第29話俺がドラゴンを見たならばっ!

 朝食として、昨日と同じように魚を捕って食べたり、シエルを茶化して遊んだりしてると急に森の木々がザワザワと蠢きはじめた。


「どうしたんだ?急に騒がしくなったけど。」


「これは…来たっすね。ドラゴンっす。」


「ドラゴンか!?」


 ドラゴン!今回の目的だ!正直忘れかけてたけどな!


「こっちっす!ついてきてください!」


「わかった!その前にこの残ってる魚食っていいか!?」


「あぁもう速くしてくださいっす!速く食べて行くっすよ!」


「まあまあそう焦るなよシエル。食事と言うのはだな。静かで…豊かで…なんというか救われてなきゃあだめなんイタイイタイッ!!その方向に腕は曲がらないっ!!」


 びっくりしたぁ…急に間接をキメてくるんだもん。しかも真顔で。怖すぎるだろ。


「じゃあ行くっすよ?」


「はい…」


「あるじ?いたい?」


 ありがとうな、ティア。俺の安らぎはお前だけだぜ。






 シエルの後ろをついていって5分ほど、すこし開けた広場のようなところに着いた。


「ここっすね。」


「ここ?周りには木しか見えんが…」


 周りは木々に覆われていてるし、開けているのでドラゴンがいたらすぐわかりそうなもんだが。


「いえ…上を見てください。あれっす。」


「ははは、まさか…ね?」


 上を見上げる。…うん。いるよ?分かってたよ?へー、この世界のドラゴンは西洋の方のドラゴンなんだな。

 あのあれだよ、願いを叶える玉を集める漫画あるじゃん?掴もうぜ!!みたいな。あれに出てくる竜じゃないほう。陸にいるイメージが強いやつ。あーかっこいいなー。え?なんでこんな冷静かって?


「人間、危機になると意外と冷静なもんだよな。」


「いや駿河さん!?なに達観してるんすか!?そこ危ないっすよ!」


 俺の真上にドラゴンがいるのさ!!あ、これおしりの穴か。ドラゴンにもあるんだな…


「て…あぶね!!」


 シエルのほうに前転してかわす。あぶねぇ。あの巨体が俺にのしかかるとか恐怖以外のなにものでもねーぞ。


「大丈夫っすか!駿河さん!」


「あるじ…だいじょう…ぶ?」


「大丈夫だ。それよりこいつ倒せるのか?見た目は二階建ての家よりも大きいぞ。」


 降りてきたドラゴンは5メートルはあるだろうか?日本でみる二階建ての家よりは明らかに大きい。

 今は向こうを向いて、静かにどこかを見つめている。


「倒せるっていうか…倒すんすよ!」


 そういうとシエルは刀を懐から取りだしドラゴンに向けて走り出した。


「グァ?グォォォォオオッッッ!!」


 ドラゴンはシエルを見つけるとさっきまでの静けさとはうって変わって、大声で雄叫びをあげた。

 木々から鳥たちが飛び去っていってるのか更に森がザワザワと音をならす。


「すぐに終わらせるっすよ!!ふっ!!」


 シエルは刀をドラゴンに近づき袈裟斬りのようにして切りつける。


 しかしシエルの刀はドラゴンに対して小さすぎた。それもそのはず、シエルは機動性を重視したのか刀は重いものではなく軽く、そして短い。


「ほらほらどうしたんすか!!」


 だがその機動力でドラゴンに反撃の余地を与えず、シエルはドラゴンの体を切り裂いていく。


「これは俺たちの出番はないかな?」


「ん…あるじ…助けない?」


「あー助けないっていうか…大本をおれとしては叩きたい。」


 そう、大本というのはこのドラゴンから魔力の気配を感じるのだ。それはもちろんドラゴン自体の魔力もあるのだが、まるで操り人形を手繰る為の糸のようなものがドラゴンの体に巻き付いてるのがなんとなく分かる。


「よし、ティア。ドラゴンのこと宜しく頼むわ。俺はあの魔力を追ってみる。」


「…?よくわからない…けど…ティアはお留守番??」


「おう。お前ならドラゴンなんて余裕だろ?シエルも一人で割りとどうにかできそうだし、二人ならなんとかなるだろ。」


「ん…いってらっしゃい。」


「行ってくる。」


 そういってティアの頭を撫でてからドラゴンに巻き付いている糸を辿っていく。


「あ、シエルー!ティアと一緒にドラゴン倒しといてくれ!俺は大本を倒してくるー!」


「はぁ!?ちょ、どこ行くんすか駿河さん!大本!?意味わかんないっすけど!?」


「シエル…あぶない。」


「うぉ!あぶなっ!あ、ありがとうっすティアさん。」


 うんうん、しっかり戦えるな。じゃあ俺も俺で仕事をしますかね。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る