第3話 勢ぞろい



 ウィーダという人物は、善人ではあるがお調子者でもあり、人からの頼みや願いなどを大してよく考えずに安請け合いするのが常だった。


 そして後は、……。

 口が災いの元。

 そんなことわざがよく似合う人物だ。


 ウィーダを友人にしていると、結構な頻度でトラブルに巻き込まれるので、靴踏みスキルにかなり磨きがかかる。ユウが、大して身にならない成長を遂げてしまうのは仕方がない事なのだろう。


 それこそ身にもならないだろう話だ。

 そんな事を考えている間に、頭を抱えた姿勢で唸っていたウィーダが復活して、何かを言いかけ一時停止。


ウィーダ「仕方ねぇな……。俺が説明して……、そう言えば!」


 何かに気が付いたとでも言った様子のウィーダは、システム画面を呼び出して、操作。


 ユウは画面を覗き見る。


 その視線の先で、おそらく運営から届いたという問題のメールの項目を、ウィーダはスルーして別の所へ目を向けていた。


 そして、この場にいないもう一人のギルドメンバーの名前の所を選択。


 受信時間は、八時五分。

 日付は本日のものだ。

 不運にも「電光石火」のギルドメンバーは、何かしらの異常事態が発生しているこのオンラインゲームの中に集結してしまっているらしかった。

 

 その残るメンバーの存在を思い出したらしいウィーダが、様子を知るために文面に目を通していく。


ウィーダ「…………はぁ!? おいおいマジかよ。こんな時に何考えてんだ」


 叫び声を発するウィーダが視線を寄越してきたので、ユウは横から詳しく内容を知るために、そのメールの文面に目を通していく。


ユウ「……」


 結果。

 詳しい事は分からないが、この混迷するオンライン世界で、とんでもなく迂闊な事をしようとしている人間がいる……という事が分かった。


 ウィーダが慌てるわけだ。


ウィーダ「とにかく急ぐ。理由は後で説明する」


 ウィーダは、文面に記されていた場所へ向かう為に走り出した。

 ユウもそれに続く。


ウィーダ「やべぇ、どうしよう。ヤケを起こしたプレイヤーが、ミントシティの中にある隠しダンジョンに入ろうとしてるらしい。今ライフがゼロになったら本当に死んじまうのに、何考えてんだ」


 宛名に掛かれていた名前はアルン

 プレイヤーとは、アルンの知り合いなのかもしれない。

 ひょっとしたら、ユウ達もすでに知り合っている可能性もなくはない。


 未だ混乱の残る通りを駆けながら、ユウの思考は半ばこの理由について想像がいきついていた。


 オンラインゲームでのデスゲーム。

 ログアウト不可で、ライフが尽きれば現実でも同様に死亡。


 だが、そんな事態になる事はすでに把握していた事だった。


 なにしろ……。

 今日のログインが遅れた理由は、その対処に手間取った事もあったからなのだから。


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