第33話俺が名案を思い付くならばっ!

「では、ここで待っていてくれ。おい、客に紅茶を。置いてある菓子もよければ食べていてくれ。」


 クロノスさんに着いていき、城までいくと応接間のようなところに案内され、待つように指示された。目の前のなが机にはメイドさんが持ってきてくれた紅茶とお菓子が置いてある。


「しかしあれだな…こういう応接間みたいなしっかりとしたところに通されるとすこし緊張しちまうな…」


 日本での人生においてこんなところに来ることはまずないだろう。あまりの緊張からか、俺の持っている紅茶のカップはマグニチュード7.5くらい記録している。


「あるじ…?だいじょうぶ?」


「おう。大丈夫だ。こうやって手を震わせることで力を強くしようとしてるだけだ。」


「それで力が強くなるの…?」


「……」


 一瞬の間が空き、これ以上は耐えられないのでティアの口元まで置いてあったクッキーのようなお菓子を持っていく。はむはむと口いっぱいに頬張る姿はハムスターを連想させてつい可愛さに俺の口元も緩んでしまう。


「はむはむ……」


「もうあれだな。ティアはもはや俺の精神安定剤だな。」


 日本で同じ事を言ったら多分偉い人のお世話になる言葉を並べて俺はティアの頭を撫でた。


「失礼します。」


 俺たちが入ってきた扉と反対の扉からノックが聞こえて、一間を置いて聞いた覚えのある声が聞こえた。


「はいどうぞ。」


「こんにちは、駿河様。」


「こんにちは、悪いな忙しいなか呼んでしまって。」


「いえ、構いません。ところでそちらのお二方は?」


 キレイな動作で目の前のソファに腰を下ろし、俺の膝の上のティアと隣のメアに視線を配りながら聞いてくる。


「あぁ、そうだ。初対面になるんだっけ。この子はティア。そしてこっちはメアちゃんだ。」


「はむはむ……」


 いつの間にか俺の膝の上に座っているティアはボロボロとお菓子を俺の膝に落としていく。おいおい、全く。あとでしっかり掃除しなきゃな?


「ティア様とメア様ですか?片方は寝ていらっしゃいますが…そんなに幼い子が駿河様とどういう…………は!まさか!」


「お子さんですか!?」


「いや変態じゃねぇ…まさかのお子さんッ!?」


 いつもの流れ的に変態って言われるのかと思ったら違った!まさかの子どもに間違えられる!!天然か!!!


「んなわけないだろ…それに俺の子供ならティアが生まれたとき俺は3歳くらいだぞ。」


 そんなに老けて見えたか?一応これでも高校生なんだがな…


「も、申し訳ありません。ではどういう?」


「俺の奴隷だよ。ほら、この前のお兄さんとの戦いで貰った金で買ったんだ。」


「あぁ、あれですか。そんなこともありましたね。忘れてました。」


 いや、実の兄をボコられて忘れてるって…お兄さんに対してドライすぎるだろ…実はSの気質があるだろサラ。


「では、そちらの…えっとメア様も?」


「いや、違うんだ。それについて今日は聞きたいことがあって来たんだ。そうだな、話をする前によければ人払いをしてくれないか?」


 シエルが帰り道に言っていたけど、基本的に魔族を国に入れるのってダメらしいからな。なにか言われても困る。そのてんサラは大丈夫!きっと!


「はぁ、なにか不都合があるんですね。かしこまりました。すいません皆さん、すこしの間席を外してくださいな。」


 サラがそう言い手をポンポンと鳴らすと、周りにいたメイドさんたちが出ていく。

 いやちょっとまて今天井から降りてきたやつがいたぞ?それに壁が回転して出ていったやつがいたぞ?あ、床の中からメイドさんが……え、なにここそういうアレなの?ジャパニーズニンジャってやつが住んでるの?なにそれ怖い。


