ティアが笑顔じゃないならばっ!

「ふんふんふーん。牛乳って意外と美味しいな!人間は毎日こんなのを食べているのかー?」


「まあそうだな。俺はファ◯タグレープとか大好きだけど。」


「そうなのか、食べてみたいなー!」


 この世界にはないはないと思うけど、もしあったら一緒に飲もうな。あと食べ物じゃないぞ。


「ほら、部屋に戻ってきたぞ。入れ。」


「おー!やっと寝られるのだー!」


「ん…。」


「俺は今からでも空いてる部屋がないか聞いてくるよ。流石にベッドに3人は狭いだろ。」


 入り切れないこともないがメアにそこまでなつかれていないし、俺の寝相が悪かったらどっちかを落としたりすることもあるかもしれん。


「ん?一緒に寝ないのか?」


「いや当たり前だろ?メアだって出来るなら俺と一緒は嫌だろ。」


「それはまあ…そうだが……なんだお前は。我は奴隷なんだぞ?そんな扱いなのか?奴隷というのは。」


 自覚あったのか…最初こそ泣いてたけどすぐに立ち直ってさっきは俺の財布を奪って牛乳飲んでたくせに。


「ん……あるじは…そんな…ひと…」


「変なやつだなー!」


「まあそれ相応の扱いをしてほしいならしてやらんこともないぞ?抱き締めてやるよ、ほら。」


「いらん!」


「ん。」


「おぉ、珍しいなティア。よしよし抱き締めてあげよう。」


「ん…ぎゅう……」


 珍しい、ティアが甘えてくるなんて。俺からいくことはあってもティアから来ることはあんまりない気がする。よしよし、頭も撫でてやるぞ。


「我はさっさと寝るぞ。」


「はいはい、おやすみ。」


「おやすみ…?いただきますと同じ感じか?」


「あー…うんもうそれでいいや、おやすみ。」


「おやすみなのだ、ぐぅ。」


 実際この子は頭が弱い子なのかもしれない。というかアホの子か。あ!よく見たらコイツアホ毛が生えてるぞ!


「じゃあティア、俺は部屋を探してくるからメアと仲良く寝ていてくれ。」


「ん…いや……」


 ティアが足にしがみついてくる。ほんとにどうした、ティア。珍しいというか心配になってくるぞ。


「そうは言っても、三人じゃ狭いだろ?ティアを蹴飛ばしたりするかもしれんぞ?それ以上のことだって…」


「……あるじはそんなこと…しない。」


 いったいこんな俺のどこをそんな信用してるんだ…俺の寝相とか、見たことないけど別に良くもないと思うけどな。


「…いっしょに……寝よ?」


「ぐはっ!?」


 首を傾げてお願いすればなんでも叶うと思うなよ!……まあ今日は譲ってやる。こ、今度は負けないんだからねっ!


「じゃあ寝るか。明かりも消すぞ。」


「ん…分かった。」


 ランプの明かりを落として寝る準備に掛かる。ベッドに入ってみるとメアがだらしなくよだれを垂らしながら寝ていた。まったく、締まりのない顔しやがって。撫でてやる。


「ぐぅー……ぐがー…んぅ…ガブッ!」


「いった!?コイツ眠りながら噛んできやがった!?」


「…んしょ…んしょ……」


 ん?何をしてるんだティア?なにか変な音が聞こえるけど…暗いからまったく姿が見えない。


「ほら、早くベッドに入ってこい、ティア。」


「ん…いまいく…」


 いそいそと布団をめくりながらティアが入ってきた。ティアの方を見てみると、それはそれは美しい裸の幼女が……


「なんで全裸っ!?」


「ん…だめ……?」


「いやダメっていうか!ここ部屋だよ!?風呂場じゃないよ!?」


 お風呂回はもう終わりだよ!しばらくないよ!?


「ん…知ってる。」


「どうしたんだティア。さっきからなんかおかしいぞ?なにかに必死みたいだ。」


 普段からなにかと隙が多いティアだけど、ここまで隙というか、もはや包み隠さない体はもう犯罪的だ。変態なら襲い掛かってるぞ!


「ん…ぼうじ……も……おしごと…?」


 ぼうじ?ぼうじってなんだっけ?……ぼうじ……帽子?防止……ぼうじ……房事?え?房事なの?


