Fighter

カント

本編

「敗北は死だ」

 闇の先から、低く厳かな声が響く。

「それでも挑むと?」

 石槍を握り締める。部族の掟。戦士と成る為の試練。それは夜の森の奥で、神と戦うこと。

「無論」

 ぬるり、と、闇から影が這い出た。漆黒のジャガー。痛い程の威圧感だ。

 あれが、神。

 ……だが。

「いざ」

 退けぬ!

「勝負!」

「はい合格!」

 突然、ジャガーは大地を叩いた。私は……眼を瞬かせた。

「おめでとうね!」

「……た、戦いは?」

「不要だね。これ、気迫と決断力を見る試練だからね」

 ジャガーは笑った。

 私は。

 ……暫し、考え。

 槍を構え直した。

「手合わせ願えぬだろうか」

「ええ? 何で?」

「戦士故」

「あー……しょうがないね」

 告げるジャガーの目は、金色に輝いていた。

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Fighter カント @drawingwriting

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