「はい、これで全員出ていきましたよ。これで私たちだけです。」


「あ、はい。え?いやうん。もういいや。俺は気にしないぞ。」


「いかがなさいました?」


「いや、いいんだ。ちょっとアイデンティティークライシスだっただけだ。」


「あ、あいでん?」


「なんでもない、忘れてくれ。」


 はぁ…なんかもう疲れてきたんだけど……なぁティア?あ、紅茶あんまり好きじゃないの?そっかー、じゃあ後でメイドさんに水入れてもらおうな。


「で、お話というのは?」


「あぁ、実はこのメアなんだがな、今は寝ているが魔族なんだ。」


「…はい?」


「ちなみにカストール家の一人娘って言ってた。糸魔法っていうのを使ってドラゴンを操ってた。」


「……え?」


「おーい、大丈夫か?視線が定まってないぞー?」


 いつもの白い肌が今は病的なまでの青白さになっていってる。こういうのを漫画とかで『サァ』て表現されるんだろうなぁって思うよぼかぁ。


「は!またまた、冗談が過ぎますよ、駿河様。あはは。」


「え?いや嘘じゃないけど…」


 俺はメアの身体に巻いていた布を取り、角や羽を見せる。


「え?これ……ほんとに……」


「おう、オレウソツカナイ」


「ちょ!ちょっと!待ってください!?その方は人型の魔族ですよね!?それに女性……あぁ!」


「お、落ち着けって…気絶させてるから。」


「おち着けっていうほうが無理ですよ!か、カストールって言っていましたか!?有名な魔族じゃないですか!?もしかして駿河様はこの国を滅ぼしにっ!?」


「まてまてまて、ほんと落ちつけ。あまりの驚きから俺を国家転覆罪の罪を着せようとするな。」


「はぁ……はぁ……その……その子をなぜここに?」


 サラは息を切らしながらも、思考を戻しメアの説明を求めてくる。ここはやはり王女らしいというかしっかりとしてるみたいだ。


「あぁ、実は昨日、コボリの森にいってドラゴンを討伐する依頼を受けてな、行ってみたらまあドラゴンは操られていて、操っていたやつを捕まえたら魔族だったということだ。」


「いや、あんまり理解できないですけど……ドラゴンを操るほどの魔族を駿河様は気絶させて連れてきたんですか?」


「あぁ、首をトンってやって。」


 まだお菓子をパリポリしているティアの首に当たらない程度に再現をする。


「はぁ…それはまあ……規格外ですね。」


「流石に王女様だ、すぐ落ち着いてきたな。」


「どっちかっていうと一週して落ち着いてるだけなんですけどね、はぁ……」


 サラが呆れたような眼差しを俺に向けてため息を吐く。いや俺が悪い訳じゃないだろ?むしろ魔族を捕まえた俺を誉めてほしい。


「で、だ。本題なんだが、本来こいつはどうするべきなんだ?」


「どうするべき…とは?」


「いやこいつをこのまま外にポイっと放り出してもまた森を荒らすだろうし、下手すればこの国まで来るかもしれないんだろ?じゃあどうすればいいんだ?」


 流石に幼女でも魔族だしな、下手に離したらなにかされるかもしれん。もしくはその辺の変態に捕まってしまうかもしれんからな。気絶とかさせられて。首をトンとかされたりして。え?俺じゃないよ?


「そうですね……申し上げにくいですが……死刑になるかと……」


「……は?」


「魔族は人間にとって害にしかなりません。その子は多分魔力があって知能も高いから自我はあるかもしれませんが、暴れられたりすると危ないので…可愛そうですが……」


「いや…それはないだろ?流石に……だって幼女だぜ?まだ幼いんだぞ?」


「魔族に年齢は関係ありませんから…」


「……なんだよそれ。どうしようもないのか?」


「私たち人間とは相容れない存在ですから…メア様がどんな魔族かは知りませんが、魔族というのは昔から死刑にされる決まりになっているのです。」


 そんな…どうしてやることもできないのか?俺は。こんなに小さい子が死刑になるんだぞ?俺がここに連れてきたからダメだったのか?いやもし連れてこなかったら他に犠牲者が出ていたかもしれない……だけど…だめだろ…そんな……異世界じゃ当然かもしれないけど……


「あるじ…?きぶんわるい?」


 思考に沈んでいるとさっきまでお菓子を食べていたティアが立ち上がって手を俺の頭に乗せてきた。


「あー…いや、そんなことはないぞ。ティア。」


「ん…でも…つらそう……」


「そうか?そうかもなぁ…どうしようかなって思ってな…」


「ティアは…あるじについていく…よ?どんな結果に……なっても。」


「……ティアはいつも俺の味方をしてくれるよな。」


「ん…味方。英語で言うならぶらざー」


「うんそれ兄弟な?」


場合によっちゃ仲良いやつのことを言うときもあるけど、それとも違うかなー?てゆうかブラザーを知ってる辺り、ティアの情報源はどこなのか気になってきたよ俺は。


「…あるじげんき…でた?」


「ありがとな、気を使ってくれて。お陰で元気がでたよ。」


そうだ、落ち込んでばっかいるわけにはいかない。いつも俺がティアの頭を撫でているのに、逆に撫でられていたら格好がつかないよな。


「ティア様は駿河様を本当に慕っているのですね。奴隷に幸せな方はほぼいないのですが、ティア様は幸せそうですね。」


「ん…ティア……あるじの……奴隷になってよかった。」


「なんか照れるからやめてくれ…奴隷になってって……奴隷?どれい……どれい……あ!」


「どうされました?なにか思い付きましたか?」


「…あるじ?」


「そうかわかったぞ!人に害を与えなきゃいいんだろ!?じゃあ簡単じゃないか!与えさせないようにさせればいい!」


「…つまりどういうことでしょう?」


「簡単さ!ティアと同じようするんだ!」


 そう、主の命令をなんでも聞く奴隷にしちまえばいいんだ!!



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