「ななな!なにをするつもりなんだ!?」


「……ぼうじ。」


「まて!待ち過ぎてくれ!本当にどうしたお前!なんかおかしいぞ!」


「ん……ティアじゃ……だめ?」


「そんなことは言ってないが…流石に幼女に手を出すってのは……」


「やっぱり…メアが…いい?」


「メアも幼女だろ!」


 なんだ、ティアはいったいなにがしたいんだ。俺をおちょくりたいだけなのか?そういうお年頃なのか?


「悩み事でもあるのか?相談に乗るぞ?」


「…そういう、わけじゃ…ない。」


「じゃあなんなんだ…教えてくれ、ティア。俺たちの間で隠し事はやめよう。」


 信頼関係ってのはまずはそこから始めるもんだ。秘密を共有することで信頼を築くのだ。


「ん…いわなきゃ……だめ?」


「あぁ、ダメだ。いやどうしてもダメっていうならいいけど……教えてほしいなぁ…」


 無理無理、ヘタレちゃうって。無理やりは俺の流儀に反する。何をするにしても双方合意の上じゃなければならない!でも教えてほしい。ティアの不安は解消してあげたい。


「ん…あるじ……ティアを……すてない……?」


「……は?」


「メアが……来たから……ティアは……いらない?」


「……前も言った気がするがそれはない、ありえない。」


「……でも……ティアは……ダメな子……」


「何をいってるんだ?ティアがダメな子なら俺はなんだ?ゴミの子か?そんなわけないだろう。なんでそうなる。」


「だって…メアの方が…ティアより強い……それに……ティアのせいでへんな貴族に襲われたり…ティアはバビロニアだから…迷惑……かけて…」


 ティアの瞳から小さい光がぽろぽろと流れる。

 バビロニアとか、まだ気にしてたのか…俺はそんなの気にするわけがないのに。


「だから…ティアは…ティアは…」


「ティア!」


 グッと抱き寄せて頭を撫でる。変態とか言わせねーよ。


「俺が迷惑とか一度でも言ったか?言ってないよな。そんなこと言ったやつは俺がぶっ飛ばしてやる。」


「ひぐっ……ひぐっ……」


「バビロニア?大歓迎だ。神の末裔?かっこいいじゃん。ティアのことを虐めるやつがいたら俺がいくらでもぶん殴ってやる。武術の才舐めんな。」


 ティアを泣かせるのはこれで最後にしたいもんだ。幼女の泣き顔なんて、興奮するだけじゃねえか。


「だからなティア。俺がお前を要らないなんて思うわけがないんだよ。心配なら一杯甘えてくれ。一杯苦労をかけてくれ。誰よりも、何よりも、俺が一番信頼してるのはお前なんだよ。ティア。」


「……ん……ひぐっ……わかった…あまえる……ひぐっ…」


「よしよし、好きなだけ今は泣け。でも明日からは泣かさないぞ?俺は笑顔が大好きだからな。」


「ん…いっぱい…ひっ…笑顔…する…!」


 そうだ。それでいい。笑顔が一番だ。隣で寝ているメアみたいにな。てゆうかコイツ、ここまで大声で話してるのになんで目が覚めないんだ?熟睡じゃねえか。





「ふぅ…寝れなかった。」


 今俺の両腕には二人の幼女が乗っている。羨ましいか?残念だったな。この場所は俺専用だ。

 ちなみにあのあとはティアは泣きつかれて寝たみたいだけど、ティアが裸だったり、よく見ればなぜかメアも裸で目が覚めてしまい寝ることは叶わなかった。

 正直俺の下半身はエマージェンシーコールを発令していた訳だが、問題ない。なにも問題ない。


「んぅ…ん…あるじ…おはよう…」


「ぐがー…くごー…ん?家じゃない…は!ここはどこだ!」


「はいおはようティア。ああ、メア。ここは宿だぞ。」


「なに!?夢じゃなかったのか!?」


「夢オチとはいかせねえぞ?」


「我は今日も奴隷なのか…」


 今日っていうかこれからしばらくはずっと奴隷のままだよ。


「あるじ…あたま……なでて……?」


「お?わかったわかった。こっちおいで。」


「なにー!ティア!警戒するのだ!危ないぞ!」


「なんもしねーよ。そんなこというやつには絶対やらないからな。」


「ん……あるじの……なでなでは……ティアだけの……もの…」


「よしよし、そうだよなー?」


「むう……なんなのだこの疎外感は!やっぱり我もいれるのだー!」


「ん……だめ……あるじは……わたさない……」


「まあまあ、順番だ順番。」


 ティアもどうやら元気を取り戻したみたいだ。よかったよかった、これで一件落着だ。めでたしめでたし!




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