着ていて見ようによっては多分パンツが見える。もうちょい左…
「シュロンという町だ。ダンジョンに潜ろうと思う。」
「ん…ティアは…あるじに着いていく…」
「ダンジョン!久々に腕がなるぞ!」
魔族としては破壊衝動的なのがあるのかもしれない。鬱憤張らしにいこうなー。
「ちなみに走りだぞ。7日間」
「は?意味が分からないんだが?」
「ん…走る…」
「メアは別に嫌なら走らなくても良いぞ?」
「そうなのか?じゃあ我は走らないぞ!」
「そうか、分かった。じゃあ一人でこの街に残ってくれ。俺とティアは二人で行くから。」
「そういうことなのか!?じゃあ行くのだ!一人は嫌なのだ!!」
ふはは、可愛いやつめ。仕方ないから連れていってやろう!!
見てろよ新天地!俺が無双してやるぜー!
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