第9話 極力戦闘回避の方向性



「電光石火」のメンバーがなぜ自分達のギルドにそんな名前を付けたのか、それはレベル上げに関する事が理由だ。偶然にも、ギルドメンバー全員のステータスが俊敏性や筋力などが突出していた為(三人ともが他のパラメータではなく、それらの項目を優先させて上げていた為)だった。


 さすがに現在のこのクリエイトオンラインで、トップを誇るレベル195の猛者プレイヤーには及ばないが、マップ移動の速さに関しては「電光石火」の右に出る者はいなかった。


ユウ「……っ」

ウィーダ「おらっ!」


 直線の道が途切れた前方。

 曲がり角の壁を蹴って右へと進む。

 背後のウィーダや、巨大なアイテムに乗っているアルンもおそらくそれに倣って、ダンジョンの中を疾風のように駆け抜けた。


ウィーダ「お、モンスターだ。ユウ、下がれ」

ユウ「分かった」


 そしてダンジョンマップ内のモンスターとエンカウントした時は、ウィーダと交代して位置を入れ替えた。


 アルンのスキル「敵情視察」を使えば敵のレベルや、使用技なども知る事が出来るが、ユウ達には時間がない。なので相手の確認に時間を費やすでもなく、そのまま通り抜ける事を選択した。


 だが、真正面から向かい来るプレイヤーを、敵であるモンスターが簡単に見逃すはずもないだろう。


 ウィーダとの交代はその為の対処だった。


ウィーダ「どりゃあああっ!」


 ウィーダが雄たけびを上げながらそのまま前進。

 目の前にいる、ゴブリンのモンスターは手に持っているこん棒を振り上げて攻撃するが、ライフを固定していなくてもおそらくウィーダにダメージは通っていない。


 自走発動のスキル「緊急回避」の効果で、敵モンスターの初撃を無効化にしたのだ。


ウィーダ「そんでもって食らいやがれ!」


 それで、攻撃を繰り出したまさに真っ最中であるモンスターに、ウィーダが剣を振りかぶりウンターを叩き込んだ。

 スキル「急所の心得」の発動だ。


 防御姿勢も取らずに急所に当てられたモンスターは、ステータス異常を起こししばらく行動ができなくなる。なので、ユウ達はその隙にゆうゆうとモンスターの横を通り抜けるのだ。


ウィーダ「へへっ、楽勝だな」


 今までも何度かモンスターには出会って来たが、全てこの方法で突破してきた。

 特殊なモンスターやボスには効かないだろうが、幸いにも今まで出会ってきたのはごく普通のモンスターばかりだった。

 

アルン「調子に乗らないでよ。ただ便利な動く壁になったくらいで」

ウィーダ「壁とか言うなよ。壁だって立派な使い道あるだろ」

アルン「そうね、壁に失礼だったわ、で・く・の・坊」

ウィーダ「おい!」


 呼吸する様に恒例のやり取りを始める二人の声を聴きながら、ユウはウィーダと再び場所を交替。

 周囲に目を凝らした。


 おそらくゴンドウのいる場所はもうすぐのはずだ。


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