第28話俺がテントで寝らならばっ!
シエルに案内されるまま森の中を歩いていると、木々の間の空間にテントがあった。
「あそこっすね。いま明かりをつけるので待っててくださいっす。」
「お、サンキュー。」
シエルはテントの側にいくとランタンのようなものを持ち出して火をつけた。魔法か?
「ティア、下ろすぞ?」
ティアが歩いている途中眠くなったのか足がおぼつかなくなっていたので、俺がおんぶしたのだ。
シエルが俺のことを軽蔑したような目で見てきたが俺は気にしない。気にしないのだ。
「ん…ついた?」
「あ、ティアさん。目が覚めたんですね。今からさっきとった魚を焼くんで待っててくださいっす。」
いつの間にとっていたんだ?しかも結構な量を。さすがシエル、抜け目ないな。
「じゃあ俺たちはどうすればいい?なにかとってきた方がいいもんとかあるか?」
「いえ、休憩しててくださいっす。ティアさんも駿河さんもずっと歩いていたんで疲れたんじゃないっすか?」
シエルが気を使ってくれたみたいだ。ここは優しさに甘えておこうかな。
「そうか、じゃあその気遣いに甘えさせてもらうとするよ。」
「ん…ティア…ちょっとねむる。」
「はいはい、しばらくしたら起こすっすからね。」
そういうとシエルは夕飯の準備に取りかかった。
周りは鬱蒼とした木々に囲まれていて、聞こえてくるのは虫の鳴き声ぐらいだ。ちょうどいい静けさが心を落ち着かせてくれる。
「…シエルは料理ができるんだな。」
「ん…あぁ、そうっすね。昔よくサバイバルみたいなことしてたんで。」
「軽いな…サバイバルって。そんな簡単にすることかよ?」
日本の現代人とかサバイバルなんてできないだろうなー。
「そうっすか?まあ自分はそういう環境で育ったんすよ。」
「そうか…シエルはいいお嫁さんになるな。」
料理が出来て仕事ができて強いんだから申し分ないだろうな。
「は?それ口説いてるんすか?すいません、自分変態と結婚するとかありえないんで。」
「真顔で否定すんなよ!悲しくなるだろ!!」
「ん…んぅ…」
「ほらほら、叫んだりするとティアさんが起きちゃうっすよ。」
ぐ…だってシエルがひどいことを言うから…ぐすん。
●
「ん…あ、そうか。ここはシエルのテントのなかだっけか。」
朝目が覚めると狭い空間の中で目が覚めた。広いテントといっても部屋よりは圧倒的に狭い。
どうやら昨日魚を食べたあとすぐ寝たみたいだ。
「ティア?シエル?」
周りをみてみるとシエルもティアもいない。そとに出ているんだろうか?無意識に音を出さないようにしてテントから顔を出してみる。
「……分かったっすか?だから、駿河さんの腕枕を勝手に使っていたことは秘密にするんすよ?」
「わかった。ひみつ、まもる。」
「よかったっす…恥ずかしいっすからね。じゃあ、そろそろテントに戻るっすか…?」
あ、やばい目があった。え?なに?腕枕してたの?いやいいんだけどさ。全然重さとか寝苦しさを感じなかったし…てか来てる!ここは寝たふりだ!
「ぐぅ…ぐぅ…」
シャッとテントが開かれ中にシエルが入ってきた。そして俺の顔を見つめている。薄目を開けてるけど、バレなきゃいいんだが…
「…起きてないっすよね?」
はやく…はやく向こうにいってくれ…起きてないから…起きてないから…
「起きてないなら起きてないって言ってくださいっす。」
「オキテナイヨ。」
「やっぱり起きてるじゃないっすかぁっ!?聞いてたんすねっ!?」
「バレた!!」
謀ったなこいつ!!起きてないなら起きてないって言えって言ったじゃないか!ずるいぞ!嘘つきだ!
「腕枕はあれっすよ!目が覚めたら勝手になってただけっす!自分から腕枕をしてもらったわけじゃないっす!」
「でも寝てるときにそうしたんだろ?つまりは無意識レベルで俺の腕枕を求めたと言うわけだ。」
まったく、愛され過ぎるのも罪なもんだ。
「はぁ!?そんなわけないっすよ!自分は変態の腕枕なんてごめんっす!!」
「そんなこと言うのか…悲しくなってきた。シエルは俺のことが嫌いなのか…?」
「ず…ずるいっすよそれ!嫌いじゃないっすけど…」
「だよなー!俺もシエルのこと好きだぜ!」
ははは!やっぱりシエルも俺のことが好きなんじゃないか!
「す、好きとは言ってないっすよ!嫌いじゃないって言っただけっす!」
「ん…シエル、朝から元気…?」
向こうからティアがやって来た。
「おぉ、ティア、おはよう。シエルが俺の腕を勝手に枕にしてたんだぜ?」
「おはよう…あるじ。シエル…ひみつ?」
「もういいんすよ…バレたんで…」
「そう…シエル…かわいそう。よしよし」
「うぅ…優しさがしみるっす…」
朝から元気なやつらだ。俺を含めて。
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