1000字もない掌編ですが、心に残るものがあります。読み終わった後、ほっ、と一息ついてしまいました。最後の5行は、冬になったときもう一度読み返したいと思いました。
幸せの定義とはなんでしょうね……と考えさせられる日常のワンシーンでした。人にはそれぞれ有限の時間があり、中にはそれを日常的に自由に使えない人がいるかもしれない……。小説のあの子が言う通り、何気ない日々を過ごせている今の自分の状況が一番いいのかも……と、日常をゼロから見直すきっかけをもらえた作品でした。
……という風に、精神医学の世界では言われるそうです。なぜなら『◎◎だから幸せ』という考え方は、『◎◎でなくなったら不幸せ』という考えと表裏一体だから。『お給料が多いから幸せ』だとしたら、『クビになった途端不幸せ』になってしまうわけです。本当の幸せとは『今日一日無事幸せだった』と言えるような状態のことなのかも知れません。
日常の一場面を切り取った、短いお話。しかし、その短い物語の中で生まれる感情というのは様々だと思います。一つ確かなのは、読後は不思議な温かさに包まれること。青春のひと時が感じられる作品です。
何気ない日常の一コマがよく書かれていると思います。青春の切り取った一ページが人生のわびさびを表していて良かったと思います。