第13話俺が宿屋にいくならばっ!

「では、ギルド証の説明をいたしますね。こちらが、駿河さんのギルド証になります。」


渡されたギルド証は銅色、シンプルな感じで華美な装飾はないようだ。


「駿河さんはCランクからなので、このギルド証になります。普通はあり得ないんですよ?」

ふふっとノノさんは俺に笑いかける。きゃわいい…


「では、説明しますね。まず、盗難、紛失された場合ですが、これは500スールで再発行をするように決められています。ただし最初の発行、つまり今回はお金は掛かりません。」


「ふむ。」


「さらに、ギルド証は身分の証明にもなります。大概の国ではこれを見せるだけでよいと思われます。」


「ふむふむ。」

「…はむはむ。」


こらティア?何を食べてるの?ヤドンからもらったお菓子?危なそうだな…


「これは、ギルド証には魔法がかけてあり、魔力を流すことでギルドの紋章が現れます。それが身分の証明になります。」


「なるほどな。ちなみに盗難された場合、悪用されることはあるのか?」

「いえ、基本的にはありません。無くされた方がこちらで再発行をしたときに、元のギルド証を使えなくすることが出来ます。ギルド証の魔法はこちらで管理してますので。」


「良くできてるもんだな。ギルド証の説明は終わりか?」

「はい!これでおしまいです!」

「あ、もうひとつ!1年ごとに500スールの献金と1ヶ月に1つは依頼を受けて頂かないと、ギルド証が停止されるので気をつけてください!」


「はいはい、わかったよ。これで終わりか?」

「はい!説明はこれでおしまいです!」

「そうか、ところで俺たちはまだ宿が決まってないんだが…オススメの宿はないか?」


そう聞いた瞬間、ノノの大きい目がさらに開かれた。


「あの!私の母が経営している竜の翼亭という宿屋がありまして!よければそこに!綺麗ですし、盗難もありません!!たぶん!」

「お、おぉ…わかったわかった。というか近い!近い!」


ノノさんが受付から乗り出してくる。乗り出してきたのだが…その、そのお陰でノノさんのお胸様が…こう受付に押さえつけられて……こうむにゅっと、むにゅっと……ね?これは危ないなぁ……俺みたいな紳士じゃなかったら襲われても仕方ないぞ??


「ありがとうございます!じゃあギルド証に目的地を送りますね!」

「そんなことまでできるのか、ギルド証万能だな。」

「はい!この部分に魔力を流すことで、目的地までギルド証から光が浮かび、誘導してくれます!」


めっちゃ使えるギルド証くん、これ世界に売り出したらいんじゃない?通話機能とかもつけて。


「ちなみに登録すれば通話もできます!」

「できるのかよ!!」


万能じゃねえか!薄い万能電話じゃねえか!これで俺たちより文明進んでねえって……ほんとかよクロエ!


「じゃあ…とりあえず宿屋にいくか。じゃあまた。」

「ん……ばいばい。」

「はい!私も仕事が終わればすぐに向かいますので!」

「はいはいー。」


「じゃあ、いこうか。ティア」

「ん」






宿屋へ向かう途中、もう夕暮れ時だが、まだまだ町は活気に溢れている。屋台のいい匂いや、子供たちの声もあり、なんだか俺のいたとこを思い出す。王都といっても夕方になればこんな雰囲気になるんだな。


「あるじ…?」

「ん、いや…なんか懐かしい感じがしてな。顔に出てたか?」

「ん…あるじは分かりやすい。」

「そうか?まあ確かにここに来てめちゃくちゃ心読まれるけど。」

「ん…さっきもノノの胸をずっと見てた。」

「ぶはっ!!な!なにを!」


気付いてたのかこの子!違うんだ!俺は大きいのも好きだが小さいのも好きだから!だからやめるんだ!!いつも無表情なのに!なぜいまは若干いつもより睨みが効いているんだ!


