神はサイコロを振らない
カント
本編
マークシートは得意だ。
入試終盤、俺は机端の六角鉛筆を掴む。秘技・鉛筆転がし。解けない問題には、運否天賦で対抗だ。さぁ、秘技発動――の、直前。
不意に、バタン、という音が響いた。
見ると、前の席の女の子が床に倒れている。顔色が真っ青だ。だが、彼女は試験監督に「大丈夫です」と繰り返す。
机に戻る。
試験を続ける。
……何となく。
俺は鉛筆を置き、愛用のシャープペンを再度握った。
「で、結果は?」
「落ちた」
「落ちたのかよ」
「でも次の年で受かった」
そんなもんさ、と俺は息子に笑い、宿題の続きを促した。
「さ、もう一回考えてみろ。何事も粘り強く、な」
後ろで妻が軽く笑った。いつかの青い顔は、もう彼方に消え失せたようだった。
神はサイコロを振らない カント @drawingwriting
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます