第32話俺が魔族と会ったならばっ!③

 あのあと、ドラゴンの気配に気付いて来たクロノスさんやヤドンとかもあの場に来たのだが、結局俺の抱えてるメアちゃんを見て変態とか言うだけだったので割愛させてもらう。

 ちなみにメアには一応、魔族と分かるような部分は布で隠させてもらった。パット見ではバレないはずだ。


「コボリの森、長いこといた気がするな。」


「ん?…そう?」


 この森には定期的に来てスライムを狩らなければいけないな…世の中の女の子の為にも…


「あ、見えてきたっすよ。王都。」


「あぁ、シエル、いたのか。」


「いやそりゃいるっすよ!これ自分の馬車なんすから!!」


 俺とティアは帰りも走るのはダルかったので、シエルに頼んだら乗せてくれた。なんだかんだ優しいやつである。


「それにしても、その子は本当に大丈夫なんすか?王都に連れ帰ったりして…」


「あぁ、メアちゃんのことか?まあ最悪暴れだしても俺が宥めてやるさ。」


「その子、メアちゃんって言うんですか?ずいぶん親しげっすね。」


 メアちゃんと俺との仲だもんなー?てゆーかまだ起きないけど大丈夫だろうか?正直才に頼って首トンしただけだからな…もし殺してたりしたらどうしよう…


「あ、ここで降りるっす。自分はこれから寄るところがあるので、お先に失礼するっす。」


「おう、気を付けていけよー。」


 シエルは馬車を係りの人?に預けてそのまま手を振りながら走っていった。


「さて、どうするかなーこいつ。門番には見せないようにしちゃったんだよな。大事になっても困るし…」


「ん…どうする?」


「魔族のことを知ってそうで、かつ大事にしなさそうな人…おぉ!サラがいるじゃないか!」


 サラならきっと大事にしないだろうし、色々知ってそうだ。やっぱり持つべきは一国の王女だな!


「あ、駿河殿ではないか。奇遇だな。」


 後ろから声が聞こえたので振り返ってみると、クロノスさんがいた。


「あぁ、クロノスさん。どうも、これから帰りですか?」


「うむ、城へ戻ろうとしているところだ。」


「城へ?そうか、騎士さんですもんね。王国に使えてるんだから報告とかもあるか。」


「正確には王国というよりはサラ姫様に使えているのだがな。」


「え!サラ…姫様に使えてるって言いました?じゃあ頼みたいことがあるんですが…」


 ちょうどいいタイミングじゃあないか!クロノスさんがサラに使えてるなんて!……ん?クロノス…サラに使えてる…あ。


「もしかして、サラ姫様の近衛兵の隊長さん?クロノスさんって。」


 確か、グルノとサラが言い合いをしてたときにクロノスとか言ってた気がする。もしかしてこの人か?


「ん?あぁ、そうだが。言わなかったか?」


「いや聞いてないですよ?…というかそんなことより!なお都合がいいので頼みますが、サラ姫様と簡単に会う方法、ありません?」


「む、急にだな。それは会うことは出来るかもしれないが…なんだ?知り合いなのか?」


「ええまぁ、前に盗賊さんに襲われてたんで助けたらいつの間にか。」


 あのときの盗賊さん…元気してるかなー?いやもう奴隷になってるか檻の中か。


「なに!?もしかしてサラ姫様を救ってくれたのは君だったのか!?」


「えぇまあ…て顔近い顔近い!」


 ビビるー…いや女の人の顔でもビビるけど、鉄兜に至近距離でガンつけられるってかなり恐怖だよな…


「そうか…君のお陰だったのか…いや申し訳ない。私はあのとき別の使命で護衛をすることが出来なかったのだ。私からも礼を言わせてくれ。」


 そういうとクロノスさんは鉄兜を顔から外した。

…鉄兜からは見えなかったが、どうやらこの人も美人らしい。

 健康的な肌色の身体に大きく実った二つの果実、それにキレイな顔立ち、そこから伸びるきらびやかな金髪。ハーフの美人さんみたいだ。


「うぅ…あまり人前に顔を出すのは苦手なのだが…ありがとう。サラ姫様を助けてくれて。」


「か、顔をあげてください。当然のことをしたまでですから。困ってたら助けるし、手を伸ばすのはクロノスさんだって同じじゃないですか?」


「そうか、そう言ってくれるのはありがたい。えっと…確かサラ姫様に会いたいんだったな?私から取り合ってみよう。ついてきてくれ。」


 クロノスさんはそういうと、恥ずかしそうに鉄兜をつけ直し、きびきびと歩き始めた。どうやらサラには会うことが出来そうだ。


「ん…あるじ…鼻の下…のびてた…」


「え?なんのことだい?ほら、はやくいくぞ。ティア。この子のことを聞きに行かんといけんからな。」


 ティアがなんか鋭くなってるな…いやキレイな人を見たらついね?男のさがというものです。



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