「ティアも…成長する……」


ティアが胸を触りながら呟いている。可愛いよぉ………と、違う違う。こんなことをいってる場合じゃない。


「ま、まあ、俺は小さいのも悪くないと思うぞ?ティアはティアのままでいいんだ。」

「だめ……ティアもきょにゅーになる。」


ティアさん!どこでそんなはしたない言葉を覚えたの!?


「そ。それより腹が減ったな!はやく行こうぜ!な!」

「ん……いく。」


危ない危ない。なんかいろいろと大事なものを無くしそうだったぜ。もうこのまま今日がなにもなく終わってくれ…



「ここだな、竜の翼亭。」

しっかりと宿屋の扉の上に『竜の翼亭』とでかでかと書かれている。店構えもどっしりとして、大きさも申し分ない。これはどうやら本当にいい宿屋っぽいな。


扉を開けると中では若々しい感じの女性がバタバタと忙しそうに食事を運んでいた。もちろんかなりの人数の人が笑いながら食事を楽しんでいる。ガヤガヤと、明るい雰囲気にこっちまで楽しくなってきそうだ。


「あ!いらっしゃい!!」

「どうも、泊まりたいんですが、いいですか?」

「はいはい!向こうの受付で待っててくれる~?すぐいくからー!」


どうやら本当に忙しいようだ。この女性以外に働いてる人があまり見当たらない。数人で切り盛りしているのか?


受付で待っているとすぐにさっきの女性がきた。

「はいいらっしゃい!ここは竜の翼亭だよ!お泊まりだったね?朝食と夕食込みで1日300スールだよ!」

「わかった。3日で頼みます。それと、奴隷がいるんだけど、いいですか?」

「おぉ!お兄さんもスキモノだねぇ!そんなに、幼い子となんて…やるねぇ!いや……ヤるねぇ!」


「いや、なんの話ですか!それにやるっていうことば!わざわざなんで言い直したんですか!」


「とりあえず、ダブルでいいのかい?」

「い、いえツインで。」

「ん…ティアは、床でいい。だから…シングル。」

「お兄さん、なかなかの鬼畜だねぇ。」

「いやまてまてまて!どうしてそうなる!」

「で、どうするの?ツイン?シングル?ダブル?」


ぐぬぬ、ここで俺がツインといってもたぶんティアは引かないだろう…流石にここでシングルを選んで、ティアを床で寝かせるわけにはいかん。俺が床で寝るといってもそれこそティアは引かないはずだ。


「はぁ…ダブルでお願いします…」

「あいよ!音は押さえるのよ?壁、薄くはないけど厚くもないから。」

手でわっかを作ってそこに人差し指を出し入れするな!下ネタ厳禁だぞ!ティアに移ったらどうしてくれる!


「もう、いいですから…食事、お願いしてもいいですか?」

「ん…お腹…減った。」

「はいはい!向こうのテーブルで座ってて!」


言われた方を見ると、さっきのガヤガヤとした他の客らしき人たちが食事を取っているようだ。俺たちも待っているとすぐにきた。


「はい!おまち!今日はイノムダが取れたからね!新鮮なイノムダステーキだよ!」

「おぉー!美味しそうな肉だ!」

それにしてもイノムダってなんだ?語感的にイノシシかな?

「いただきます!」

「…いただき…ます?」


俺の真似をしたいのか両手を合わせて言う。可愛いなぁ…可愛すぎるぜティアさんよぉ…


「うんうん、これは料理をしてくれた人と料理の食材となったものに感謝をするために言うんだ。」

「ん…これからは…そうする。」

「ははっ、まあ無理をする必要はないからな?」

「ん」





「ん…ふわぁぁ……ん。」

食事も終わり、満腹感を楽しんでいるとティアがあくびをした。どうやら眠くなってきたようだ。

「じゃあ、そろそろ部屋に行くか。」

「ん。」

目を擦りながらティアがついてくる。


部屋はまあ普通の広さだったが、ダブルベッドはやっぱりすこし広いこれなら二人ではいれるだろう。先に眠そうなティアを布団に入れて、俺は考えた。



風呂って…どうすりゃいいんだ?


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