第5話俺が姫様に会ったならばっ!

「さぁ、乗ってくれ。中にはサラ姫様がいらっしゃられる。くれぐれも粗相のないように頼む。」


 普通だったら姫様と同じとこに乗ることはないと思うんだが、どうやら姫様が俺に会いたがってるらしい。なにか褒美をくれたりするのだろうか?ワクテカだぜ。


「失礼します……おぉ……」


 中にはブロンズの髪を腰まで伸ばし、肌は透き通るような白色で折れそうなほどに細いくびれをした美しい女性がいた。


「お初にお目にかかります。ガルダマーナ第ニ王女のサラ=ルーシアと申します。」


 とても丁寧に自己紹介をしてくれる。どうやらこの人が王女様らしい。俺も紳士的に挨拶をするべきか。


「あぁ、俺は、いや私は高梨駿河です。よろしくお願いいたします。」


 気を付けないとな、どこかで無礼を働いたりするかもしれん。見た目は優しそうだが王女様の勘にさわったりしたらどうなるかわからんからな。


「そんなに固くならなくても構いませんよ。いつも通りでお願いします。」


「ほんとですか?ならよかった。正直無理していたから」


「はい。」


 それにしても、常に上品さがあふれでているように思える。意識してこんな風にしているなら辛くはないのだろうか。


「そういえば私と会いたいと?」


「えぇ、先程の戦い、馬車のなかから拝見いたしました。とても早い動きで、私と同じくらいなのに、びっくりです。そのお礼をと思いまして。」


 中から見ていたらしく、驚いてるようだ。ふふ、良いところを見せれたかな?

 お礼?もちろんほしいに決まってるじゃないか!


「そんな、ちょっと運動神経がいいだけですよ。お礼なんていりません。」


 まあ欲しいけどここで素直に言えるほど俺のメンタルは強くない。てゆうか俺は謙虚だから。そう謙虚だからさ。日本人の美徳だよ。


「そうですか、しかしながら何をお礼とすれば……」


 うーん……あ、いいこと思い付いた。これならいんじゃないかな?


「じゃあ姫様。」


「はい?」


「膝枕してください。」


「はい?」


「膝枕してください。」


「…………え?」


 お、表情がちょっと柔らかくなったかな?まあそれが目的だからな。本気で膝枕してもらうとか、王女様にそんなことができるわけがない。常に上品でいようとするなら俺の前ではやめてほしからな。ときには人に休みは必要だ。


「ダメですか?なら…」


「い、いえ、構いません!私の膝でよろしければ……」


 サラ姫は顔を赤くしながら小さい声で呟くと、膝枕をしやすい体制に変わった。

おっとぉ?これは想定外だぞ?え、いいの?ダメだよね?


「ど、どうぞ。」


「お、おう…いいのか?」


「構いません…覚悟はできました…」


 やばい、軽い気持ちで言っただけなのに王女様覚悟決めちゃったよ?誰だ!膝枕なんか提案したやつ!出でこいっ!


「ど、どうでしょうか……?」


「き、気持ちいいです……。」


 うわ、気持ちいいですっていうとなんか変態っぽいかな。やばいやばい、ちょっと俺も顔が暑くなってきた!


「そ、そういえば駿河様はどうしてここにいたのですか?護衛は雇ってないはずですが。」


 この空気に耐えられなくなったのかサラ姫様が話題を切り出す。助かった。


「あー」


 いやこれどう返せばいいんだろう、本当のこといっても通じないだろうしな。


「えっと…そのあれだ、旅の途中だったんだ。あの辺の山からちょちょいと下りてきたんだよ。」


 自分自身でなにいってるかわからんようなってきた。あの辺の山ってどこだ。


「ふふ、そんな作ったようなこと言わなくてもいいですよ。あの辺の山ってどこですか。」


 初めて笑った。いや最初からニコニコしてたけど、明らかに違う。作ったような笑顔じゃなくて、本当のいい笑顔だ。


「いい笑顔だ。そっちのが好きだな。」


「あ…つい……面白くて……ふふっ……それならどこからきたのですか?駿河さまは」


「そうだなぁ……東の方にずっとずぅーっといったところかな。」


「どこでしょう?極東の方でしたらニノクニでしょうか?」


 ニノクニ…そんなゲームがあったようななかったような…いややめよう。危ない危ない…


「まあ姫様がわからないようなひっそりとしたとこだよ。」


「むぅ……ちょっと負けたような気分です。」


「いやそんなつもりはなかったんだけど……」


 頬を膨らましながら言う。可愛いなぁ…この姫さまは。



 そんな下らないことを話ながら数十分、どうやらガルダマーナについたようだ。


「姫さま、スルガ殿、ガルダマーナにつき……姫様!?」


「「あ……」」


 やべ、膝枕してもらってるまんまだったわ。やっぱりだめだよねぇ?ちらっとキャランの顔を見てみる。


「あぁ、キャランさん。これはあの…顔こわっ!?」


「スルガ殿?いったい何をしてたのですかな?」


「まてまて!!懐にあった刀をゆっくりと抜くな!怖い怖い!」


「キャラン!私は大丈夫ですから!私から膝枕させてと頼んだのです!!」


 まて!フォローしたいのは分かるがややこしくなるから!


「なんですと!姫様!それは問題ですぞ!いや許せません!姫様をたぶらかすなど!言語道断です!」


 ほら!やっぱり!まてまてなんでそんな切れてんの!!


「まてキャラン!俺も姫様も悪くない!悪いのはこの世の法律だ!」


「うるさぁい!!抜け!正々堂々と勝負だ!」


「待ってくださいキャラン!!ここは往来の場ですよ!」


 そんなことを話ながら、やっとガルダマーナについたようだ。

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